2024年04月30日( 火 )

ららぽーと開業で変わる!?博多SOUTHと南区・大橋(2)

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青果市場の閉場・移転で開発欲が高まる

 そうした博多SOUTHの状況を劇的に変えてしまったのが、それまでエリアの核となっていた青果市場の閉場・移転だ。

 そもそもの青果市場は、福岡市の青果物流の中心的な役割を担う市場であり、福岡県内だけでなく九州や日本全国、さらには海外からの入荷も取り扱い、西部市場(西区石丸)と東部市場(東区下原)との3市場を合わせて年間30万t以上を取り扱ってきた。

 だが、青果市場への一極集中による東部および西部市場の機能低下や、築後40年以上経過した青果市場の老朽化や狭隘化、温度管理施設の不足などを理由に、福岡市はアイランドシティの新青果市場への統合移転を決定。2016年2月のアイランドシティの新青果市場(ベジフルスタジアム)の開場とともにそれぞれの機能が統合移転され、3市場とも閉鎖となった。閉鎖後、青果市場跡地の一部は、市場閉鎖にともない市場が遠くなる生産者等の出荷や商品受け取りのための中継所などとして利用されたが、それも一時的なものに過ぎず、やがて再開発に向けて動き出していった。

閉場した旧青果市場(2016年9月撮影)
閉場した旧青果市場(2016年9月撮影)

 「青果市場」「駐車場」「青果物流センター」の3つを合わせた青果市場跡地の面積は約8.7haと広大で、その跡地活用については、2010年に策定した跡地処分の基本方針に基づいて福岡市の農林水産局が検討を進めてきた。17年9月には広大な跡地の活用を目的として「青果市場跡地まちづくり構想」を策定。民間への売却を決定し、18年1月から公募を行い、市が設置した「青果市場跡地活用事業提案評価委員会」(委員長:九大・坂井猛教授)により、三井不動産(株)を代表企業とし、九州電力(株)と西日本鉄道(株)とで構成されるグループが再開発事業予定者に決定した。その後、3社共同で設立した特別目的会社(博多那珂6開発特定目的会社)が跡地を取得して開発に取りかかり、20年11月の着工を経て、今年4月に「ららぽーと福岡」として開業したのは冒頭に述べた通りだ。

建物が解体・撤去された旧青果市場跡地(2018年7月撮影)
建物が解体・撤去された旧青果市場跡地(2018年7月撮影)

 こうしてららぽーと福岡の開業に至ったわけだが、周辺では青果市場の閉場決定以降、不動産売買をめぐる動きがにわかに慌ただしくなっていたようだ。

 「以前は、このエリアの土地を購入しようとするのは、アパートメーカーや戸建事業者などがほとんどでしたが、青果市場の閉場が決まってからは、県外の不動産事業者やデベロッパーなどが事業用物件を探し求めるようになりました」((株)三和地所・立石正彦代表)。

 青果市場そのものは、市場としてやや閉鎖的な土地利用をされていたが、その周辺には卸業者の物流倉庫など、青果市場に関連する施設が多数集積していた。その青果市場がアイランドシティに移転するということは、イコール周辺の関連施設も移転を余儀なくされ、ひいては青果市場跡地だけでなく、周辺でもある程度まとまった土地が売りに出されることが想定される。つまり、それを見越して、不動産事業者らが食指を動かし始めた、というわけだ。

【坂田 憲治】

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