2024年03月29日( 金 )

“アート思考” でとらえ直す都市の作法(1)

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VUCA時代のsociety5.0

 VUCA(ブーカ)とは「Volatility=変動」「Uncertainty=不確実」「Complexity=複雑」「Ambiguity=曖昧」の4つの語の頭文字をとった造語で、あらゆる変化の幅も速さも方向もバラバラで、世界の見通しが利かなくなったということを意味している。「敷かれたレールに従っていれば成功できる」という常識が通用しない世界になった、という警句は、以前にも増して聞かれるようになった。

<society 5.0とは>

…狩猟社会(society 1.0)、農耕社会(society 2.0)、工業社会(society 3.0)、情報社会(society 4.0)に続く新たな社会のこと。サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会と定義されている。

 VUCA時代にあって役に立つのが、「アート思考」だ。著者は、アート思考の本質はたくさんの作品に触れたり、その背景知識を得たりして「教養」を身につけることではなく、“探究の根”をじっくりと伸ばし「自分なりの答え」をつくるための作法だと説いている。絶対的な答えの存在する数学(たとえば1+1=2のような答えが1つしかないもの)を「正解(=太陽)」を見つける能力だと考えるのに対して、アートが扱うのは「雲」。太陽はいつもそこにあるが、空に浮かぶ雲は常にかたちを変え、一定の場所にとどまることもない。アーティストが探究の末に導き出す「自分なりの答え」は、そもそもかたちが定まっておらず、見る人や時が異なれば、いかようにも変化する。そしてアーティストとは、「興味の種」を自分のなかに見つけ、「探究の根」を張り、あるときに独自の「表現の花」を咲かせる人だ。「表現の花」とは、何もかたちあるものだとは限らない。つまり、現代に生まれているすべての人々が等しく持っている機会と表現の能力を持つ者。…数学の答えは「変わらないこと」に価値があるが、アートの答えはむしろ「変わること」にこそ意味がある。今、アーティストたちは社会のさまざまな局面で「自分なりの『雲』をつくる力」が問われている。我々にとっては、気候変動も「雲」なのだ。

我々にとっての「雲」は
我々にとっての「雲」は

松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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