2024年04月26日( 金 )

ららぽーと開業で変わる!?博多SOUTHと南区・大橋(4)

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交通混雑や近隣との競合 地域の持続的な発展を担保できるか

 さてここまで、ららぽーと福岡の開業が、周辺エリアに与えるプラス面の影響について述べてきた。では一方で、マイナス面での影響はどうだろうか。

 まず考えられるのは、周辺道路の交通混雑の誘発だ。再開発に向けての青果市場跡地利用協議会などでも幾度となく取り沙汰されてきたが、ららぽーと福岡が面する筑紫通りは片側2車線で交通量も多く、従前より交通渋滞が慢性化している道路として知られていた。そのため、ららぽーと開業後には周辺道路の交通混雑は必至として、周辺住民をはじめとした筑紫通りの利用者の多くは、半ば戦々恐々としながら構えていたようだ。

渋滞ではないが、交通量の多い筑紫通り
渋滞ではないが、交通量の多い筑紫通り

 ところがフタを開けてみると、意外にもそれほど交通混雑の話は聞こえてこない。もちろんGW期間中や週末ともなると、それなりの交通混雑は発生しているようだが、当初想定していたほどの状況ではないようだ。開業前からテレビCM等で公共交通機関の利用を呼び掛けていたほか、チケットレス駐車場の採用などの交通混雑対策が奏功したとみられるが、それ以外にも、周辺に比べてやや強気の価格設定の駐車場料金を忌避する人や、周辺の交通事情を踏まえて来場を様子見している人も一定数いると思われる。周辺道路の拡幅などのインフラ整備的な対策はほぼ取られていないため、交通混雑緩和策がいつまで効力を維持できるかは不透明だ。

 周辺の商業施設との競争激化も課題だ。前述したように、ららぽーと周辺の博多SOUTHには、中規模の商業施設が点在している。約150mと最も近い距離にある「博多ミスト」をはじめ、「フォレオ博多」(約850m)、「ドン・キホーテ福岡空港南店」(約1km)、「コマーシャルモール博多」(約1.2km)などだ。もう少し広域に目を向けると、「JR博多シティ」(約3.2km)や「キャナルシティ博多」(約3.8km)、「イオン大野城ショッピングセンター」(約4.3km)、「イオンモール福岡」(約4.7km)、「ゆめタウン博多」(約5.6km)などもある。これら商業施設とららぽーと福岡では、類似するテナントも多く、客の奪い合いが発生しかねない。ららぽーと福岡開業との因果関係は定かではないが、博多ミストやフォレオ博多、コマーシャルモール博多などでは空きテナントも出ている。また、周辺に限らず都心部のJR博多シティやキャナルシティ博多などでは、これまで訪れていた都市圏南部からの来場客が、ららぽーと福岡で止まってしまう恐れもある。かようにららぽーと福岡が強力かつ魅力的な商業施設であればあるほど、周辺の商業施設との共存共栄は難しいと言わざるを得ない。“新しいもの好き”の福岡人の性もあり、今後、博多SOUTH内の他商業施設は、冬の時代を迎えるかもしれない。

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 今回、ららぽーと福岡の開業が、博多SOUTH+αにもたらすプラス面・マイナス面の影響について論じてみた。これまで地域の核であった青果市場がなくなり、それに替わるかたちで誕生した大型複合商業施設は、良くも悪くも既存のエリアイメージを刷新してしまうだけのパワーを秘めていたことは間違いない。ただし、かつて各地域の商店街を駆逐していった郊外型大型商業施設が、より新たな施設の登場で窮地に追いやられているように、単体の施設の存在だけで、その後の地域の持続的な発展を担保できるものなのかどうかは疑問符が付く。これについては次号(vol.49/6月末発刊)、ゆめタウン進出の飯塚市とコストコ進出の小郡市の2つの事例を取り上げながら、改めて論じてみたいと思う。

(了)

【坂田 憲治】

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