2024年04月27日( 土 )

【福岡・ベイエリア】きっかけ次第では“化ける”か(後)

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ベイサイドプレイス博多

都市発展のカギを握る ベイエリアの生かし方

 以前、本誌vo.10(18年8月末発刊、「WFエリアの賑わいは神戸に軍配 都市比較~神戸×福岡」)で、それぞれ海を臨み、かつ規模の近い政令指定都市同士として、福岡市と神戸市のウォーターフロント(WF)エリアを比較したことがある。福岡市では「中央ふ頭」と「博多ふ頭」、神戸市では「神戸ハーバーランド」や「メリケンパーク」などをそれぞれのWFとして比べてみたのだが、両市のWFエリアは、市中心部からの距離的な位置関係や、すぐ横を都市高速の高架が通っていること、旅客ターミナルなどの港湾機能を備えている点など、条件的に似通っている部分は多かった。しかし、こと恒常的な人の賑わいという点においては、このときは神戸に軍配が上がったのを覚えている。MICE施設などが集積してイベント開催時などの集客に特化したエリアである福岡のWFに対し、神戸のWFは商業施設やオフィス、住宅などが混在する複合都市として開発されており、エリアとして抱えている常在人口の多寡がまちの活力である「日常的な人の賑わい」を左右していた。

 ただし今回はベイエリアとして、WFエリアだけでなく、福岡都市圏の臨海部を広く取り上げた。これまではWFでの人の賑わいの乏しさにばかり目が行っていたが、改めて広い視野で見てみると、そのポテンシャルの高さには驚かされる。

 まずは物流拠点として見れば、国内の大都市では唯一日本海側に面しており、100km圏内には成長著しい中国・韓国の各都市が位置するうえ、さらには博多湾が地勢的に地震や津波の被害を受けづらいという特長がある。また、都心に近接した空港へのアクセスにも優れ、博多港を拠点に陸路・空路につなげることで、九州・国内の広範囲へのハブとなり得る。人流に関しても、同様のことがいえる。現在はコロナ禍で停滞を余儀なくされ、たとえ終息しても以前のようには戻らないことが予想されるが、将来的に国内外からの往来が再び活発になったとしても、海の玄関口として人流を受け入れるだけの器は十二分に備わっている。

 また、WFエリアこそ居住人口は多くないものの、アイランドシティやシーサイドももちをはじめとして、臨海部に大規模な住宅地が形成されている場所も多く存在する。とくに福岡市東区、新宮町、古賀市、福津市などの玄界灘の臨海部では、直接海に面する場所こそ長大な松原が広がっているが、そこから一歩内陸に入れば、そのほとんどは住宅地だ。福津市でも近年、旧・福岡厚生年金スポーツセンター跡地で大規模な分譲住宅地「シーサイドパーク海岸通り」(507区画)が開発されたように、ベイエリアでの住宅ニーズは依然高いと見られる。

 観光については、博多湾内を除く大部分が玄海国定公園の区域に指定され、白砂青松の海岸線をはじめとした良好な自然景観が保全されている。もちろん自然環境だけでは観光要素として弱い部分もあるが、本稿でもいくつか事例を挙げているように、各エリアでアクティビティとの組み合わせなどさまざまな誘客策も打ち出しており、全国ブランドとなった糸島のように、きっかけ次第では“化ける”ことは十分に考えられる。

 こうして見る限り、ベイエリアはそれぞれの要素ごとに高いポテンシャルを秘めていることは間違いない。ただ残念なのは、とくに博多湾内では人工的に造成された博多港の各ふ頭の印象が強すぎて、「福岡の海岸部は一般の人は立ち入れない」というイメージを抱きかねないことだ。臨海部を通る都市高速の高架の存在も、そのイメージに拍車をかけている。そのため、せっかく都心部のすぐ近くに海があるにもかかわらず、市民の多くは海に対して、「日常から隔絶されたどこか遠い場所だ」と思ってはいまいか。そうした心理的な距離感からも、福岡のまちは港湾都市でありながらも、ベイエリアのポテンシャルを十分に発揮できていないように思う。福岡のまちのさらなる発展のカギを握るのは、今後のベイエリアの生かし方にかかっていると言ってもいいだろう。

(了)

【坂田 憲治/代 源太朗】

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