2024年03月29日( 金 )

九州各県で大型開発進む、建設業界が直面する人手不足の現状

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長年にわたる業界の懸案事項、人手不足がいよいよ深刻化

工事現場 イメージ    各県の大型案件が24年をメドに竣工を予定しているが、九州で長く建築工事に関わってきた建設会社の経営者らは「ここまで工期が重なることは今までになかった」と声をそろえる。建設業界は現在、未曾有の「人手不足」に見舞われている。以前であれば、たとえば熊本での工事完了後に長崎で着工するなど、大型案件の工期が比較的分散していたことで、人員の確保ができていた。ところが、工期が重なってくると、人員の配置が非常に難しくなるのだという。

 人手不足に追い打ちをかけるのが、「2025年問題」だ。これは25年に、団塊の世代約800万人が75歳以上の後期高齢者となり、超高齢化が顕著となるとされているもの。すでに人手不足といわれる建設業界にも、少なくない影響を与えることは間違いないと見られている。建設業界では、バブル崩壊後の長い不況期において若年労働力を十分に採用してこなかったこともあり、「事業や技能の継承」「若年層の人材確保」などの課題が顕在化しているだけでなく、業界につきまとう「3K(きつい、汚い、危険)」のイメージも採用難に輪をかけ、従前より人手不足が深刻化していた。

 さらに、社会保険未加入問題もある。建設業界では下請企業を中心に、法令によって加入が義務付けられている健康保険や厚生年金保険、雇用保険、労災保険などの各種保険について、企業の未加入や労働者の未加入のケースが多数存在するといわれている。このため、建設労働者のなかには、医療、年金など公的社会保障が受けられない人も少なくない。このことが、技能労働者の処遇の低下や、建設業の労働環境の悪化を招き、若年入職者の減少の一因となっている。問題の本質は、社会保険加入規定にある。個人事業主の職人には、そもそも社会保険の加入義務がない()。また、発注する元請側としても、個人事業主相手であれば社会保険料を支払う義務はなく、社会保険料負担を免れることができていた。そのため、常時雇用でありながら、4名以下のチームを複数つくることで、社会保険を負担しないケースが散見されていた。

 また、人手不足の要因の1つに、業界で横行するダンピングの問題も挙げられる。ダンピングとは不当廉売ともいい、工事請負金額によっては適正な施工が通常見込まれない契約の締結のこと。元請だけでなく、下請企業などにも適正以下の金額で工事契約がなされることで、粗雑工事や労働環境・条件の悪化、安全対策の不徹底につながる恐れがある。

※:個人事業主でも5人以上の社員を抱えた場合には、社会保険に加入しなければならない。 ^

【内山 義之】

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