2024年03月29日( 金 )

パチンコ業界を「信頼される業界へ」(後)

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(株)ユーコー
代表取締役社長 金海 基泰 氏

反転攻勢、スリーセブン誕生(つづき)

 ──コロナ禍で閉店するホールが目立つなか、出店を加速するということでしょうか。

 金海 当社は関東エリアの拠点として東京ブランチを構えており、情報収集の面でも役立っています。事業譲渡の話は増えており、新規出店の好機ではありますが、一度閉店したホールを承継し、その場所にお客さまを呼び戻して活況を取り戻すことは簡単ではありません。店舗数を増やしていきたいという考えではありますが、条件、そしてタイミングには細心の注意を払っています。

 また、立地条件がやはり重要で、たとえばユーコーラッキーゆめパーク久留米店は、国道210号沿いにあり、久留米ICやゆめタウン久留米にも近いことから、安定した集客を実現している久留米エリアの旗艦店です。新規出店については、こういった高い集客力を期待できる場所に絞って進めてまいります。

 ──集客するうえで欠かせないのが新台入替ですが、コロナ禍で半導体などの資材不足が深刻化しているとの話も聞こえてきます。

 金海 当社はこれまで同様に新台導入を進めていますが、市場環境の変化や、資材不足などによる新台の価格高騰で、昔のように数十台を一気に購入できる、体力のあるホールは限られてきていると感じます。

 メーカーもそのことはわかっているので、昔のように数十万台を販売するということはなく、販売台数は多くても2万台程度にとどめています。メーカーはさらにそこからホールごとの購入履歴(通称:機歴)を参照して営業活動を展開していくので、欲しい台を希望通りの台数購入できるとは限りません。新台1台が50万円、導入して1週間を待たずにお客さまが離れてしまう台もありますので、メーカー側が販売台数を絞ることは、ホールにとって決して悪いことばかりではありません。メーカーもホールも、市況を見極める力が今まで以上に求められているなと感じます。

休眠ユーザー回帰となるか

 ──いよいよメダルを必要とせず、コンプリート機能(規定のメダル獲得枚数に到達した時点で台が稼働停止する機能)を搭載したスマートパチスロ(以下、スマスロ)が導入されます。

メダル不要の次世代機、スマスロ
メダル不要の次世代機、スマスロ

    金海 スマスロの登場は、お客さまにとって遊技の選択肢が広がることにもつながりますので、期待しています。規制強化などを理由に、ホールから遠ざかっていた休眠ユーザーへのアピールにもなりますので、しっかりと還元できる体制を整えるためにも、まずはスマスロを必要台数確保したうえで、お客さまに新たな遊技体験を提供していきたいと考えています。

 ──規制緩和が図られたパチンコにはファンが戻ってきているようですが、スロットでも同様の流れを期待できると考えますか。

 金海 年末にかけて人気コンテンツのスマスロもホールに導入されますので、話題になることでホールへの誘客を促進してくれればと思います。一方で、市場規模としては縮小している現実がありますので、昔のようにお店をつくって台をそろえればお客さまも比例してどんどん増えていくというわけではありません。需給バランスを見極めながら、適正規模の維持に努めることも大切だと考えています。

業界の未来を切り拓く

 ──パチンコ業界の市場規模は縮小傾向にありますが、それでも約14兆円規模を誇る巨大市場です。

 金海 たとえば、競馬はスマホでも馬券購入ができる手軽さも手伝い、若年層の流入も進んでいます。対してパチンコ・スロット遊技は、その醍醐味を十分に体験してもらうためには、やはりホールに足を運んでもらう必要があり、このこと1つとっても新規ユーザー獲得のハードルは少し高いのかなと思います。

 新規ユーザーの獲得、とりわけ若年層にもアピールしようと思えば、やはりSNS上でも知名度が高いインフルエンサーの活用なども考えていく必要があると思います。休眠ユーザーの掘り起こしとともに、新規ユーザーに向けた動線設計も意識していかなければ、状況は変わらないのではないでしょうか。

 ──許可業の宿命ではありますが、規制の強化・緩和に左右される業界でもあります。

 金海 バランス調整が難しい業界ではあると思っています。私は常々、パチンコ業界が本気でもう一度国民的娯楽として再興を図る気持ちがあるのなら、きちんとした法整備、たとえばパチンコ業法といったようなものの確立が必要だと考えています。

 グレーのままにしてきた部分を明確にすることで、信頼できる業界へと生まれ変わり、従業員が誇りをもって業界で働けて、お客さまも安心して遊技できる、そういう環境をつくり出していきたいと考えています。

(株)ユーコー 代表取締役社長 金海 基泰 氏
(株)ユーコー
代表取締役社長 金海 基泰 氏

    実現に向けては、遊技産業政治連盟などと官民連携も図っています。30名規模の部会の集まりも定期的に開かれています。先の参院選では、業界の声を国に届けようと、候補者も立てました。パチンコ業界全体の発展を目指して、当社にもできることであれば積極的に挑戦していきたいと考えています。そして、そのためにもユーコーラッキーグループを、地域社会に求められる永続企業へと飛躍させていきたいと考えています。

(了)

【代 源太朗】


<COMPANY INFORMATION>
(株)ユーコー

代 表:金海 基泰
所在地:福岡県久留米市東町28-9
設 立:1974年5月
資本金:5,000万円
売上高:(21/11)762億円
URL:https://www.yuko-lucky.com/


<プロフィール>
金海 基泰
(かねうみ・もとやす)
1974年生まれ。日本大学文理学部社会経済学科卒後の98年4月、(株)ユーコーに入社。取締役統括本部長、常務取締役統括本部長、代表取締役副社長を歴任し、2010年12月に代表取締役社長に就任。14年6月、(株)ユーコーホールディングス代表取締役社長に就任し、現在に至る。趣味はロードバイクやダイビングなどのアクティビティ。
 

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