2024年04月26日( 金 )

「棲みごこち」と商業はどこまで混ざるか【1】 人口減少下にあるべき商業とは(後)

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規制が都市をつくる?

 近代の日本では、重化学工業を旗手とする目的合理主義にひたすら片寄った都市形成をしてきた。そのなかで「文化」は邪魔者であり、余計なものとして見捨てられてきた。都市は重化学工業を推進するための装置として目的合理的に分断され、機能とメカニズムに重点が置かれ、「人間の棲みごこち」を忘れてきた。

 とくに東京を中心とする太平洋メガロポリスは、すべての都市が同調された様相を呈している。ビジネス街はビジネス街としてビジネスの機能しか果たさない、繁華街は繁華街でしかなく、住宅街は住宅街として切り離されている。そこには、全体性を拒否した機能むき出しの構造しかない。人間の本質的な性向は一切無視し、管理上、計画上の容易さのみが幅を利かせたのだ。
 都市を計画するのは工学ではなく、土木でもなく、自動車産業でもなく、商業でもなく、住宅建築でもビジネス・ニーズでもない。少なくともそれらの一部分の概念が上位に立ち、肥大化していくのはとても危険だ。

機能むき出しの都市構造
機能むき出しの都市構造

 ハイウェイはたしかに車にとっては快適だが、その醜く汚れた姿は、周辺を極めて不毛な場所にしてしまう。人とどうアクセスするか、車をいかにスムーズに流すかという問いが一番にあるのではなく、人間のドラマが最上位に来るべきだ。そのために車が人の近くにいた方が良いなら、いかにうまく共存させるか、共生させるかを考えるべきである。

 「ソフト」と一般的に呼ばれているトータルな人間的欲求は、「ハード」と呼ぶものと対置概念にあるのではなく、あくまでも上位に来るべき概念。人間の喜び、悲しみ、歌、踊り、ファッション、食事、酒、愛、友情、創造力…それらの混和した人間劇場の舞台こそ、都市の姿だ。問題は、生活の質をどうするかという強い「想い」が第一に来るべきコンセプトであり、すべての機能や装置はそのためにのみ従属すべきなのだ。


松岡 秀樹 氏<プロフィール>
松岡 秀樹
(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。

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