2024年04月26日( 金 )

建設から「創造」する企業へ進化(後)

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(株)安成工務店
代表取締役社長 安成 信次 氏

 施主や建築主から案件をもらう受注型営業が主流の建築業界。山口県下関市に本社を構える(株)安成工務店の代表取締役社長・安成信次氏は、自社ブランド構築の過程で理想的な建設業の姿を追求。受注型ではなく企画提案型へと転換し実践を重ね、業績を拡大してきた。安成氏はYASUNARIグループとして業容拡大を図るとともに、建設業における事業構造を変えるべく邁進している。
(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役社長 児玉 直)

綿密な戦略が生む多角化経営(つづく)

 物流施設では、新たに自社ブランドSo-Kouを打ち出しました。So-Kouの強みは主に(1)用地探しから運営面まで総合的な提案、(2)システム建築による無柱・低コスト・短工期建築、(3)危険物・冷凍冷蔵といった特殊倉庫の対応可―の3つがあります。

 お客さまが最終的に成し得たいことから逆算して、立地条件、敷地面積、建築概要、契約内容などをヒアリングします。物流オペレーションがスムーズにいくように、建設だけでなく、用地探しから運営までをご提案し、補助金の申請や行政への申請などのサポートも合わせて行います。超高層ビルや橋梁で用いる高張力材を採用することで、最大無柱スパン60m、中間柱ありで最大120mにおよぶ大空間の実績もあります。危険物倉庫・冷凍冷蔵倉庫も、建物をパッケージ化しているため、建築費が安価で工期も短期間です。

 商業開発も積極的に実施しています。複数の地権者さまの土地を一括して事業借地し、その場所に必要なさまざまな業態の商業施設をリーシングして運営しています。当社の強みは、出店企業さまに土地貸しでも建物貸しでも自由自在に対応できる柔軟性です。時には中古の商業施設をスクラップ&ビルドする目的で参画することもあります。現在では大小22カ所、合計借地面積6万4,123.8坪、123店舗(医療施設除く)の所有・管理運営に至りました(21年7月現在)。

 今後、地方都市の再生には、商業開発で培ったノウハウが生かせると考えています。地方都市では、まちづくりを担う地域デベロッパーなどの先導プレーヤーが不足しがちです。当社は、地方都市でまちづくりを担えるデベロッパー力のある建設会社を目指しています。

同社が手がけた商業施設「コスパ新下関」
同社が手がけた商業施設「コスパ新下関」

業界の社会的地位向上へ 構造改革に向けて新団体設立

 ──やはりどの事業も、デザインビルドに代表されるような「企画提案型建設業」としての在り方に原点がありますね。次の目標はどのようなものでしょうか。

 安成 福岡地所さんが宗像コモン、百道のマンション、マリノアシティ、そしてパークプレイス大分、キャナルシティなど矢継ぎ早にハイレベルな開発をされる様を見て、ただただ憧れと尊敬と、福岡にこの会社があることの凄さを感じました。なによりも凄いのは追及するレベルの高さです。今でも漠然とこんな会社になりたいと思い続けています。いつか、地方都市でまちづくりを担える会社になりたいものです。

 それと、私は、手でモノをつくる人たちが社会のなかで評価されず、労せずお金を儲けることが良しとされる今の社会の在り方は間違っていると思っています。手でモノをつくる人たちが尊敬される社会を夢見たいと思います。そのためには、その一員である建設業の私たちが尊敬される建設業を目指さなくてはなりません。これも私たちの大きな課題です。

 今、新しい取り組みに挑戦しようとしています。安成工務店が歩んできた軌跡に基づく確信から、全国の建設会社に向けて受注業態から脱して企画提案型建設業へ構造転換しないか?と呼びかけ、研究会を開催する計画です。「新・建設業 地方創生研究会」を3月3日に、全国16社の建設会社を会員に設立しました。今後、セミナーを開催しながら仲間を増やしていこうと思います。

 あるべき社会を実現するために、今行っている事業の方向性をあるべき社会と同ベクトル上に置くことができれば、建設業は社会にもっと尊敬され、必要な業態になれると思うのです。そこで働く社員も協力業者の職人たちも、もっともっと誇りをもって仕事ができるに違いありません。

 このように建設業界の事業構造のイノベーションを推進させること、これが私のライフワークの1つだと考えています。

(了)

【文・構成:麓 由哉】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:安成 信次
所在地:山口県下関市綾羅木新町3-7-1
設 立:1966年1月
資本金:7,200万円
売上高:(21/12)98億6,400万円
    (21/12グループ)約172億円


<プロフィール>
安成 信次
(やすなり・しんじ)
(株)安成工務店 代表取締役社長 安成 信次 氏1956年生まれ、山口県下関市出身。日本大学生産工学部建築工学科卒。大手ゼネコン勤務後、先代にあたる父・安成信良氏が経営する(株)安成工務店に入社。副社長の折に先代が急逝し、32歳で代表取締役社長に就任する。12社を傘下に抱える(株)YASUNARIホールディングス代表取締役社長も兼任する。

(中)

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