2024年05月14日( 火 )

医薬品4大卸の子会社が絡む談合、課徴金計約6億円

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 九州の4社を含む医薬品卸5社が、公正取引委員会から計約6億円の課徴金納付命令などの処分案の通知を受けた。

 通知を受けたのは、「アルフレッサ」(東京都千代田区)、「翔薬」(福岡市)、「九州東邦」(同)、「アステム」(大分市)、「富田薬品」(熊本市)の5社。もう1社、「アトル」(福岡市)も談合に関与したとみられるが、違反を自主申告したために課徴金減免制度に基づき処分案は通知されなかったもよう。

 上記6社のうち、4社は医薬品卸売業において「4大卸」と呼ばれるグループの子会社である。4大卸の親会社は以下4社。

 (株)メディパルホールディングス(東京都中央区)、売上高:3兆2,909億円(2022年 3月期連結)、上記アトルの親会社。

 アルフレッサホールディングス(株)(東京都千代田区)、売上高:2兆5,856億円(同上)、上記アルフレッサの親会社。

 (株)スズケン(名古屋市)、売上高:2兆2,327億円(同上)、上記翔薬の親会社。

 東邦ホールディングス(株)(東京都世田谷区)、売上高:1兆2,661億円(同上)、上記九州東邦の親会社。

 日本医薬品卸売業連合会に加盟し病院や調剤薬局へ医薬品卸売業を行う企業は、全国には70社(22年3月時点)ある(グループの場合本社のみカウント)。そのうち4大卸がシェア8割を超えるといわれる。1978年には615社あった卸売会社は再編や統合を経て、2012年には92社にまで集約され、18年以降、70社程度の体制におちついた。

 4大卸には含まれていないが、通知を受けたアステムの親会社は(株)フォレストホールディングス、売上高:4,726億円(22年3月期連結)。また、同じく富田薬品は非上場、年商1,360億円(22年3月期)。

 データ・マックスは上記6社ならびに公正取引委員会に対して本件について取材を行った。各社のコメントは以下の通り。

■アルフレッサホールディングス(アルフレッサの親会社)
 本件につきまして株主の皆様、取引先の皆様をはじめとする関係各位の皆様に多大なご心配をおかけしておりますことを、お詫び申し上げます。当社といたしましては、本件通知書を受領いたしました事実を厳粛に受け止めまして、引き続きコンプライアンス体制の強化と再発防止に取り組んでまいります。

■スズケン(翔薬の親会社)
 このたびはお騒がせしており誠に申し訳ございません。当社スズケンといたしましては翔薬とともに、この事態を真摯に受け止め、公正取引委員会の調査に全面的に協力いたしております。現在も調査中でございますので、詳細のコメントについては差し控えさせていただきます。

■東邦ホールディングス(九州東邦の親会社)
 内容についての詳細なコメントは差し控えますが、皆さまにご心配とご迷惑おかけして誠に申し訳ございません。今後、コンプライアンスの強化に努めてまいります。

■アステム
 プレスリリース「公正取引委員会による意見聴取通知書の受領について

■富田薬品
 調査内容についての詳細なコメントは差し控えさせていただきますが、このたびはステークホルダーの皆さまならびに関係者の皆様に大変なご心配とご迷惑をおかけいたしましたこと、深くお詫び申し上げます。当社といたしましては事態を厳粛に受け止め、調査に全面的に協力いたしております。二度とこのようなことがないように再発防止策の強化と徹底に努めてまいります。

■メディパルホールディングス(アトルの親会社)
 21年11月のプレスリリースの通り、公正取引委員会による調査を受けたことは事実ですが、課徴金納付命令等の通知は受けておりません。

■公正取引委員会
 アトルについて調査を行ったことは事実であるが、アトルが自主申告者であるかどうかは申し上げることはできない。また、アトルに対しては課徴金納付命令の発送を行っていないことは事実である。

 本件は、上記6社が2016年夏から19年秋ごろまで、(独)国立病院機構(東京都目黒区)が発注し、九州地方の病院へ納入した医療用医薬品の入札で、事前に落札業者を決めるなどの談合を行っていた疑いがもたれている。公正取引委員会は17日までに独禁法違反で5社に対して計約6億円の課徴金納付命令などの処分案を通知した。(独)国立病院機構は運営する全国の病院で使う医薬品について、地区ごとに分けて一般競争入札を実施している。九州地区の年間発注額は約200億円。

【寺村 朋輝】

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