2024年04月25日( 木 )

観光DXとマーケティング~これから変わる観光地の姿~

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    現在、コロナ禍における海外への旅行制限により「リアルな観光」への期待が増大しています。これを受けて、観光庁はアフターコロナの観光需要の創出を推進しており、旅行者に対する消費機会の拡大や単価の向上、そして新たな観光コンテンツやサービスの変革を推進しています。今、観光産業は日本の大きな柱の1つと考えられています。

 そのようななか「観光DX」という言葉も聞かれるようになりました。観光DXとは、観光地のビジネス的な変革を意味しており、単に作業の省力化を図ったり、情報や体験をデジタル化したりするだけではありません。消費機会の拡大を目指して、新たな体験価値を提供することこそ、観光DXの目指す世界であるといえます。

 これまで日本の観光地に根付いてきた「おもてなし」の文化を振り返ると、顧客満足度を上げるために多くの人を配置し、丁寧な対応が大切だと考える傾向にありました。しかし昨今では、営業時間にしか対応できない「人」よりも、24時間ネット予約可能などの利便性が高いほうが顧客満足度を高めるということもわかってきました。そうなると、「人」が必ずしもおもてなしにおいて重要なケースばかりではないことがわかります。これについては、「おもてなし幻想 デジタル時代の顧客満足と収益の関係」(※)という書籍が参考になります。

※出版:実業之日本社/著者:マシュー・ディクソン、ニック・トーマン、リック・デリシ(共著)、神田昌典、リブ・コンサルティング(日本語版監修)、安藤貴子(訳)

 もう1つ観光ビジネスを大きく変えるのは、5Gや高速Wi-Fiなどによって実現可能な新たな観光体験の提供です。今後、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、XR(ミックス現実)といった技術の進化により、観光の可能性が広がります。ARやXRであれば、実際に見ている景色に情報や映像を重ね合わせることで、さまざまな体験価値を提案できるようになります。たとえば、スマートグラスを装着すると、常にガイド付きの観光が行えたり、視界の360°が覆われた映像で限りなく現実に近い世界に没入する感覚で歴史的な体験をすることも可能になります。

 また、これらの情報端末(とくにVR)には内側にもセンサーがあり、目の動きを捉えるものもあります。これによって顧客がどこに興味や関心を示すのか調査できれば、リマーケティングの観点を取り込んで設計し、サービス向上を図れます。このように、観光DXによる新たな観光体験や旅行者のニーズを捉えたマーケティングにより、これからの観光地は大きく変わる局面に入ることでしょう。

 現在、私が運営する(一社)まちはチームだが管理を行う小倉城でも観光DXの準備を進めており、ARやXRを取り入れ、新たな顧客体験をつくっている最中です。これを機に、観光地が主体的に「もう一度訪れてみたい場所」へと変わっていくことができれば、観光産業だけではなく、日本の新しい姿が見えてくるのではないかと期待しています。


<プロフィール>
岡 秀樹
(おか・ひでき)
(株)HOA 代表取締役/(株)BIRDS 代表取締役/(一社)まちはチームだ 代表理事
学生時代ロンドンにおいてシェアリングビジネスで起業する。2014年コワーキングスペース秘密基地を設立。55社を創業させ、新規事業開発をサポート。北九州市公式SNSのコンサルティング、小倉城のマーケティング戦略を担当。北九州地域DMO候補法人(Destination Marketing Organization)となる。企業の規模にかかわらず、デジタルマーケティング活用方法を指南。講演・コンサルティングを行っている。

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