2024年05月10日( 金 )

移住者から見た糸島の可能性と課題(前)

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糸島への移住を後押ししたもの

 ──まずは、皆さんが糸島へ移住することになったきっかけについて教えてください。

 浦川 今から10年ほど前に、前原商店街にある雑貨屋・ここのきに併設されたタナカフェで働き始めました。唐津に住んでいたので、電車通いで大変でしたが、妻とめぐり会えたことを考えると、良い選択だったなと思います。その後、一人暮らしを考え始めたタイミングで、妻と結婚。生活拠点を糸島に移しました。それからご縁もあり、コーヒーショップの店主、イラスト作家として活動しながら約8年。こうして振り返ってみると、糸島への移住を後押ししたのは、妻との出会いといえるかもしれません。

中村 真紀(なかむら・まき)氏
中村 真紀(なかむら・まき)氏

    中村 私は糸島在住の友人がSNSで糸島の魅力を発信しているのを見て、糸島へ足を運ぶようになりました。企業経営に携わるなかで、生活拠点は東京でしたが、2016年からコロナ禍前までは、ほぼ毎月糸島を訪れるほどで、気付けばすっかり糸島にハマっていました。2拠点居住のワークスタイルが注目されるなかで、移住までは正直考えていなかったのですが、コロナ禍に突入し、移動の制限が敷かれたことで社会情勢が一変。私のなかで、糸島で過ごす時間がなくなることに耐えられないとの思いが強くなり、まだ何をするのか決まっていない状態で、衝動的に糸島への移住を決めました。海辺の見晴らしの良い場所に新居がすぐに見つかったことを含め、糸島への移住は運命的な出来事だったと思います。

 後原 私は、糸島に移住したいという強い思いがあったわけではないんです。フリーランスとして独立して今年18年目を迎えますが、この間、会社を設立し、自治体や商工会と連携して志賀島の活性化に取り組んだりと、さまざまな経験をしました。なかでも子どもを授かったことは大きく、そのタイミングで子どもと、同居している猫がひなたぼっこを楽しめるように、陽の光を取り入れやすいガラス張りで天井高の高い家を探し始めました。そして見つけた条件に合う家というのが、今住んでいる糸島の家だったんです。最初は仕事のことも考え、糸島へ移住するか悩みましたが、妻と相談するなかで決断。この5年間で糸島でも友人が増え、今では糸島での暮らしが大好きです。

 ──実際に住んでみて、糸島の良さはどこにあると感じられますか?

後原 宏行(せどはら・ひろゆき)氏
後原 宏行(せどはら・ひろゆき)氏

    後原 いろいろありますが、私が一番気に入っているのは糸島の“人”です。豊かな自然環境に魅了されて移住される人も多いなか、地元の皆さんも対応に慣れていらっしゃるのか、移住者に対して非常にオープンな人が多い印象を受けます。

 中村 私も人ですね。景色と食べ物に惹かれて糸島に移住しましたが、実際に住んでみて感じるのは、人の良さです。糸島には個性を発揮し、自分らしく生きているキャラクターが濃い、面白い人がたくさんいます。糸島に移住してきてから3年経ちますが、まだ会ったことのない糸島の有名人も多く、興味が尽きません。

 浦川 もともと糸島に住んでいた人たちが、移住者に対して寛容なのが良いですよね。横のつながりや上下関係に縛られ過ぎるということがないので、「(新しく来た人は)どげんな人かいなね?」といった好奇心で、気軽に話かけてきてくれる。仲良くなると「これあげるよ」と、おすそわけをくれたりして。こうした他者に対する懐の深さは、糸島の地域特性といえるのかもしれません。

 中村 古くから大陸との玄関口として異文化交流が盛んで、唐津街道の宿場町としても賑わった、旅の途中にある場所、という立地特性によるところもあるのかもしれないですね。糸島のことが気に入った渡来人や旅人がそのまま居つくといった流れが、昔からあったのかもしれません。

 浦川 たしかに歴史的背景もありそうですね。あと、糸島では、福吉や前原(まえばる)、美咲が丘といった、移住者の受け皿となる住宅地整備が長い年月のなかで脈々と続いてきたようですし、不定期にせよ、まとまった数の移住者を受け入れてきたことが、糸島の他者への寛容さにつながっているのかもしれませんね。

 後原 たとえば、よさこい祭りの期間中、舞台となる高知には数百万人が訪れると言いますが、一度に大量の人を受け入れる地域というのは、外部への耐性が備わるものなのかもしれませんね。

(つづく)

【代 源太朗】


<プロフィール>
中村 真紀
(なかむら・まき)氏
学卒後、(株)西友に入社。以降、国内外の企業に所属し、流通業界で経験を積む。2020年に糸島市に移住し独立。(株)まんまを設立し、これまでの経験を生かしコンサルティングやコーチングなどを行う。21年よりサツドラホールディングス(株)社外取締役。

後原 宏行(せどはら・ひろゆき)氏
ウェブ企画・制作などを手がけるカラクリワークス(株)代表取締役。2016年に糸島市に移住。いとしまちカンパニー(同)では、「オープンコミュニティスペースみんなの」などの企画・運営を通じて、糸島の活性化に取り組んでいる。

浦川 洸一郎(うらかわ・こういちろう)氏
コーヒー焙煎所兼ショップ「SAZANAMi(サザナミ)」の店主を務めるほか、Studio Kura(スタジオクラ)絵画教室糸島校でイラストの先生としても活動。自身も、個展の開催やオリジナルグッズの販売を行うなど、作家活動を続けている。


【今回の対談場所】
糸島の顔がみえる本屋さん~通称「糸かお」

所在地 :福岡県糸島市前原中央3-2-14
     (前原商店街内)
営業時間:午前11時~午後5時
定休日 :不定休

(後)

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