2024年03月29日( 金 )

「第8回 花とみどり・いのちと心展」開催~自然への思いをアートで表現(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 「第8回 花とみどり・いのちと心展」が国営昭和記念公園・花みどり文化センター(東京都立川市)で開催されている。数々の作品を通して、明るい未来へ希望をもって生きる力を感じ取ってほしいとの思いから、29人の作家がアート作品を出展。絵とスペースデザインや彫刻が同じ空間に並び、新たなアートに挑戦する場となっている。

自然への思いをアートで表現

花みどり文化センター館長・辻正宏氏
花みどり文化センター館長・辻正宏氏

    「第8回 花とみどり・いのちと心展」は「平和」であることのありがたさを感じ、人々の生活を支えて文化や歴史を生み出してきた自然への思いをアートで表現する展覧会だ。花みどり文化センター館長・辻正宏氏は「当公園のテーマである緑の回復と人間性の向上を踏まえ、コロナ禍であっても公園の使命を発揮することが大切だと感じており、数々の作品を通して、明るい未来へ希望をもって生きる力を感じ取っていただけることを目指しています」と語る。

 同展覧会を主催する現代造形表現作家フォーラム代表・中垣克久氏は「花とみどり・いのちと心展は、詩人やピアニスト、作曲家、美術家など、さまざまな分野の芸術家が集まって活動する、現代音楽の巨匠であり作曲家の故・武満徹氏が主催していた『実験工房』から発想を得ました」と話す。日本の公募展は、展示スペースが区分けされ、同じ種類のアートが1つの場所に並ぶ慣習があり、展覧会が死んでしまっている。しかし、この展覧会は、平面の絵と立体のスペースデザイン(空間デザイン)や彫刻を同じ空間にランダムに展示することで、今まで考えられもしなかった新たなアートのエネルギーに遭遇する場を設定している。

 中垣氏は「若者と年配、画家と彫刻家など異なる者同士が交流すると、新たなアイデアやエネルギーが当然生まれてきます。これらの交流がなくなってしまうと、美術界は『老化』してしまうでしょう。『生きる』ということはさまざまな『実験』を毎日繰り返すことなのです」という。制約を最小限にして自由で開かれた展覧会にすることで、自由な発想からさまざまなアートが生まれてくる。絵と彫刻、スペースデザインが同じ場所に並ぶ混沌的展示は生命のリズム感が“おしゃべり”をはじめ、見ている人も作る人も学び、考え、楽しめる空間だ。

 彫刻家の中垣氏の作品「変異種」は、木をベースにした素材の組み合わせから、コロナ禍で目に見えないウイルスの「正体不明さ」をかたちにしたユニークな作品だ。アートにより心をかたちに表すことで、今の時代のあり方に問いを投げかけている。「アートは形に命を宿す作業です。作品群の中を巡りながら、作品が語り、歌う『智』を感じ取ってほしいと考えています。そして、それから、資本主義社会の日本の今を考える足掛かりにしていただけたらと念願しています」(中垣氏)。

現代造形表現作家フォーラム代表・中垣克久氏と、中垣氏の作品「変異種」
現代造形表現作家フォーラム代表・中垣克久氏と、中垣氏の作品「変異種」

 一方、インスタレーションは、空間を美で満たすことで新たな空間を作るアートだ。ニューヨークや日本で画家・造形作家として作品を手がける佐藤雅子氏の作品「波動」は、銀色のワイヤーとアンティークの金色の額縁のコラボレーションで、光の具合でキラキラと光る。都会の空間にあっても細やかな人間らしさを感じられ、ふと立ち止まって自分の心を振り返り、忘れていた感性を取り戻したくなる作品だ。

佐藤雅子氏の作品「波動」
佐藤雅子氏の作品「波動」

(つづく)

【石井 ゆかり】

▼おすすめ記事
アフターコロナの市民の心を癒す「パブリックアート」の大きな役割!(1)

(後)

関連記事