2024年06月19日( 水 )

労務環境改善へ、現場の実態把握を最優先に

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九州鉄筋工事業団体連合会
会長 宮村 博良 氏
福岡県鉄筋事業協同組合 理事長

実態調査を行い、現実を国交省へ

 ──九州各県の鉄筋工事業協同組合をまとめる九州鉄筋工事業団体連合会(以下、九鉄連)として、今年は主にどのようなことに取り組んでいかれますか。

 宮村 2024年4月から建設業にも適用される働き方改革を見据え、まずは業界全体の現状把握が大事だと思います。そこで社会保険加入率や日給月給と月給制の割合を調べることを上部団体の(公社)全国鉄筋工事業協会(以下、全鉄筋)の会長・岩田正吾氏に提案し、九鉄連で進めているところです。

 22年3月に国交省が公共事業労務費調査(21年10月調査)における公共工事に従事する建設企業、建設労働者の社会保険加入状況調査結果を公表しました。鉄筋工における企業の社会保険および雇用保険、健康保険、厚生年金保険の加入率は100%で、労働者の社会保険加入率は94%、雇用保険は95%、健康保険および厚生年金保険は96%という非常に高い数字が示されています。

 ただし、元請や一次下請業者は概ね調査結果の通りだと思いますが、二次下請、三次下請まで調査すると現実はそうではないと思います。非加入の会社は労務単価を安く抑えることができ、正常な受注単価競争ができていない状況や一人親方問題にもつながっています。

 とくに、所得の面で考えると週休二日制は大きな問題です。月給制であれば所得に変化はありませんが、日給月給制となると職人の所得が下がります。となると、ほかの現場に行ってでも働こうとするでしょう。福岡県内で見ると比較的月給制の会社が多く見られますが、他県では日給月給制の会社が多いと聞いています。

 これらのデータを把握しなければ、前には進めないと私は考えています。そこで、九鉄連の下部組織である福岡県鉄筋事業協同組合の副知事長をグループリーダーに任命し、全鉄筋加盟の全国の企業に対して調査を始めました。時間はかかると思いますが、来年にはまとめて国交省にデータを示し、それを理解してもらったうえで改革をしていただきたいと思っています。また、全鉄筋の岩田会長は建設産業専門連合会の会長も兼任されているので、鉄筋工事業界だけではなく、ほかの専門工事にも同様にデータの把握が波及すればよいと思います。

職人不足解消に向け離職者低減へ

 ──職人不足解消には、離職者をいかに減らすかも大事なことです。

 宮村 あくまでも私の持論になりますが、現場の仕事開始時間の見直しが必要ではないかと思います。現場の仕事開始が朝8時からとすると、7時45分前後には到着しておかなければなりません。現場が遠方の場合は移動だけで1時間以上かかるケースもあります。そうすると自宅を出るのが朝6時頃になるでしょう。職人たちが朝食をコンビニのおにぎりで済ませる光景をよく見かけます。

 地元採用の高校卒や高校中退の若い職人の場合、仕事が終わって友人と遊ぶことが少なくありません。そのため、朝起きるのが難しく、遅刻してしまう。それが続くと仕事に対する熱意が失われ、退職に至ってしまうというケースが実際に多いです。

 労働基準法第34条では、休憩時間は6時間超で45分、8時間超で少なくとも1時間の休憩を与えることと定められています。事故や労災を防止するには集中力を維持するために、一般的には建設現場では正午から1時間の昼休憩のほかに、10時に30分、15時に30分の3回の休憩を取ります。8時から17時の就労時間で7時間労働になります。その現場の仕事開始時間を9時にすればよいと考えます。9時に開始すれば、10時の休憩は必要ないでしょう。正午からの1時間休憩は変えずに、15時の休憩を15分にして17時15分までを就業時間とする。そうすると、7時間労働に収まります。開始時間を9時にすることで、自宅を7時から8時に出ればよいことになります。家族と朝食が食べられるなど、朝の1時間は非常に貴重だと思います。

 今の若い求職者は、給料面もありますが、それよりも自分の時間がどれぐらいあるかを重視しています。職人不足の解消には新たな入職者はもちろん、現在働いている職人たちの労務改善の重要さが増してきます。週休二日制はもとより、日々の生活においての自由な時間を大切にしていると感じます。現場開始時間を1時間遅らせることで、間違いなく離職率は下がると思います。それにともない、若い入職者からの専門工事業に対する見方が変わり、今までよりも入職者が増えてくると思います。

 現状のままでは、ますます職人不足が加速し、現場に職人を送ることができなくなる可能性も出てくるでしょう。職人不足を解決することは、最終的には元請であるゼネコンのためでもあるのです。

 働き方改革の建設業への適用が間近に迫った今こそ、業界内の改革が必要です。今年も業界全体の労務改善に向けて、取り組んでまいります。

【内山 義之】


<プロフィール>
宮村 博良
(みやむら・ひろよし)
熊本県生まれ。19歳で鉄筋工業界に入職し、1984年6月、鉄筋工事の請負施工を目的に創業。87年2月、(有)宮村鉄筋工業(現・(株)宮村鉄筋工業)を設立。2019年12月に九州鉄筋工事業団体連合会会長に就任。現在3期目を務める。

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