2024年05月10日( 金 )

「要件定義と技術」が強み、Robot Homeの不動産DX

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

(株)Robot Home

 SaaSモデルのIoT賃貸経営プラットフォーム「Residence kit」を提供する(株)Robot Homeは、創業時からITを使った不動産経営の自動化を目指してきた。Residence kitの販売をきっかけに、DXへの要望が同社に寄せられるようになっていったといい、2020年からは「DX総合支援サービス」の展開を開始。不動産会社に限らず幅広い分野にわたって、サービスを提供している。同社が手がけるDX総合支援サービスについて、取締役CDXOの松園勝喜氏に話を聞いた。

創業時からの理念 不動産経営の自動化

松園 勝喜 氏
松園 勝喜 氏

 2006年の創業時から、ITを使った不動産経営の自動化を目指してきた(株)Robot Homeでは、比較的早い段階からスマートロックなどのIoT機器や関連するソフトウェアの開発に着手し、16年からは自社企画のアパートなどで提供を行ってきた。

 「Residence kit」と名付けられたこのサービスは、20年春からは賃貸管理システムと連動することで、入居者向け、オーナー向け、管理会社向け、仲介会社向け、それぞれのアプリケーションやシステムとIoT機器の連動を可能にした。オーナーからは「賃貸物件の差別化によって収益力が向上した」、入居者からは「防犯面で女性も安心」「外出先でもインターホンを確認でき、宅配などで便利」といった声が寄せられているそうだ。

 また、物件の入居促進はもちろん、「賃貸管理事業を手がける当社の自社内における業務フロー改善にもつながっている」(同社広報)という。

 同社の管理戸数は約2万6,000戸、管理物件は東京や大阪、福岡ほか全国主要都市に拡散しているが、業務フロー改善による経費圧縮効果は「身をもって体験している」(同)とのこと。Residence kitに対する物件オーナーからの問い合わせも増えているようで、22年9月末時点におけるIoT導入戸数は1万戸を超えた。それにともなって、管理戸数も増加傾向で推移しているが、前述のように固定費を抑えたうえで、管理事業の拡大を進めているところだという。

DX支援のキーマン、最高DX責任者

 Robot Homeにとって、こういったアプリケーションなどの開発に欠かせないのが、取締役CDXOを務める松園勝喜氏の存在だ。CDXO(Chief Digital Transformation Officer:最高DX責任者)の名の通り、松園氏が同社のDX事業を包括的に手がけている。同氏はIoTの開発・運用を行う子会社・(株)Residence kitの代表取締役も務めており、これまでIoT機器や関連するソフトウェアの開発に携わってきた。

 「当社のDXは、適切な要件定義とIT技術をバックボーンに、社内のみならず外部への支援も行っています」(松園氏)といい、経営領域における戦略立案サポートや、サービス開発におけるアイデア設計から要件定義作成、システム開発、PRまで幅広いサポートを行い、サービス提供実績は28社(22年9月末時点)に上る。業務フローの改善はもちろん、IPOコンサルも手がけ、場合によっては出資をともなうハンズオン支援も行う。

DX推進サポート 6つの視点
DX推進サポート 6つの視点

DXに欠かせない、事業側とIT側のハブ役

 DX支援について、松園氏は次のように話す。「当社と支援先、それぞれに『デジタルディレクター』を配置いただくところからスタートします。デジタルディレクターとは、DX担当=プロダクトオーナーのことです。DXには事業側とIT側のハブ役が欠かせません。支援先にも責任者を配置いただくことで、本当の意味での合理化がスムーズになるのです」。

 さらに、「当社におけるDXでは、私が事業側、IT側それぞれのデジタルディレクターとなります。当社では継続的にPM業務の合理化を進めています」といい、四半期に1度は、松園氏が実際に全支店に足を運んだうえで、支店に張り付いて無駄な業務を探し続けているという。

 「『これはおかしいのでは?』『この業務フローは無駄では?』と声を挙げてくれるスタッフの存在が非常に重要です。デジタルディレクターだけでなく、他のスタッフも同じ方向を向くことで、合理化が飛躍的に進むからです」(松園氏)。

 DXにおける無駄の代表格が、Excelなどに代表されるスプレッドシートだという。作成者ごとにフォーマットが変わったり、セルを統合していたり、半角と全角が入り混じっていたりと、データ管理で大きなネックになることが原因のようだ。

 最後に松園氏は、DXについて次のように話してくれた。「DXには経営者の理解と覚悟が必要です。さまざまな業務が合理化できれば、経費を節約できるほか、事業スピードを向上させることも可能です。しかし、それまでの道程では経営者や従業員に少なからず負荷がかかります。先を見据えて粘り強く進めていくことが、何より必要なのです」。

【永上 隼人】


<プロフィール>
松園 勝喜
(まつぞの・かつき)
1980年生まれ。ITのコンサル企業などを経て2016年、現・Robot Homeに入社し18年に取締役に就任した。19年3月には(株)Residence kitの代表取締役(現任)に就任。22年3月にRobot Homeの取締役執行役員CDXO(現任)に就任した。(一社)DX不動産推進協会の理事も兼務しており、不動産マーケットの活性化にも力を入れる。

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事