2022年05月19日( 木 )
by データ・マックス

ウクライナ報道に隠れ、ミャンマー国軍の弾圧が苛烈に(6)

歯科医師
「福岡・ミャンマー友だちの会」代表
松本 敏秀 氏

 日本政府はロシアのウクライナ侵攻に対し、人道的支援などにアジアではいち早く乗り出した。一方で昨年の軍事クーデター以降内戦状態にあるミャンマーへの姿勢は対照的で、避難民支援は消極的だ。ミャンマーは元来親日的であったが、民主化を望む多数派の国民のあいだで日本政府への不信が広まってきている。ミャンマーで予防歯科などのボランティア活動に長年従事してきた松本敏秀氏(「福岡・ミャンマー友だちの会」代表)は、早く対処しなければ、対日イメージが悪化し、今後の両国の交流・協力関係に悪影響をおよぼしかねないと懸念する。

福岡・ミャンマー友だちの会    支援活動を含め、ミャンマー交流の活動の基盤となっているのが、「福岡・ミャンマー友だちの会」です。今でも任意団体ですが元来は、福岡在住ミャンマー人と地域住民の、うちうちの文化交流の集まりとして、2012年に立ち上げました。しかし、クーデター発生を受けて、国軍の蛮行への反対を非政治的なかたちで示すため、またミャンマー人に私たちが彼らのことを忘れずに応援し続けていることを示すために、数回の写真パネル展や講演会の開催など、外向きの活動を開始しました。

 写真展では、日本の皆さんの心に伝わることを意識して、残酷なシーンは極力減らし、本来のミャンマーの姿を知っていただきたいと、最初のほうは風景や人々を中心に展示しました。ミャンマーの風景は本当に美しく、人々の笑顔も素敵だと思います。そして、徐々に現状を知っていただく写真を並べました。最後に来場者の感想をミャンマー語に翻訳し、SNSを通じミャンマーに発信しました。日本全国に彼らを応援してくれる人がいて、あなたたちは孤立していないということを伝え、元気づけたいのです。1日で数万件の反応がありました。

 講演会は、今年1月にミャンマーで取材を行っていたジャーナリストの北角氏を福岡に招いて開催しました。また、私のほうに依頼があれば、講演会などにも積極的に参加させていただき、ミャンマーの現状を伝えています。

福岡・ミャンマー友だちの会 博多どんたく

 交流活動として、3日博多どんたく港まつりにも参加してきました。3年ぶりの開催となる今年は、コロナ対策で枠が半減したこともあり、パレード参加は抽選で漏れましたが、福岡市が姉妹都市であるヤンゴン市関連ブースを出展するのにあわせ、そちらへの協力要請を受けました。本会はあくまでも政治的には中立で、宗教、人種、国籍などにもこだわっていません。友人としての関係を尊重し、お互いの文化の理解と交流を促進するという、私たちのこの約10年間のスタンスが、行政側にもようやく認知されてきたと思います。

 ──日本に住むミャンマー人の状況はどうですか。

 松本 一昨年のデータですが、九州・沖縄には約3,000人のミャンマー人が住んでおり、うち福岡に約1,200人、熊本・沖縄にそれぞれ約300人が住んでいます。在留の理由は、就職、留学、技能実習、結婚などさまざまです。通常の就職であれ技能実習であれ、日本人の働き手がいない仕事をしているミャンマー人もいて、彼らは日本社会に貢献してくれています。

 クーデター以降、彼らはずっとミャンマーにいる親戚、友人からの助けを求める声に接しており、疲労が蓄積し、望郷の念にかられている様子がうかがえます。また、これはミャンマー人に限ったことではないですが、軍を非難したとの理由で、帰りたいけど帰れない、帰ったら捕まってしまう人もいます。

 ミャンマー人は、自分たちが日本政府・日本人から見捨てられることをもっとも恐れています。現在はウクライナ問題の陰で、ミャンマーに関するニュースが減っています。誰しも暗いニュースは聞きたくないでしょうが、ミャンマーの深刻な現状を知れば、無関心ではいられないはずです。しかし、周囲からの理解、支援がなければ同じように見捨てられた気持ちになるでしょう。私たちは、活動を通じて、日本人にミャンマーについてもっと知ってもらい、関心をもってもらえればと願っています。そして、ミャンマー人の心に寄り添い、温かい言葉をかけてほしいと思います。

 とくにビジネスでかかわっている皆さんには、事業経営的な関わりのみではなく、同じ人としてのご理解とご支援をお願いします。これは、人道的観点はもちろんですが、長い目で見れば経済的観点からも、前述したように今後の人材確保に必要不可欠なことと思っています。

福岡・ミャンマー友だちの会       
代  表  :松本 敏秀        
問い合わせ先:fmtomodachi@gmail.com

福岡・ミャンマー友だちの会

(了)

【文・構成:茅野 雅弘】


<プロフィール>
松本敏秀
(まつもと・としひで)
1983年九州大学歯学部卒、87年同大学院歯学研究科博士課程修了後、同大小児歯科に勤務。96年松本こども歯科クリニックに開院、2011年同クリニックを閉院し、ミャンマーなど東南アジアでのボランティア活動を開始。12年「福岡・ミャンマー友だちの会」を設立、代表に就任。この間、九大歯学部非常勤講師、臨床教授、卒後研修医指導医などを兼任。2019年西日本国際財団第20回アジア貢献賞受賞。

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