「フル規格化」へ課題も、西九州ルートが今秋一部開業(前)
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九州新幹線西九州ルート・武雄温泉~長崎が今秋、部分開業する見通しとなった。福岡市と長崎市を結ぶ九州新幹線の整備計画決定は1973年11月。半世紀近くの迷走を経て、最新鋭の新幹線車両が走る。博多~長崎は最速80分で結ばれ、今より30分短くなる。
短絡ルート同意から31年目の開業
長崎ルート(以下、西九州ルート)が具体像を見せたのは、1981年1月。国鉄がフル規格で佐世保市早岐(はいき)経由のルートを発表した。しかし、国鉄改革で誕生したJR九州は87年12月、早岐ルートは採算性がないと表明。ルート見直しを迫られた。そして91年6月、福岡、佐賀、長崎3県、JR九州、九経連の6者で新ルートの検討を開始。同年9月、故・井本勇佐賀県知事が福岡市~武雄市は在来線(長崎線・佐世保線)を使い、武雄市~長崎市は新幹線規格の新線鉄道を建設してスーパー特急を投入する「短絡ルート」を提案。同年11月に6者が合意した。
この短絡ルートが、今回部分開業する区間だ。合意から31年の時が流れ、スーパー特急はJR東海が開発した第6世代の「N700S」車両になった。この間、JR九州は長崎線・肥前山口~諫早を短絡ルートの並行在来線として経営分離を表明。佐賀・長崎県の沿線市町、とくに佐賀県側が猛反発し着工は遠ざかった。
一方で、九州を縦走する鹿児島ルートは91年8月に新八代~鹿児島中央、98年3月に船小屋~新八代で着工、博多に向け工事が進んだ。
上下分離の“妙案”で着工漕ぎつけ
2007年12月、肥前山口~諫早は、鉄道が佐賀・長崎県の保有、列車がJR九州の経営とする「上下分離」の“妙案”を捻出。沿線市町の着工同意を不要にし、知事のみの同意で08年3月に武雄温泉~諫早44kmの着工に漕ぎ着けた。99年5月、西九州ルートの駅だった新鳥栖を鹿児島ルートに追加。11年3月、鹿児島ルートがフル規格で全線開業し、西九州ルート博多~新鳥栖はフル規格の共用区間となった。
そして、西九州ルートには線路幅が異なる在来線と新幹線双方を走れる最高時速270kmの高速フリーゲージトレイン(FGT、軌間可変電車)を導入する方針が98年8月に決まった。しかしFGTの開発は進まず、16年3月に武雄温泉で在来特急と乗り換え、武雄温泉~長崎はフル規格で部分開業する道筋を付けた。併せて、新鳥栖と武雄温泉の接続線でFGT導入の整備手順なども申し合わせたが、17年7月にJR九州が安全性と採算性から導入を断念。国交省も18年7月に追認した。
その後、武雄温泉〜新鳥栖は投資効果からフル規格を推す与党や国交省、長崎県、JR九州と、新幹線開業後の在来特急減少による利便性低下などから反対する佐賀県が対立し、再び膠着状態に。20年6月、国交省と佐賀県は整備方式を多角的に詰める「幅広い協議」を開始。協議は21年11月までに5回開いたが、いまだ折り合っていない状況だ。
【南里 秀之】
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