2024年04月27日( 土 )

まちづくりを支える専門工事、事業者間連携と情報発信で地位向上を目指す

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建設産業専門団体九州地区連合会 (一社)福岡県建設専門工事業団体連合会 会長 杉山 秀彦 氏

建設産業専門団体九州地区連合会
(一社)福岡県建設専門工事業団体連合会
会長 杉山 秀彦 氏

欠かすことのできない、適性価格の実現

 ──とび、防水、鉄筋などの専門工事業者は、まちづくりに欠かせない存在です。

 杉山 福岡市では「天神ビッグバン」や「博多コネクティッド」など、市主導の再開発事業を足がかりとした複数の大型物件の計画が進められており、建設投資は活発です。建設業界全体としては、好景気といえるでしょう。

 しかし、好景気だからこそ「利益を確保しておこう」という意識が働き、元請下請間でダンピングが横行する可能性は否定できません。工事原価には当然、現場作業員への給与も含まれています。発注者、ゼネコン、そして専門工事業者と、全体に利益が循環しなければ、仕事はあるのに請け手がいないという事態を招きかねません。

 すでに現場における人手不足は深刻さを増しており、応援依頼が来ても対応できないという現状もあります。

 建設産業専門団体九州地区連合会 (以下、建専連九州)としても、各専門工事業者が1%でも受注金額を上げられるように、九州地方整備局、各県との意見交換の場を通じ、待遇改善を進めているところであります。

建設産業専門団体九州地区連合会

 ──利益向上は人材確保にも関わる問題で、待ったなしの状況といえます。

 杉山 職人の高齢化が進み、今後引退する人も出てくるなかで、ベテランから若手への技術承継は喫緊の課題です。建設業界は「キツい」「汚い」「危険」の3Kのイメージをもたれていますが、そのうえ給与も上がらないとなれば、若者にとって魅力ある職場とは決してなり得ません。こうした環境を変えていくためにも、建専連九州として一丸となることで、適正価格の実現に取り組んでいます。

人手不足への対応と待遇改善に向けて

 ──人手不足対策として、外国人技能実習生を受け入れる事業者も少なくありません。

 杉山 建設業には、災害復旧工事などを通じて日本の国土を守るという役割もあり、日本人自身がそれを担うのが理想的だとは思います。しかし、日々の現場対応などを考えれば、外国人技能実習生を受け入れざるを得ないところまで来ています。

 ミャンマーやベトナムといった東南アジア諸国、それから中国など、コロナ禍以前は送り出し機関も精力的に活動していましたので、技能実習生を受け入れた専門工事業者は少なくありません。

 中国での話になりますが、技能実習生として訪日を希望する人の月収は、日本に来ることで2倍程度に上がるとのことです。仮に中国での月収が9万円であれば、日本に行くことで18万円程度になるわけですから、彼らにとってもメリットがあるのだと思います。
 建設業界における人手不足解消に向けた選択肢の1つとして、技能実習生の受け入れは間違いなく機能しているといえます。

 ──元請との協議による適正価格の早期実現が、一層求められますね。

 杉山 一例を挙げますと、サッシの取り付け工事に際して、型枠にズレが生じていたため、別途斫(はつ)り工事の費用が発生するということがありました。元請は追加費用の負担を下請に求めたのですが、下請からすれば元請側の提示した施工図に基づいて工事を進めたに過ぎません。下請は、負担を拒否すれば今後の関係性にも影響が出て、最悪の場合は「もう仕事を回してもらえなくなる」という恐怖感もあり、建専連九州に相談を寄せられました。

 建専連九州として国交省と連絡を取り合い、必要書類などを確認したうえで、下請にフィードバックしました。最終的には元請側のミスが認められ、下請は追加費用を負担せずに済みました。

 このようなケースでは、元請下請という関係性から、「仕方ない」とあきらめてしまう下請は少なくありません。元請に直談判しにくい、そういった場合に一度建専連九州にご相談いただくということも考えてもらいたいと思います。

 ──そうした事例も含めて、業界環境が変われば日本人の若者たちも入職しやすくなるかもしれません。

 杉山 建設業のやりがいというのは、「このビルは俺が建てたんだよ」という風に、成果物がはっきりと目に見えて、その仕事に自分が携わったと堂々といえるところにあると思います。

 私の会社でいえば、国立極地研究所からの依頼で、南極の昭和基地の整備を手がけたことは、大きな成果の1つです。このように、長年にわたりその地を象徴する建物として自分たちの仕事を後世に残せることは、建設業の醍醐味ではないでしょうか。

【内山 義之】


<プロフィール>
杉山 秀彦
(すぎやま・ひでひこ)
佐賀県生まれ。大学進学で上京。1970年に(株)杉山組(現・(株)スギヤマ)に入社。79年、34歳で代表取締役に就任。2010年に代表交代し、会長へ。専門工事業の地位向上、待遇改善のため、複数の公職リーダーを務め、多岐に渡る活動を展開している。

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