成仏不動産が福岡進出「事故物件の市場をつくりたい」
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(株)MARKS
代表取締役 花原 浩二 氏いわゆる“事故物件”を専門に買取・再販などを行う「成仏不動産」事業を展開する(株)MARKSは、2019年の事業開始時から話題を集め、順調に業容を拡大。現在では、特殊清掃・遺品整理・相続サポートなどにも対応する。同事業への思いや福岡支店開設の狙いについて、同社の代表取締役・花原浩二氏に聞いた。
使命は不動産の再生
──まずは成仏不動産事業を始められた経緯について、お聞かせください。
花原 事故物件を売却したい人と買いたい人をつなげることで、事故物件の流通に寄与したいという思いから、事故物件に特化した不動産情報サイトを立ち上げました。これが、「成仏不動産」事業の始まりです。サイトは大きな反響を呼び、掲載物件への問い合わせも増加。こうした状況に対応するかたちで、サイト運営だけでなく、事故物件の買取・再販にも注力するようになり、今に至ります。
──売買にとどまらず、自社で特殊清掃も行われるとお聞きしています。
花原 特殊清掃から原状回復後の売却活動まで、ワンストップで行えるのが当社の強みです。事故物件を再販する場合、修繕費用だけでなく、スケルトン状態にする解体費用も余分にかかってしまいます。清掃業の視点で見た場合、利益のために壊すという選択が生じますが、成仏不動産事業では売却までを見据えていますので、清掃はゴールではなく、あくまで中継地点となります。清掃で十分資産価値を担保できるのであれば、無駄な費用をかける必要はありません。当社の目的はあくまで「不動産の再生」なのです。
──事故物件には、どうしても良くないイメージが付きまといます。
花原 ホラー映画などの影響もあり、事故物件に対して腫れ物に触るように接している人が大半だと思います。その一方で、同じく人が亡くなられているはずの病院には、抵抗感なく入院できるという人も多い。この差は、単純に気持ちの問題でしかないと考えています。だからこそ、事故物件であることを包み隠さず、資産価値のある不動産の1つとして取り扱う成仏不動産事業を通じて、物件を借りる・買う人を増やしていき、事故物件に付きまとうネガティブなイメージを払拭していく必要があるのです。
福岡市場への挑戦
──今年3月、福岡支店を開設されました。
花原 福岡は、以前からお問い合わせを頻繁にいただいていたエリアです。自殺対策を課題とする県(※)であるほか、葬儀社や空き家の数が多いことも一因だと思います。また、人口も増加傾向で推移しており、再開発の効果で地価が高止まりし、デベロッパーも開発用地の確保が容易ではない状況を鑑みると、事故物件に対する需要喚起も相応に見込めるのではないかと考えています。
※警察庁公表『令和3年中における自殺の状況』によると、兵庫、北海道などと並び、自殺者数の多い上位10都道府県に名を連ねている。
加えて、福岡はアジアの玄関口で、国際色豊かなエリアでもあります。中国や、フィリピン、ヨーロッパの投資家は、事故物件にさほど抵抗感がないようです。そうした海外の投資家と接点を持つ機会のあるエリアという点でも、福岡市場には高いポテンシャルを感じています。
──福岡支店は、九州圏を対象に活動されるのでしょうか。
花原 九州だけでなく、中国・四国地方も福岡支店で対応していく予定です。情報共有や業務提携も重要になりますので、各地域の葬儀社とも連携できるように、関係性の構築に取り組んでいく必要があります。
福岡の金融機関は、事故物件への融資に対する抵抗感が少ないと感じています。今のところ融資を断られたことはありません。金融機関から受け入れられやすいというのは、事業を拡大していくうえで非常に重要な要素です。ファイナンスに柔軟性があれば、当社としても顧客の多様なニーズに応えることができ、結果として事故物件を所有して困っているオーナーさまを助けることにもつながります。
──福岡支店での目標について、お聞かせください。
花原 初年度の目標として、まずは取引件数50件を掲げています。採用活動も進んでいますので、来年度以降はさらに増やしていくつもりです。
「面白いビジネスをしているね」と言われますが、福岡における事故物件のマーケット形成は、まだまだこれからです。ニーズは確実に存在していますので、事故物件を堂々と売り出せるようになれば、反応も変わっていくと確信しています。実績を増やすことで、事故物件の買い叩きを防ぐこともできるようになります。
そのためにも、福岡の皆さんに成仏不動産事業について知ってもらうことで、事故物件に関する議論が活発化してほしいと願っています。福岡は、九州における情報発信基地です。福岡で基盤をつくることで、鹿児島などのほかのエリアにも支店を開設していければ、と考えています。
──最後に、今後の展望についてお聞かせください。
花原 事故物件に対して「平気な人」と「嫌悪感を持つ人」、仮に「白」と「黒」としましょう──そしてその間に、「どちらでもない人」も相当数いると思っています。私は福岡で「成仏不動産」の知名度を高めることで、このどちらでもない人たちを白と黒にしっかりと分けたいと考えています。
境界をはっきりさせることは、全体として白を増やすことにつながります。無理に白と黒に二分する必要はありませんが、白の割合を増やすことで、事故物件を普通の不動産として捉えられる人を増やしていきたいと思っています。それが、資産価値の向上にもつながり、ひいては資産処分の際の選択肢を増やすことにもつながるのです。「事故物件なら成仏不動産」──そう言ってもらえるよう、これからも事故物件の市場形成に尽力してまいります。
【吉村 直紘】
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