2024年04月25日( 木 )

“設計思考”で構想する唐人町の未来図、焼き芋できる「立体キャンプ場」案(後)

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「立体キャンプ場」という、らせん状人工台地のパーク構想

都心の森第一弾 アクロス福岡
都心の森第一弾 アクロス福岡

    コロナ禍で、人々の働き方は大きく変わろうとしている。テレワークは日本企業に労働生産性を向上させるヒントを与えてくれた。「誰もが好きな場所で暮らし、好きな場所で働ける」時代へ。これからのオフィスはヘッドクォーター部分だけにして、営業やその他の部門の多くはテレワークにする。それは在宅勤務だけではなく、コワーキング施設やサテライトオフィスなども活用して、業務の指示や研修などもオンライン化が進むことで、立派な本社ビルという存在は次第に空疎なものになるだろう。

 働き方が多様になると、住む場所も変化する。人口分布が流動化され分散されることで、オフィスは不要になるのではなく、住空間や街のなかに埋め込まれていくのだ。

 そこで提案したい空間が、「立体キャンプ場」という都市公園だ。名称は「仮:グランドフードパーク」。らせん状に人工台地を積層し、木々や草土に囲まれる自然の森をつくる。かつて明治通り沿いにつくられた都心の森「アクロス福岡」(1995年)は、人工的な建築とともに創られ、木々とともに成長をはじめ九州らしい植物が増え、自然の山の環境に年々近づいてきているという。有機的な癒しの生態系として福岡市民に今も愛されている。そうした福岡市中心街に“森をつくる第2弾”として、都心に森をつくる。その台地の上に載っているコンテンツ空間として、右記のようなものを点在させてみたい(参考イメージ図)。

(仮)グランドフードパーク構想

□地上階(パブリックゾーン)
 都市公園(芝公園)、遊具、ベンチ、足湯、キッチンカーの停留所、物販店、ドックラン、植物SHOP(森の管理機能)、管理棟など

□低層階(オフィシャルゾーン)
 キャンプ場レジデンス(一般サイト、テントフリーサイト、オートサイト、キャビン、コンテナサイト等)、デイCAMPサイト、カフェ、レストラン、ドックステーション、アスレチックなど
□中層階(シェアリングゾーン)
 サテライトオフィス、コワーキングスペース、シェアスペース、ワークブース、スタディルーム、ライブラリなど
□高層階(プライベートゾーン)
 フィットネスジム、ボルダリングジム、サウナ、スパ、コインランドリー、WC、パウダールーム、シャワールーム、共用ラウンジ、プレイランドなど
□上層階(アクティブゾーン)
 ロッククライミング、ヨガステージ、シェア農場、野菜畑、観光農園等
□最上階(プレミアムゾーン)
 プレミアムキャンプ場、グランピング、ラグジュアリーコテージ、BBQサイトなど

都心の森第二弾 立体キャンプ場イメージ
都心の森第二弾 立体キャンプ場イメージ

 キーワードは“食”をコンテンツとした「ワーデュケーション」だ。ワーデュケーションとは、ワーク(work/働く)、バケーション(vacation/休暇)、エデュケーション(education/教育)の3つの言葉を合わせた筆者による造語だ。ここで働きながら暮らす。学びながら過ごす。自然とともに生活する。長期滞在でもよし、一泊二日でもよし。もちろん日帰りでもよし。郊外や山中や海岸沿いにはない、都市部でのアウトドアを享受する。

 そこから派生していく、生活の延長線上にある買い物や行政サービス、文化・娯楽の体験は、福岡市が将来の市民を迎えるための予行演習となるかもしれない。一定期間の移住体験をすることで、この街の魅力に触れることも出てくるだろう。また、近くの市民がマイクロステイしたり、近隣郊外の住民が平日にワーケーションするのもいいだろう。気晴らしにデイトリップ(日帰り)でも、もちろんロングバケーションで休暇を楽しむことも可能にしたい。

 立体キャンプ場のメインターゲットは、都市型生活の享受とアウトドア生活の憧れをミックスさせた職住近接を望む新世代。そしてメインテーマは、「都心でキャンプ生活を。」だ。

ワーケーション
ワーケーション

<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
松岡 秀樹 氏1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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