2024年04月16日( 火 )

“アート思考” でとらえ直す都市の作法(4)

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「15分都市」

歩きやすさとヒューマンスケールな街を
歩きやすさとヒューマンスケールな街を

 車無しでも15分で仕事、学校、買い物などの都市機能にアクセスできるというコンセプト。半径2kmの範囲を私たちは「ヒューマンスケール」と呼んで、昔から人が住んでいる都会では、この範囲内に生活に必要なほとんどの施設がそろっていることで証明してきた。

 ウォーカビリティ(歩きやすさ)には、「歩く魅力」がある。10~15分の徒歩の旅。それは歩く仲間がたくさんいること、土地利用と不動産利用の組み合わせ、つい歩きたくなる環境をつくる設計の基本要素を想起させる。持続可能性の高い都市と住みやすい都市の条件は多くが重なっている。それは、どちらにも共通するウォーカビリティという特性。歩きやすい都市は、住民、企業、観光客を引きつけ、客足が増えれば地元商店の利益になる。また収入に関係なく、あらゆる人が歩き回れるということなので、結果的に平等とインクルージョン(社会的包摂)が高まるのだ。

住宅ローンの呪縛

 今の日本を見ていて暗い気持ちになるのは、会社を辞めたいと言いながら、仕方なくしがみついて生きている人があまりに多いことだ。人生の長い時間を費やす仕事がつまらなければ、人生そのものが辛くなってしまう。新築住宅を購入する際に契約する35年ローンという呪縛が、会社へ縛りつける足かせになっている。日本に戦後植え付けられた「持ち家志向」という“呪い”を少しでも中和する(もしくはリノベーションなどで投資資金を抑えるなど、やり方はいろいろあるはず)。たとえば、賃貸に対して国が補助を出すなどして、持ち家の比率を下げる。そうすると、労働市場の流動性は上がる。とにかく、住宅ローンでロックインされる仕組みを、何とかすべきではないだろうか。「35年」は、ちょうどワーカーとしての賞味期限が切れる時期だ。それがそっくりそのままローンの期間と重なってしまうのは、何とも因果なものではないか。

労働市場の流動性を期待したい
労働市場の流動性を期待したい

松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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