2022年01月25日( 火 )
by データ・マックス

「政商」SBI北尾吉孝CEOの野望~金融庁OBを迎え入れ、大願成就に王手(1)

 新生銀行が白旗を掲げた。買収防衛策を取り下げ、SBIホールディングス(HD)傘下に入ることを決定したのだ。SBIHDによる新生銀の株式公開買い付け(TOB)が成立すれば、北尾吉孝社長CEOが掲げる「第4のメガバンク構想」実現に向けて大きく前進する。北尾氏の銀行買収の狙いは何か。竹中平蔵・元金融相、五味廣文・元金融庁長官、そして金融庁という3つのキーワードのもとに説明していく。

五味廣文・元金融庁長官を会長として受け入れる

買収 イメージ (株)新生銀行は11月24日、ネット金融大手SBIホールディングス(株)(SBIHD)から受けている株式公開買い付け(TOB)に対抗するための買収防衛策を取り下げると発表、防衛策の賛否をはかる予定だった25日の臨時株主総会を中止した。

 新生銀行はSBIが新たな役員候補として求めていた3人を受け入れる。新会長候補の五味廣文・元金融庁長官、新社長候補の川島克哉・SBIHD副社長COO、取締役候補の畑尾勝巳・執行役員の3氏を選任するための臨時株主総会を来年2月初旬をめどに開き、工藤英之社長ら経営陣は退任する意向だ。

旧村上ファンドが参戦

 SBIによるTOBの期限は12月8日。SBIは保有比率を20.48%から最大48%まで高め、新生銀を連結子会社化する計画。銀行持株会社としての厳しい規制の対象となる50%を超えず、株主総会の議決権行使に十分な比率だ。

 TOB価格は1株2,000円。TOB開始当時の株価の1.4倍ほどだ。だが、SBIの希望通りに株主が株の売却に応じる保証はない。

 こういった攻防戦には「物言う株主」(アクティビスト)が参戦してくる。

 11月12日、投資家の村上世彰氏が率いる投資会社、(株)シティインデックスイレブンス(東京都渋谷区、福島啓修社長)と村上氏の娘で(一財)村上財団代表理事の野村絢氏が計5.29%の新生銀株を保有していることが判明。大量保有報告書では、「投資および状況に応じて経営陣への助言、重要提案を行う」としている。

 さらに16日、シティが新生銀株を買い進め、保有比率が6.30%まで高まったことがわかった。19日には、保有比率が7%を超えているという。シティ以外にも、海外の投資ファンドが新生銀行株を保有しているとされる。

 これら「物言う株主」たちは、SBIが示す1株あたり2,000円より高い株価での買い取りを求める。SBIが認めなければ、物言う株主はTOBに応じないことになる。

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 こうなれば、SBIの保有比率は目指す「48%」を大きく下回り、物言う株主が新生銀の大株主として発言力を持ち続けることになる。そうなると人事面での施策や地方銀行と連携した収益力の強化など、SBIの描く成長戦略は思い通りに進まなくなるという懸念がある。

国が新生銀を見限った理由

 新生銀はなぜ、白旗を上げたのか。報道各社は一斉に「決め手は国」と報じた。

 新生銀の実質的な筆頭株主は、預金保険機構(出資比率12.89%)と(株)整理回収機構(同9.58%)を通じて22.47%を持つ国だ。株主総会で国が議決権を行使すれば、民間の金融機関の対立に国が裁定をすることになるため、議決権を行使しない可能性が高いとみられていた。

 国にとっては、新生銀が抱える約3,500億円の公的資金の回収が最終ゴールだ。新生銀は、経営破綻した日本長期信用銀行が前身で、1998年と2000年に公的資金を受けた約3,500億円が未納で完済のメドが立っていない。

 11月5日、預金保険機構は新生銀とSBIに株価向上策を公開質問状で尋ねたが、新生銀の回答は説得力が乏しかった。議決権を行使し、反対票を投じる方向に傾いたという。

 新生銀が買収防衛策を取り下げた背景に、「国が総会で防衛策に賛成しないに意向であったことがあるのではないか」と各社で報道された。これについて新生銀の工藤英之社長は25日、記者会見を開き、「国の議決権行使の見込みがどうなるかという話は関係ない」と否定した。

 口が裂けても「国の意向だ」というはずはないが、国が工藤社長に引導を渡したかたちだ。

 報道によると、SBIHDのスキームは、TOBと合わせて新生銀が自社株買いで一般株主の割合を低下させ、最終的にSBIHDと国の保有が計90%となったところで、一般株主から強制的に株式を買い取る「スクイーズアウト」を実施。そのうえで、国が保有する株式を買い戻して公的資金を返済することを提案したという。国=金融庁はSBIHDに軍配を上げた。

(つづく)

【森村 和男】

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