2024年04月26日( 金 )

れいわと維新「ガチンコ勝負」~改憲加速、文通費100万円問題で、れいわが強烈な「先制パンチ」

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 総選挙で議席を増やした“勝ち組”の二政党、「日本維新の会」と「れいわ新選組」のバトルが激化している。議席4倍増の勢いに乗って、自民党以上に改憲に前のめりなのが維新だ。代表の松井一郎・大阪市長が「来夏の参院選と改憲の国民投票を同日に実施すべき」と主張すると、副代表の吉村洋文・大阪府知事も自民党の「本気度不足」を指摘。“第二自民党安倍派”のような存在として、岸田自民党の尻を叩いて改憲を加速化させる役割を買って出ているのだ(11月11日のNetIBNews「【一問一答】吉村洋文大阪府知事に聞く『リニア中央新幹線問題』、『憲法改正』(前)」参照)。

 こうした改憲加速派を「火事場泥棒」と一刀両断にしたのが、二年ぶりに国政復帰をした山本太郎代表と初当選をした大石晃子衆院議員(近畿比例ブロック)。11月10日の新宿街宣で、「自民党以上に改憲に前のめりな維新とどう戦うのか」という私の質問に対して、山本代表は、生活苦や介護殺人など憲法が守られていない違憲状態の解消が先として次のように切り出した。

「憲法が守られていない現実をつくり出してきたこの政治のなかで、『憲法を変えたい』って、これは盗人が窃盗罪を緩めろと言っているのと一緒なのです。『都合の良いことを言っているな』『まずやるべきことをやるべきだ』という話です」

新宿での街宣の様子(写真左・大石議員、真ん中・山本代表)
新宿での街宣の様子(写真左・大石議員、真ん中・山本代表)

 次に山本代表は、改憲を全否定する立場ではないと断ったうえで、国民的な改憲論議の広がりが不可欠とも指摘。こうした条件が満たさずに「火事場泥棒的に変えるのは図々しいにも程があるだろうなということなのです」と釘を刺したのだ。

 続いて、コロナ対策強化を理由にした改憲加速派の目論見についても、次のように解説していった。

 「火事場泥棒的に憲法を変えようとしている奴ら、一体どういうことなのかというと、緊急事態条項です」「(コロナ禍などで)緊急事態の宣言が発せられたときには、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定できる。つまりは国会がいらなくなるということです」「総理大臣が『緊急事態だよ』という話になったら、立法府の存在を無視して、自分たちでルールをつくれてしまうのです。これは非常に危険と私は思っています」(山本代表)。

 続いて、「維新キラー」と紹介されてマイクを握った大石氏(大阪5区で落選・比例復活)も、地元で戦う維新を次のように批判した。

山本代表(写真左)と大石議員(写真右)
山本代表(写真左)と大石議員(写真右)

 「大阪は医療崩壊がワーストなのです。コロナによって亡くなった人は全国一位なのですが、どういうわけか関西のメデイアが『維新のコロナ対策がうまく行っている』と報道するもので、吉村知事の人気が非常に高くて、維新が大躍進をしているという状況なのです」「それで火事場泥棒的に“調子をこいて“、『自分たちがもっと人流を抑えたいから憲法を変えて、皆さんの自由を制限するのだ。これがコロナ対策だ』という訳のわからないことを言っている。まさに火事場泥棒ですよね」。

 山本代表と大石氏という強力なれいわコンビが出現、松井代表と吉村副代表が二枚看板の維新とガチンコ勝負を始めたように見えた。改憲加速化だけではない。維新新人議員の発信を受けて「国会の非常識」と吉村副代表らが騒ぎ始めた「文書通信交通滞在費(文通費)」の1日満額100万円支払い問題についても、れいわは強烈なパンチを放った。吉村知事が衆議院議員を退職した2015年10月1日に文通費100万円を満額受け取っていたことを、大石氏がツイッタ―で暴露したのだ。

 特大ブーメランが返ってきた吉村氏は事実関係を認めて「6年前のことですが、満額寄付を致します」と11月15日にツイートした。しかし、自ら体験した1日100万円満額受け取りを6年間も放置した挙句、総選挙が終わった途端、急に問題視し始めたことになる。「厚顔無恥」「支離滅裂」とはこのことだ。

