2022年05月28日( 土 )
by データ・マックス

日本変革図を描く(3)

(株)APIコンサルタンツ 松本 洋 氏

 新しい時代を切り拓く経営者を輩出していくには、どうすればいいのか。20年前、日本で最初に東京で光ファイバー網を100キロ引いて通信革命を起こし、間接材のEコマースビジネスを最初に手がけるなど、新規市場の創出の最前線に携わってきた経験をもち、100社以上の企業へのコンサルタントやM&Aを手がける(株)APIコンサルタンツ代表取締役・松本洋氏に聞いた。
(聞き手:(株)データ・マックス代表取締役・児玉直)

解決のカギは現場にある

 ──これまでのコンサルティングの経験から、企業が業績を伸ばすためには、どのようなことを見極めるのが必要だと考えていますか。

 松本 業績を伸ばしたいと考えていても、経営者は会社の課題を客観的につかんでいないことが多々あります。また、現場も今の仕事のやり方が当たり前になってしまっていて、どう改善すべきか、というところまで、目が向いていないことも多いです。そのため、コンサルタントは朝から夜遅くまで職場に1~2週間滞在し、日々、一緒に汗を流しながら担当者の話を聞いてどのような考えをもっているかを知り、隠れた課題は何かを見極め、どうしたら改善できるかというプランを考えます。現場にいると、その企業が業界で置かれている立場を知ることもできます。現場を見ることが、解決のカギを見つける一番の早道なのです。

業績 イメージ    また、企業が今までの組織のやり方に固執してしまうと、時代の流れについていけなくなることがあります。改善策があっても、それを実行できるかどうかは、経営者と現場の人が本質的な問題の解決に目を向けられるかどうかにかかっているといえます。企業の課題の根本は、人の資質そのものではなく、会社としての仕組みが原因となっていることが多いためです。問題点を明らかにした後には、第三者の立場から、社内の人が言いにくいことを指摘することもありますが、多くの人で組織が成り立っている以上、このような「泥臭い」過程を経なければ、組織を変えることはできません。

日本経済を良くするためにできること

 ──経営者の観点から、日本経済を良くするためにはどのような解決策があると思いますか。

 松本 日本は大量生産の工業化社会に適した人材を生み出す教育システムになっており、現代のデジタル革命に対応した人材を生み出せなくなっています。現状では、1980年代後半から徐々に企業数は減少を続けています。その原因は、以下の3つの構造的問題がありますが、これらを解決するには長期的展望をもった経営者が政治家と協力して制度改革をする必要があると思います。

 1.人口減少と少子高齢化 
 2.将来に夢をもてない若者の急増
 3.行政と企業での硬直的仕組み

 これらの問題に早くから取り組んでいる他国の成功例から学ぶべきではないでしょうか。フランス、北欧などのように、子どもは国の宝だと考え、母子家庭への充実した援助をして、大学までの教育を無償化すべきでしょう。

 日本では婚外子は2%台ですが、米国やEUでは40~50%に達しており、結婚しなくても安心して子育てできる社会福祉が整備されて、人口減少に歯止めがかかっています。

 また、世界に先駆けた新規事業が成功するための大胆な財政支出も重要です。たとえば、スーパー、コンビニの無人化の実現のためにキャッシュレス制度を推進し、仮想・デジタル通貨の発行を容易にするための柔軟な政策が期待されます。

 さらに、企業が必要としていない人財の流動性を高めるために税制を変え、公的資金を使って、次世代に通用するITスキルを無償で習得できるようにすべきです。

 日本人の平均所得が先進国で世界最低になってきているのも問題です。真面目に働いても給料が30年間上昇しなかった日本は、韓国よりも平均賃金の低い国となってしまいました。上位1%の富の保有者の割合を見ると、ロシアは58.2%、米国は35.3%、中国は30.6%、ドイツは29.1%に対し、日本は18.2%と世界でも貧富の差が少ない国となっています。

 なかでも贈与税や相続税が格段に高く、超富裕層が日本から脱出する原因の1つになっています。3Kの仕事をするための短期的な移民を増やすのではなく、日本に足りない起業家や次世代技術をもった高度人材や富裕層を多く移住させ、アジア版シリコンバレーをつくることを提案したいと思います。成功するベンチャー企業が増え、起業家精神溢れる外国人から刺激を受ければ、若者たちも夢をもち、成功に向けて努力するようになるでしょう。

 世界中でインフレが続くなか、30年間デフレから脱却できずにいる日本の物価を上げるためにも世界一遅れている間接業務のデジタル化を進めることも発展への道だと思います。台湾では、天才的なデジタル大臣のオードリー・タン氏が主導し、世界でもトップのデジタル競争力を獲得しています。

 一方で、日本を代表する多くの企業では、他国では考えられないような不要な中間管理職が多く、いまだアナログ的なシステムで効率化を図れず、働く目的を見失っている社員が増加しています。このような日本特有の企業風土を改め、生産性を高めることが必要です。

(つづく)

【文・構成/石井 ゆかり】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:松本 洋
所在地:東京都港区白金台5-22-12 前田道路白金ビル4F
設 立:2011年8月
資本金:4,000万円
TEL:03-6277-3730
URL:https://www.api-c.co.jp


<プロフィール>
松本 洋
(まつもと ひろし)
(株)APIコンサルタンツ 代表取締役・松本洋氏1951年生まれ。APIコンサルタンツ(株)代表取締役社長。東京大学法学部卒業。米国コロンビア大学MBAおよび法学修士取得。日本鋼管(現・JFEスチール)の米子会社ナショナル・スチールを上席副社長(COO)として再建し、通信革命を起こしたKVHテレコムや間接材コストの削減をEコマースで手がけるアルファーパーチェスを創業、代表取締役を歴任。米・企業再建コンサルのアリックス・パートナーズ日本代表や米国の6兆円ファンドであるアドベント・インターナショナルの日本代表に就任。主な著書に『なぜ、誰もあなたの思い通りに動いてくれないのか』(ダイヤモンド社)、『他責病にサヨナラ』(エムオン・エンタテインメント)。

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