2024年04月20日( 土 )

九州をひとつの塊としてネットワーク化、Qから始まる「九州ワークスタイル」

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トークセッション

 今年6月にJR博多シティにオープンしたコワーキングスペース「Co-working&Co-learning Space Q」では10月7日、開業100日記念イベントとして、「働き方と未来を変える新しい九州ワークスタイル」をテーマにしたトークセッションを開催。運営する九州旅客鉄道(株)・まち創造担当部長の小池洋輝氏がファシリテーターを務め、九州をフィールドにコワーキングプロデュースを行う3人のプレイヤーと熱いディスカッションを繰り広げた。まちのコワーキングが目指すものとは――。

 ――それぞれ、コワーキングスペースを始めたきっかけは?

岡 秀樹 氏 岡 私は2000年から4年間ほどイギリスで建築設計のキャリアを積みました。当時EU加盟国だったイギリスでは、多くの移民労働者のための住居が必要であったことから、シェアハウスにリノベーションする工務店の仕事を手がけたことが前身です。シェアハウスでは、いろんな人たちがキッチンに集まり、お酒を飲みながらクリエイティブな談義に花を咲かることが日常的に行われていました。そのおかげで、シェアハウスがもたらすものが、家賃のコスパ以上に、人とのつながりにある面白さを感じ、今につながっています。日本においては11年の東日本大震災の復興支援とともに、シェアリングエコノミーの考えが浸透していきましたが、そこを起点に「今やるべきだ」と思い、14年にコワーキングスペース秘密基地(北九州市小倉)のオープンに至ります。

 コワーキングの文化はまだ10年くらいですが、コミュニティデザインは建築界のテーマであります。ただの広場や空間をデザインするだけじゃなく、人の動線や社交の場、どういう風に人は感じるのか――人のつながりから創造することは私にとってごく自然なことでした。

坂口 修一郎 氏 坂口 私は、もともとミュージシャン(トランペット奏者)として東京で活動していましたが、演奏する場所がどんどん潰れていったのがきっかけです。とくにシンパシーを感じていた場所が、マニアック過ぎてどんどんと…。そこで、自分たちで活動できる場所をつくろうと、代官山のライブハウスとクラブをコンテンツプロデュースしたことが始まりですね。03年ごろの当時は、コワーキングという言葉こそなかったのですが、ミュージシャンがコワーキングに結びつくのは、必然だったのだと思っています。

 それから、自分でプロデュースすることが増えていき、自分の地元でも何かしたいと、10年から鹿児島県南九州市で野外イベント「グッドネイバーズ・ジャンボリー」を毎年開催しています。周りに人家が1軒もないような森の中の廃校を利用して、仕事というより、ステージをつくる感じで自主的に始めたものですが、今ではその廃校の運営まで行うようになりました。

 また、JR鹿児島中央駅に今年6月にオープンした複合商業施設「Li-Ka1920(ライカイチキュウニーマル)」の5Fで、コワーキングを含めた多機能スペース「Culture & Work Style Floor」を開業しました。鹿児島には人が集まる場所が少ないと思っていたので、ここがみんなの止まり木のような場所になれれば…と。

馬渡 侑佑 氏 馬渡 私は、ワークプレイスを分散化したいという思いからコワーキングを始めました。そこには、私が最近まで勤務していたチームラボの設立時からのテーマである「共創」――みんなが同じ土俵で考えて1つの物をつくり上げるという体験をしたことが、大きく関係しています。チーム内のエンジニアもデザイナーも、皆がすべてのことを一緒に行う。その良さは、各専門のプロフェッショナルな仕事を幅広く見ることができ、体験しながら勉強できることです。役割分担であれば一部分しか見えないものでも、共創することでみんなの平均値を上げることができるのです。管理がとても難しくなりますが、チームラボにはプロジェクトの触媒を担う「カタリスト」という、みんなを導く役割が存在していました。

 私が今取り組んでいる(株)関家具さんとのプロジェクト、熊本県津奈木町を舞台にした宿泊体験とワーケーションの実証事業でも、その経験値が生かされています。専門外なことでも、おおまかに大体を想定することができ、連携が取れる――そうやって全体を全員が共通認識をもてることは、共創する組織の強みになります。

Co-working&Co-learning Space Q

【松本 悠子】

<登壇者プロフィール>
岡 秀樹岡 秀樹(おか・ひでき)
(株)HOA 代表取締役/(一社)まちはチームだ 代表理事
学生時代ロンドンにおいてシェアリングビジネスで起業する。2014年コワーキングスペース秘密基地を設立。建築、まちづくり、創業ビジネススクール、デジタルマーケティングおよびDXなどのコンサルティングの事業を行う。

 

坂口 修一郎坂口 修一郎(さかぐち・しゅういちろう)
(株)BAGN 代表取締役
1971年鹿児島生まれ。2010年より野外イベント「グッドネイバーズ・ジャンボリー」を主宰。(株)BAGN(BE A GOOD NEIGHBOR)代表として、東京と鹿児島の2拠点を中心に、ジャンルや地域を越境しながら多くのプロジェクトを手がける。

 

馬渡 侑佑馬渡 侑佑(まわたり・ゆうすけ)
九州アイランドワーク(株)  代表取締役社長
大学卒業後、ITベンチャー、コンサルティング会社を経て、チームラボに入社し、教育プロジェクト「学ぶ!未来の遊園地」の立ち上げに従事。その後、大分県竹田市に移住し、現在は九州アイランドワーク(株)にて、分散型ワークプレイスを運営する。

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