2024年05月23日( 木 )

コロナ禍のタワマン論再考【1】 タワマンとアンスロポセン(前)

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タワーマンション イメージ

タワマンの高い換金性

 コロナ後の再開発の行方に関して、すでに方々で議論されていると思うが、まだコロナ禍の真っ只中ということもあり、今後どこまで影響が残るのか、まだ明確には見えてこない。「三密を避ける×リモートワーク」の普及で、再開発のスタイルも大きく影響を受けると想像するが、そのとき高層マンション(タワマン)というビルディングタイプは、どうなるのだろうか。人口密度を高くするタワマンは、もう建設すべきではないのではないかとも思いたくなる。しかし、調べた限りでは、そう単純に言い切れるものではなかった。コロナ禍におけるタワマンに対する評価は識者によって違い、しかし一方でコロナ後に目指すべき「15分コミュニティ」の将来像を描くにあたって、タワマンというのは1つの重要なキータームになりそうである。

 2000年以降、超高層建築物におけるマンションの割合が高くなり、市街地再開発事業では多くの場合にタワマンが計画されるようになった(ⅰ)。都市開発の諸制度(特定街区、総合設計、高度利用地区、再開発等促進区を定める地区計画)は、容積率と斜線制限を緩和する方向に改正され続け、そのたびにタワマンは高く巨大になり続けた。公共空間の増加を要件とする総合設計制度を適用した大川端リバーシティ21(1989)では、容積率割増を利用してその高さは100mを突破した。再開発とタワマンの歴史は軌を一にしてきたといえる。

 現在もタワマンは増え続けている。22年に完成予定の超高層マンション(20階建以上)は307棟、11万2,142戸で、23年には1万9,790戸にまで増加するという(ⅱ)。また、タワマンは中古になっても値崩れが起きにくい高い換金性から、支持され続けている。

都心タワマンは公的資金も

 一方、昨今では、そのタワマン再開発に1つの疑問が呈されている。市街地再開発事業におけるタワマン建設への公的資金の投入がそれである。03年から16年に東京都心3区(千代田区9件、中央区13件、港区13件)において都市計画決定された市街地再開発事業では、中央区と港区のほぼすべての事業に公的資金が投入された。3区とも市街地再開発事業によるタワマンのほうが、ほかのマンションより平均販売価格・平均平米価格ともに高額で分譲面積も広く、限定的な所得階級向けであった。同時期の人口増加のうち、千代田区で45.6%、中央区で32.8%、港区で7.2%が、市街地再開発事業の影響によるものであった。その間、特別区債も中央区では2.03倍になるなど、税収と税負担のバランスが課題とされている(ⅲ)。

 さらに朝日新聞によれば、都内で事業中(19年6月時点)の市街地再開発事業46地区のうち、44地区で事業費に公的資金が投入され、46地区平均では事業費全体の12%を公的資金が賄っていたという。タワマン低層部を自治体が公共施設として買い取る事例も複数あり、区が取得するフロアの代金を含めると、事業費のうち公的資金の割合が69%におよぶ事例もある(ⅳ)。この現象は、自治体の人口と財政にも大きな影響をおよぼすことが示唆されている。

(ⅰ) 森本修弥「超高層集合住宅の進化と系譜」建築雑誌vol.134 no.1720, 日本建築学会、 2019-02
(ⅱ) (株)不動産経済研究所発行「不動産経済マンションデータ・ニュース」2022-04
(ⅲ) 三上悟史、野澤千絵「超高層マンション建設を伴う市街地再開発事業による公共貢献の実態と課題 ――都心3区の2003年以降に都市計画決定された事業を対象に」都市計画報告集2016年15巻3号、日本都市計画学会、2016-11
(ⅳ) 「タワマン建設、税金が支える」朝日新聞、2021-09-12


<プロフィール>
角 玲緒那 氏角 玲緒那
(すみ・れおな)
1985年北海道生まれ、札幌市立高等専門学校、九州大学21世紀プログラム、九州大学芸術工学府博士後期課程単位取得退学。専門は建築。現在は歴史的建造物の保存修復に従事する。2022年4月からは、北海道小樽に拠点を移して活動している。

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