馬場 伸幸 氏
馬場 伸幸 氏

 そこで2日後の17日、馬場伸幸幹事長(当時)の会見で「なぜこういうことが起きたのか」と聞くと、驚くべき回答が返ってきた。維新が大問題にしている文通費問題は「細かなこと」と言い放ったのだ。

「横田さんは選挙に出られたことがないからわからないと思いますが、吉村副代表が突然の指名で国会議員を辞めて大阪市長選挙に出ると。そういう時には、そんな細かなことはわかりません。もう選挙に向かって突っ走っていくことしか頭のなかにありませんので、『1日に在籍していたから文通費振り込まれているかな』ということを気にしている人がいたら、すごい余裕があるなと思いますけれども、それは現実問題として100万円丸々受領をしていたはずですから、(吉村)副代表が大阪の方で記者会見をして(副代表)自身が『ブーメランになった。誠に申し訳ない。非常に混乱しているなかでの出来事であるけれども反省して、遡って100万円を寄付する』と。非常に真摯な対応ではないかなというふうに思います」

 馬場幹事長はこう説明して吉村氏をかばったが、大石氏はこの会見と同日の17日、第二の特大ブーメランをツイッターで放っていた

 「2015年10月6日 ニコニコ生放送(大阪維新の会特番)鼎談 橋下徹・松井一郎・吉村洋文」と題する動画を紹介、こう解説したのだ。

「2015年10月、退職の1日で文通費100万円を得た、5日後の吉村発言。『文通費、内緒にしてもらったら(苦笑)』『公開してないとこは、飲みしろやなんやに消えているでしょうね』
→吉村さんは10月分だけ公開せず
飲みしろに使ったんですか?
『ブーメラン反省』では済まない大問題ですよね」

 この動画を見た瞬間、馬場幹事長の会見発言(弁明)が崩れ去った。吉村氏は2015年10月当時、大阪市長選突入で頭がいっぱいで文通費一日満額支給に気が付かなかったのではなく、飲み代にも使える「第二の財布」である文通費を問題視、「内緒にしてくれ」と頼んでもいたのだ。

 大石氏紹介の動画は38秒。たしかにツイッタ―で一部引用されていた会話が交わされていた。

●橋下徹氏 しかも毎月百万円、経費をもらうわけで、文通費ね。
●吉村氏 でも文通費の公開、あれは本当、市長と幹事長、いいところに目をつけたというか、ウィークな(弱い)ところを突いていただいて。
●橋下氏 あれだって、地方議員は政務調査活動費で――。
●吉村氏 もうちょっと内緒にしてもらったら(笑い)。あれ、完全に第二の財布ですから。
●橋下氏 あれね。
●吉村氏 維新の会、維新の党は「公開する」ということで公開していますけれども、あれ、公開しないところは本当に第二の財布で、飲み代や何やに消えているでしょうね。
●橋下徹氏 だって、それで税金だってかかっていないわけですから。
●吉村洋文氏 そうです。
 内緒にしてくれ。問題だと認識していたのだ。市長選で忙しいというのはおかしい。

大石 晃子 氏
大石 晃子 氏

 「維新は平気で嘘をつく“虚言癖政党”である」ということを物語る決定的動画だが、大石氏は11月20日18時からの阪急三国駅前街宣でも、文通費問題についての解説のなかでこの動画を次のように紹介した。

 「(吉村氏は衆議院議員を2015年)9月には辞めるのが決まっていたのに、なんで10月1日に辞めはったの。全部知っていたのですね、この方。かつ動画でも、辞めた日の5日後の動画でも『文通費のことは橋下(徹)さん、触れんといて欲しいのですよ』とか動画でニヤニヤしながら、ボールペンパンパンとか落ち着きないような感じになってきて、全部バレているのですね」。

 先の幹事長会見から約2週間後の11月30日、共同代表になったばかりの馬場・前幹事長の就任会見で再質問。前回の釈明内容と、吉村氏らの鼎談動画との食い違いについて聞いたが、回答は「動画は見ていない」。そこで、大石氏のツイッタ―で動画の視聴可能と指摘、次の会見での釈明を待つことにした。

 議席増で勢いづいた維新とれいわとのバトルは、総選挙直後からすでにヒートアップ。12月6日から始まる臨時国会でも、両党が激突する場面が出現する可能性は十分あるだろう。野党第一党よりも発信力で上回るように見える維新とれいわのバトルから目が離せない。

【ジャーナリスト/横田 一】

関連記事