2024年03月19日( 火 )

中国の輸入禁止措置 台湾にどのような影響をおよぼすか

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中国 輸出 イメージ    アメリカのペロシ下院議長の台湾訪問に対し、激しく反発する中国は、関連の法律規定に基づいて、事実上の経済的な報復措置を発表した。

 中国の税関総署は1日、台湾の食品企業100社以上に対し、輸入を禁止する措置を取った。禁輸対象にはパイナップルケーキの販売で知られる人気菓子店やインスタント麺を扱う著名食品メーカーなどが含まれ、台湾の食品業と農漁業への打撃が懸念されている。中国側は、台湾側の手続きに不備があったことを禁輸の理由としているという。

 ペロシ下院議長の台湾訪問の翌日、中国商務部(省)は、天然砂の台湾への輸出を停止し、関連措置を2022年8月3日から実施すると発表した。そして台湾からの輸入については、柑橘類やタチウオ、冷凍アジといった品目が3日から禁輸の対象となる。

 明言はしていないが、事実上の経済的な報復措置とみられる。
 中国の王毅国務委員兼外交部長は3日朝、ペロシ議長の台湾訪問に対し声明を出し、今回の訪問が「中国人民の強い憤りを引き起こした」と批判をしたうえで「台湾問題で挑発する者は必ず頭から血を流すことになる」と警告をしている。 

天然砂輸出の停止

 砂石(砂と石)は建設工事における最も基本的かつ不可欠な材料だ。建設用の砂は天然砂と機械で製造する人工砂の2種類に大きく分けられる。天然砂には川砂、陸砂、海砂があり、人工砂は原料を機械で粉砕して製造した砂石のことだ。

 中国の税関総署が微信(WeChat)公式アカウントでこのほど発表した文章によると、天然砂には主に次の3種類がある。(1)珪砂石と英砂。建設業、ガラス工業、メタルクリーニングなどに使用される。(2)カオリンを含む砂質土。主に鋳型および耐火物の製造に使用される。(3)長石。主に製陶業で使用される。

 国際連合環境計画(UNEP)のまとめた統計によると、世界の砂の使用量は20年前に比べて200%増加した。米放送局CNBCの報道によれば、建設工事だけでも、世界では毎年400億トン以上の砂が使われているという。

半導体産業への影響は?

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 中国商務部が台湾への天然砂輸出を停止すると発表すると、台湾の半導体産業や太陽光発電産業などに影響を与えるのではないかとの声が一部で上がった。砂は建設分野で用いられるだけでなく、他にもたくさんの用途があり、スマートフォン、ノートパソコン、新型コロナウイルスワクチン用のガラス瓶、さらには半導体の製造でも必要とされる。

 福建省のある太陽光発電ガラスメーカーの林加富エンジニアは、「税関総署の天然砂の輸出管理規定に基づくと、対象となる天然砂は建設業で用いられるものであり、精錬や普通ガラス製造などにも用いられ、太陽光発電ガラスの製造に用いる珪砂は二酸化ケイ素の純度に対する要求が非常に高い」と述べた。

 北京理工大学材料学院の常帥副研究員は、「砂をケイ素材料に変えようと思ったら、砂のなかの二酸化ケイ素を変換して純度98%以上のケイ素材料に変え、さらにこの工業用ケイ素の純度をさらに高め、それから純度が基準に達したケイ素材料で単結晶シリコンを製造する。簡単にいえば、高純度の単結晶シリコンしか生産材料にならないということだ」と説明した。

 また常氏は、「半導体産業で使用されるケイ素材料の主な出所は川砂ではなく、ケイ素を含んだ各種の鉱石であり、たとえば脈石英、石英質礫岩などがある。こうした鉱石は地球上の埋蔵量が非常に多く、半導体のような先端産業はケイ素材料の使用量が建設業よりはるかに少ない。そのため『砂が足りない』という問題が半導体産業発展のボトルネックになることはない」との見方を示した。

柑橘類・タチウオ・冷凍アジの輸入も停止

 昨年以来、中国の税関は台湾より輸入された柑橘類のなかから検疫有害動植物であるコナカイガラムシをたびたび検出した上、フェンチオンとジメトエートは残留農薬の基準値を超えていた。また今年6月には、中国が台湾より輸入する冷凍タチウオと冷凍アジのパッケージが新型コロナウイルス感染症のPCR検査で陽性になった。

 6月には中国向けの輸出が9割を占める海水魚ハタの輸入停止を決め、台湾側が強く反発したが、さらに、8月3日から、台湾より中国への柑橘類、冷凍タチウオ、冷凍アジの輸入が停止されることも決定した。

 中国税関のウェブサイトによると、「ビスケット、ケーキ、パン」の項目に登録されている台湾企業107社のうち、35社が「輸入一時禁止」とされた。輸入一時停止の理由について、企業登録の更新や資料の追加提出が完了していない台湾メーカーの商品の輸入を、中国が定める規定に従い、制限したとされている。

 台湾行政院農業委員会は、茶葉業者3社や水産品を扱う漁船約700隻も同様の措置となったほか、ドライフルーツや蜜蜂関連商品、カカオ豆、野菜などでも影響を受けている企業があると説明。台湾財政部の資料によると、2021年の台湾から中国や香港に対する加工調理済み食品の輸出額は6億4,621万米ドル(約845億円)だったという。


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