終わりの見えないコロナ禍で利益拡大に走るワクチンメーカー(前)
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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸我が世の春を謳歌するワクチンメーカー
日本では新型コロナウイルスの感染が減少傾向にあり、国民の間には警戒感が薄れてきているようです。とはいえ、南アフリカで新たに見つかったオミクロン株が世界に広がりつつあるため、日本だけが安心ということはあり得ないでしょう。これまで同様に予防措置を続けるとともに、各自が自らの主治医になったつもりで、自分自身の免疫力や生命力を高める工夫と努力を進めることが欠かせないはずです。
思い起こしてほしいのですが、毎年12月1日は「世界エイズデー」です。エイズ問題への関心を高めることを目的に、1988年に世界保健機関(WHO)が制定しました。エイズといえば、1980年代初めから急速に拡大した「現代の疫病」です。HIVと呼ばれるウイルスに感染すると体の免疫機能が破壊され、抵抗力が弱まります。そのため、普通なら感染しないような病気にも簡単に罹ってしまうわけです。
HIVが怖いのは感染しても半年から15年もの長い潜伏期間があるため、本人が気づかないうちに他人に感染させてしまう可能性があることでしょう。大事なことは、そうしたウイルスの特徴を理解し、予防に努めることです。
さて、新型コロナウイルスCOVID-19は人類にとって新たな脅威と言っても過言ではないでしょう。。コロナの変異株といわれるオミクロンも感染力が従来型と比べ、段違いに強いということで話題となっています。日本政府は水際作戦を徹底させようと、外国人の入国を当面、禁止することを決めました。
アメリカの製薬メーカー「ノババックス」は、オミクロン株対応のワクチンを「2週間以内に完成させる」と発表し、20日にEUに承認されています。同じくジョンソン・エンド・ジョンソンも「オミクロン・ワクチン」の開発、製造に着手したと発表しました。
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ワクチン接種をめぐる攻防戦の行方、プラスチック汚染も誘発(前)バイデン大統領のコロナ対策の責任者であるファウチ博士は「オミクロン株の詳細はまだ不明だ」と言っているのですが、アメリカの製薬メーカーは緊急使用の許可をインドネシアとフィリピンから得ており、治験を開始する準備を進めています。これらの手回しの良さには驚かされます。
いずれにせよ、ウイルスの詳細がわかっていない段階で、どうして治療薬を完成させ、製造販売を始めることができるのか疑問だらけです。思い出すのは、トランプ前大統領が2020年初めに、このノババックスに16億ドルのコロナワクチン開発資金を提供したことです。政権との太いパイプを売り物にしており、「ピンチはチャンス」という発想で動いていることはたしかでしょう。
とはいえ、「新たなオミクロン・ワクチンを2週間で完成させる」というのは、理解に苦しみます。日本はそんなワクチンを買わされることになるのでしょうか。ウイルスの分析も必要ですが、ワクチンメーカーの分析も欠かせないと思います。
新型コロナウイルスのお蔭で欧米では億万長者が続々と誕生しています。ロックダウンの影響で、オンライン・ショッピングが大流行しているからです。アマゾンを筆頭に、ネット通販ビジネスは史上空前の利益を稼いでいます。
もちろん、ワクチンメーカーもわが世の春を謳歌しているようです。ファイザーやモデルナの経営者は軒並み世界の大富豪の仲間入りをはたしました。ファイザーのブーラ社長は国連やWHOから「途上国では高額なワクチンを入手できないところが多いので、ワクチンの製造ノウハウを教えてもらえないか」と要請されたのですが、一蹴してしまったようです。「こんな大儲けできる機会を失う手はない」というわけでしょう。
ファイザーはドイツのビオンテックと共同でワクチン開発を進めてきました。オミクロン株に関しても、予防ワクチンを急ピッチで開発中であると説明し、2022年1月から治験を開始するとのこと。しかも、ファイザーの予測では「コロナウイルスによるパンデミックは2024年までは収まらない」としており、次々に発生する変異種に対応できるワクチン開発に取り組む姿勢を打ち出しています。
実は、欧米のワクチンメーカーはいずれもアメリカ、イギリス、ドイツ等の政府から開発予算を受け取っています。いわば、公的資金をベースにワクチン開発に取り組んできたわけです。であるならば、特許利権に執着せず、人命優先という発想で感染症の撃退に成果を上げて欲しいと願わざるを得ません。
(つづく)
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。最新刊は19年10月に出版された『未来の大国:2030年、世界地図が塗り替わる』(祥伝社新書)。2100年までの未来年表も組み込まれており、大きな話題となっている。最新刊は『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』(祥伝社新書)。関連キーワード
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