2024年04月21日( 日 )

パチンコ業界を「信頼される業界へ」(前)

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(株)ユーコー
代表取締役社長 金海 基泰 氏

情報に翻弄されたコロナ禍

(株)ユーコー 代表取締役社長 金海 基泰 氏
(株)ユーコー
代表取締役社長 金海 基泰 氏

    ──まずはコロナ禍の影響について、お聞かせください。

 金海 コロナ禍初期では情報が錯綜するなか、ひとまず人が集まる密集状態の回避が推奨され、人が1カ所に集まっているというイメージから、パチンコホール(以下、ホール)が槍玉に挙げられました。

 緊急事態宣言が発出されると、対象地域の人が対象地域外のホールに足を運ぶ事例を、メディアが“越境パチンコ”として取り上げ、集中的に報道したこともあり、ホールへの非難は加速。県境を越えてホールに足を運んだ人が、実際に全国で何人いたのか、統計データがあるわけではないのですが、一連の動きのなかで世間がホールに抱いたイメージを払拭するのは、容易ではありませんでした。

 ──後にホールの換気性能の高さも認知されるようになりましたが、コロナ禍初期のパチンコ業界は、いわれなき非難に晒されていた印象を受けます。

 金海 当社としては、来店されたお客さま全員にマスクを準備するなど、可能な範囲で感染拡大防止に努めました。緊急事態宣言下では、対象地域における全店舗の一時休業を決断。この間、マスクが品薄状態になるなど、営業活動を取り巻く環境は厳しさを増していきました。社会的要請に応え続けた結果として、業績への影響も免れませんでした。2020年3月からコロナへの警戒感から客足が鈍化し始め、緊急事態宣言下の4~5月で売上は大きく落ち込みました。とくに5月は売上がほとんどない状態でした。

 また、コロナとは別に健康増進法の改正(20年4月施行)にともなう原則屋内禁煙への対応もあり、ホールはコロナと法改正にともなう規制強化のダブルパンチを受けた格好です。これまで一緒に『ユーコーラッキー』ブランドを築き上げてきた従業員の雇用を守り抜くことを第一としながらも、緊急事態宣言が解除されたとして、お客さまがホールに戻って来る確証はない。非常に難しい舵取りを強いられた数カ月間でした。

ユーコー本社
ユーコー本社

    ──思うように集客できないという状況は、ホールにとって致命的ですね。一方で、パチンコ・スロット台に黙って向き合う遊技スタイルは、コロナ禍とは相性が良いようにも思います。

 金海 売上に関しては、コロナ前の8割程度まで回復しました。ワクチンの供給開始などポジティブな変化の兆しも見受けられましたが、経営計画の策定に際しては、コロナ前に戻ることはないという前提に立ち、この売上が落ち込んだ状態を基本として、会社を永続させるために必要なことが何かを考えました。

 もちろん悲観しているわけではありません。お話にもあったように、もともと喋ることが少ないパチンコ・スロット遊技は、飛沫拡散への対策が必要なコロナ禍に、適したレジャーともいえます。

反転攻勢、スリーセブン誕生

 ──コロナ禍で規模の大小を問わず、閉店するホールが増加するなか、新ブランドで新規出店を果たされました。

 金海 イーグルR-1太宰府店を「ユーコーラッキー37(スリーセブン)」として22年4月、新たにグランドオープンさせました。イーグル経営の(株)正栄プロジェクト(北海道札幌市中央区)さまとは旧知の間柄であったこと、福岡市近郊での出店には以前から意欲的に取り組んでいたことなど、諸条件が整っていたこともありますが、何よりも「(新規出店を)やりたい」という強い思いが後押しになりました。

 コロナ過で、当社でも長与店(長崎)をはじめ、パチンコ・スロットの設置台数が比較的少ない3店舗を閉店するなど、店舗再編を実施しました。近年のホール経営における潮流として、設置台数500台前後の規模のホール経営は厳しい状況にあり、この傾向は今後顕著になっていくだろうとの判断によるものでした。当時の社会状況と重ねて、不安に感じた従業員もいたと思います。どうしても暗い話題が先行してしまうなか、従業員はもちろん、ユーコーラッキーに足を運んでくださるお客さまの気持ちを、もう一度盛り上げていきたい。新規出店は、この思いの表明でもありました。

ユーコーラッキー37、EVO37 久留米

 ──スリーセブンではSNSなどを通じた対外的な情報発信への注力など、これまでにない動きも見られます。

 金海 スリーセブンは、当社の新たなモデル店舗と位置付けています。SNS上での情報発信も、どこまで集客に結び付くのか未知数ですが、同店を知ってもらうきっかけになればと思います。

 また、出店地である太宰府エリアの特徴も、商圏分析などを通じて把握していましたので、十分勝負できると自信をもっていました。スリーセブンは開店からまだ1年も経っていませんが、すでにグループのホール売上全体の1割を担う店舗となっています。

 先ほど述べたように、設置台数500台前後の店舗では集客が厳しくなっていくと考えていますので、当社としては設置台数800台規模の店舗を充実させていきたいと考えており、スリーセブンが今後展開していく新店舗のモデル店舗になってくれればと思います。

(つづく)

【代 源太朗】


<COMPANY INFORMATION>
(株)ユーコー

代 表:金海 基泰
所在地:福岡県久留米市東町28-9
設 立:1974年5月
資本金:5,000万円
売上高:(21/11)762億円
URL:https://www.yuko-lucky.com/


<プロフィール>
金海 基泰
(かねうみ・もとやす)
1974年生まれ。日本大学文理学部社会経済学科卒後の98年4月、(株)ユーコーに入社。取締役統括本部長、常務取締役統括本部長、代表取締役副社長を歴任し、2010年12月に代表取締役社長に就任。14年6月、(株)ユーコーホールディングス代表取締役社長に就任し、現在に至る。趣味はロードバイクやダイビングなどのアクティビティ。
 

(後)

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