N-WOODによる民有林の課題解決と資産化
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(一社)N-WOOD国産木材流通機構
代表理事 三鍋 伊佐雄 氏コロナ禍やウクライナ情勢など、世界経済の不透明感が増すなか、あらゆる分野で自給率が劣る日本の姿が浮き彫りとなった。物資やエネルギーの国産化が喫緊の課題となるなか、国産材の可能性に注目し、活用促進に向けて幅広い活動を展開しているのが、(一社)N-WOODだ。
(聞き手:内山 義之)
民有林を資産として次世代に承継
──まずは、貴団体発足の経緯を教えていただけますか。
三鍋 日本における森林面積の7割近くが、個人や法人、地方自治体が所有する民有林です。民有林の利活用をいかに促進するかが、国産材を取り巻く諸問題の解決や、ポテンシャルの発揮に向けた動向を左右するといえます。
しかし、林業従事者の多くが小規模・低採算に悩まされており、こうした林業の現状が後継者不足、ひいては所有者・共有者不明森林の増加につながっています。
私は前職で、国産材よりも外国産材を多く利用していましたが、こうした日本の森林事情を目の当たりにし、打開の道を模索するようになりました。そして、アイデアを具現化すべく、組織活動を起案。有志とともに2016年に社団法人を設立し、活動拠点の候補地として、日本屈指の森林地帯である九州が最適地であるとの判断から、福岡に本店を構えることになり、現在に至ります。
──主な活動内容について、お聞かせください。
三鍋 先ほどお話ししたように、民有林の利活用については課題も多く、とりわけ相続問題が顕在化しています。私たちはこの相続に関する問題に対して、「施業委託」や「森林信託」を1つの選択肢として提案しています。森林所有者の高齢化が進むなか、不慮の事故や後継者問題などで、造林・保育・伐採などの施業が困難になるケースは珍しくありません。また、10年後を考えて何らかの対策を講じたい、けれど森林は財産として親族に継承したい、という所有者も少なくありません。
たとえば森林信託は、所有する森林財産を相続権者に信託(財産管理を法的に任せること)し、受託者は自ら施業するのではなく、専門施業者に運営を委託する仕組みです。遠隔地に居住していても森林経営を継続できるだけでなく、受託者は得た収益を金銭分配可能であり、長年にわたり守ってきた森林という財産を、引き続き家族で守り育てることが可能な仕組みでもあります。
また、森林経営委託による方法では、伐期にある森林を対象に、皆伐から再造林・下刈りまでの期間お預かりする再造林請負事業や、間伐期以上の森林を対象に、長期(スギで概ね45年)の森林経営委託なども提案しています。森林は財産であると同時に、地域の保全や地元産業にとっても必要不可欠な貴重な資源です。だからこそ、森林経営に必要なのは持続可能な循環型経営だと考えています。
──少子高齢化社会の今、こうしたサービスへの需要は高まっていると思います。
三鍋 経営委託期間は最短で5年、最長で45年。「間伐をお願いしたい」「原木販売をお願いしたい」「親子間での承継協議に入ってほしい」など、依頼もさまざまです。周知活動の一環として、説明会も開催しています。最近ではSDGsとの関連のなかで国産材にも注目が集まっており、企業から講演を依頼されることもあります。
ありがたいことに、応援してくれる企業や団体も増えてきています。熱量計算協力などを得ての省エネ住宅研究、また、国産材をどう確保し、国内外の市場にどう流通させ、どうやって価値の向上を図っていくかなど、実証実験のようなことまで、有形無形問わずご支援いただいています。このように応援企業の皆さんと一緒に、“チームN-WOOD”として活動できる点も、私たちの強みになっています。
【文・構成:代 源太朗】
<プロフィール>
三鍋 伊佐雄(みなべ・いさお)
1952年生まれ。愛知県出身。国立豊田工業高等専門学校卒後、大東建託(株)代表取締役社長やシダックス(株)取締役などを歴任。現在、(一社)N-WOOD国産木材流通機構の代表理事のほか、ローランド(株)取締役、ユニゾン・キャピタル(株)マネジメントアドバイザー、N-WOOD創林(株)社長を務める。「弱者が勝つ戦略」(PHP研究所)「まじめに賃貸経営」(PHP研究所)など著書多数。
<INFORMATION>
(一社)N-WOOD国産木材流通機構
代表理事:三鍋 伊佐雄
本 店:福岡市博多区博多駅東2-5-19 サンライフ第3ビル6階
設 立:2016年9月
資本金:2,000万円
TEL:092-517-7701
URL:http://www.nwood.or.jpN-WOOD創林(株)
代 表:三鍋 伊佐雄
所在地:福岡市博多区博多駅東2-5-19 サンライフ第3ビル6階
設 立:2022年1月
資本金:6,000万円
TEL:092-517-7701
URL:https://nwood-sourin.co.jp月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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