2024年03月29日( 金 )

“アート思考” でとらえ直す都市の作法(1)

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気候変動がもたらす環境への影響
気候変動がもたらす環境への影響

気候戦争の勃発

 北大西洋条約機構(NATO)の東方拡大から、ウクライナ東部の領土問題、プーチン大統領のロシア帝国復活という野望―ロシアがウクライナ侵攻に至った原因について、メディアではさまざまな切り口で報道されている。痛ましい戦争が早く集結し、平和が訪れることを切に願っているところだが、このウクライナ侵略は別名「気候戦争」と呼ばれていることを皆さんはご存知だろうか。「気候戦争」とは、新しい世界秩序を確立し、覇権の維持を目指すグローバルな闘争の一形態である。ロシア・ウクライナ戦争のポイントは3つ。気候危機によるエネルギー、食料、領土に関する問題だ。

 今後エネルギーの主戦場は化石燃料ではなく、リチウム、ニッケルやコルタンといったレアアースなどの新しい資源になるだろう。化石燃料の需要は伸び悩み、リチウムが「21世紀の石油」となる。長期的に見れば、これはロシア経済にとって憂鬱の種になるだろう。ロシアは石炭、石油や天然ガスの輸出大国であり、化石燃料の上に経済が成り立っていると言っても過言ではない。世界の脱炭素化が実現していけば、化石燃料への需要も大きく低下する。そうなれば、ロシア経済は致命的なダメージを被る。事実、ロシアはすでにレアアースの世界シェアを増やすべく、動鉱山採掘場所き始めている。

鉱山採掘場所
鉱山採掘場所

ウクライナの天然資源

 ロシアでは、気候変動の影響が大きい。気温上昇率は世界の他地域と比べて3倍近くのペースで進んでおり、その結果、永久凍土の融解が進行しているのだ。これによって起きる地盤沈下は、国土の6割を永久凍土が占めるロシアにとっては深刻な脅威となる。

 そうしたロシアに壊滅的な最終打撃として加わると予想されるのが、夏の干ばつによる小麦の生産量減少だ。2021年のG20サミットで、二酸化炭素排出削減を西側から求められたプーチンは、「ロシアのほうがG7よりも削減している」「ロシアは砂漠化、土壌侵食、永久凍土融解といった複合的脅威に直面している」と危機感を露わにした。ロシアも気候危機への適応を迫られているが、ここには深刻なジレンマがある。自国経済を支えている化石燃料を手放すことは、できるだけ遅らせたい。当然、プーチン自らの影響力が低下するのも避けたい。だが、脱炭素化を遅らせれば、自分たちの社会が失われてしまうかもしれない。

永久凍土のブロックがアラスカの北極海岸で崩壊した(米国地質調査所)
永久凍土のブロックがアラスカの北極海岸で崩壊した
(米国地質調査所)

    気候変動の影響、とりわけ干ばつを考えたときに、ロシアにとってますます重要になるのが、ウクライナ産の穀物だ。ウクライナは「ヨーロッパの穀倉地帯」と呼ばれ、ロシアと並ぶ小麦の輸出大国である。その量はロシアと合わせれば、世界の小麦の輸出市場の30%を占めるほどだ。トウモロコシの輸出も多く、中国もウクライナから最も多くトウモロコシを輸入している。


松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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