2024年05月21日( 火 )

N-WOODによる民有林の課題解決と資産化

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

(一社)N-WOOD国産木材流通機構 代表理事 三鍋 伊佐雄 氏

(一社)N-WOOD国産木材流通機構
代表理事 三鍋 伊佐雄 氏

 コロナ禍やウクライナ情勢など、世界経済の不透明感が増すなか、あらゆる分野で自給率が劣る日本の姿が浮き彫りとなった。物資やエネルギーの国産化が喫緊の課題となるなか、国産材の可能性に注目し、活用促進に向けて幅広い活動を展開しているのが、(一社)N-WOODだ。

(聞き手:内山 義之)

民有林を資産として次世代に承継

 ──まずは、貴団体発足の経緯を教えていただけますか。

 三鍋 日本における森林面積の7割近くが、個人や法人、地方自治体が所有する民有林です。民有林の利活用をいかに促進するかが、国産材を取り巻く諸問題の解決や、ポテンシャルの発揮に向けた動向を左右するといえます。

 しかし、林業従事者の多くが小規模・低採算に悩まされており、こうした林業の現状が後継者不足、ひいては所有者・共有者不明森林の増加につながっています。

 私は前職で、国産材よりも外国産材を多く利用していましたが、こうした日本の森林事情を目の当たりにし、打開の道を模索するようになりました。そして、アイデアを具現化すべく、組織活動を起案。有志とともに2016年に社団法人を設立し、活動拠点の候補地として、日本屈指の森林地帯である九州が最適地であるとの判断から、福岡に本店を構えることになり、現在に至ります。

 ──主な活動内容について、お聞かせください。

 三鍋 先ほどお話ししたように、民有林の利活用については課題も多く、とりわけ相続問題が顕在化しています。私たちはこの相続に関する問題に対して、「施業委託」や「森林信託」を1つの選択肢として提案しています。森林所有者の高齢化が進むなか、不慮の事故や後継者問題などで、造林・保育・伐採などの施業が困難になるケースは珍しくありません。また、10年後を考えて何らかの対策を講じたい、けれど森林は財産として親族に継承したい、という所有者も少なくありません。

 たとえば森林信託は、所有する森林財産を相続権者に信託(財産管理を法的に任せること)し、受託者は自ら施業するのではなく、専門施業者に運営を委託する仕組みです。遠隔地に居住していても森林経営を継続できるだけでなく、受託者は得た収益を金銭分配可能であり、長年にわたり守ってきた森林という財産を、引き続き家族で守り育てることが可能な仕組みでもあります。

 また、森林経営委託による方法では、伐期にある森林を対象に、皆伐から再造林・下刈りまでの期間お預かりする再造林請負事業や、間伐期以上の森林を対象に、長期(スギで概ね45年)の森林経営委託なども提案しています。森林は財産であると同時に、地域の保全や地元産業にとっても必要不可欠な貴重な資源です。だからこそ、森林経営に必要なのは持続可能な循環型経営だと考えています。

森林信託概要
森林信託概要

 ──少子高齢化社会の今、こうしたサービスへの需要は高まっていると思います。

 三鍋 経営委託期間は最短で5年、最長で45年。「間伐をお願いしたい」「原木販売をお願いしたい」「親子間での承継協議に入ってほしい」など、依頼もさまざまです。周知活動の一環として、説明会も開催しています。最近ではSDGsとの関連のなかで国産材にも注目が集まっており、企業から講演を依頼されることもあります。

 ありがたいことに、応援してくれる企業や団体も増えてきています。熱量計算協力などを得ての省エネ住宅研究、また、国産材をどう確保し、国内外の市場にどう流通させ、どうやって価値の向上を図っていくかなど、実証実験のようなことまで、有形無形問わずご支援いただいています。このように応援企業の皆さんと一緒に、“チームN-WOOD”として活動できる点も、私たちの強みになっています。

【文・構成:代 源太朗】


<プロフィール>
三鍋 伊佐雄
(みなべ・いさお)
1952年生まれ。愛知県出身。国立豊田工業高等専門学校卒後、大東建託(株)代表取締役社長やシダックス(株)取締役などを歴任。現在、(一社)N-WOOD国産木材流通機構の代表理事のほか、ローランド(株)取締役、ユニゾン・キャピタル(株)マネジメントアドバイザー、N-WOOD創林(株)社長を務める。「弱者が勝つ戦略」(PHP研究所)「まじめに賃貸経営」(PHP研究所)など著書多数。


<INFORMATION>
(一社)N-WOOD国産木材流通機構

代表理事:三鍋 伊佐雄
本 店:福岡市博多区博多駅東2-5-19 サンライフ第3ビル6階
設 立:2016年9月
資本金:2,000万円
TEL:092-517-7701
URL:http://www.nwood.or.jp

N-WOOD創林(株)
代 表:三鍋 伊佐雄
所在地:福岡市博多区博多駅東2-5-19 サンライフ第3ビル6階
設 立:2022年1月
資本金:6,000万円
TEL:092-517-7701
URL:https://nwood-sourin.co.jp

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事