2024年05月05日( 日 )

いつまで上がる?【福岡】23年地価公示(4)

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ららぽーと福岡開業

一躍人気の住宅地へ

 そして、何より顕著に地価を伸ばしてきたのが、「ららぽーと福岡」の周辺だ。前年に続き、住宅地における上昇率上位で目立った。住宅地1位となったのは、「諸岡1-24-10」で、前年は上昇率3位だった地上5階建のファミリー向け賃貸マンションだ。周辺には戸建住宅やマンション、店舗などが立地する郊外型の街並みが広がっており、まだまだ開発余地はありそうだ。ららぽーと福岡には徒歩13分ほどで、商業施設「博多ミスト」にも近い。諸岡3丁目では、(株)LANDICが分譲マンション「ASSOCIA 博多 諸岡 TERRACE(100戸)」の開発を進めている。

 前年上昇率(住宅地)4位だった「那珂1-8-25」もわずかに10%を割ったが、それでも大きく上昇(9.9%)を継続。博多区では、南八幡町2丁目(10.7%)、三筑1丁目(14.4%)、竹丘町(14.0%)といった周辺エリアがもれなく2ケタ増となっている。ららぽーと福岡の周辺は、元の青果市場に関連する事業所などが多く、移転により開発余地が生まれたことで住宅開発が増加。都心に近いエリアで地価が高騰するなかで、一躍人気の住宅地となった。

 さらに、南区でも井尻2丁目(13.1%)、塩原1丁目(11.4%)、大橋2丁目(11.3%)といった近接エリアが2ケタ増となった。西鉄大橋駅では音楽・演劇練習場「ゆめあーる大橋」跡地の事業者公募が行われ、(株)えんホールディングスが優先交渉権者に決定。「OHASHI HILL」と名付けられた地上6階建の複合施設開発が計画されており、施設開業は25年3月を予定している。大橋はららぽーと福岡最寄り駅の1つだが、福岡の南の副都心としての地位を確立しており、住宅需要が高いまちだ。分譲マンションでは、LANDICと(株)日本エスコンの共同プロジェクト「レジアス大橋(140戸)」、西武ハウス(株)の「モントーレ大橋アヴァンティ(20戸)」などが開発中だ。

高級住宅地も急伸

 福岡市内で今年ないし前年から大幅に上昇したのが、「今泉2-1-40」「福浜1-14-8」「高宮2-10-25」「井尻2-2-29」「若久6-53-3」「曙1-10-7」「原5-20-1」「野芥2-1-38」だ。

 「福浜1-14-8」は10.3%と大きく上昇。百道浜に近い立地で近隣には大規模団地が建てられているエリアだ。これまで開発も目立たなかったが、現在は来年竣工予定で分譲マンションの開発も行われている。井尻についてはすでに述べた通りららぽーと福岡の影響が強いが、多くが成熟した住宅地として知られているエリアにあり、ここからも住宅需要の強さがうかがえる。

 2.8%(21年)、7.7%(22年)、14.4%(23年)と大きく上昇したのが「薬院4-17-20」だった。七隈線薬院大通駅から徒歩3分の距離にあることから、七隈線延伸効果もあるだろう。ただ、大濠エリアに次ぐ福岡の高級住宅地として知られる「浄水エリア」に属しており、周辺の地価が上昇するなかで「ここなら間違いない」と投資需要も織り込んだ価格のようだ。なお、九電記念体育館の解体で生まれた広大な敷地では、高級マンション・グランドメゾン浄水ガーデンシティが鎮座しており、たっぷりととられた外構はエリアの高級感をさらに盛り上げている。

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近年急伸している地点 山王1丁目84番
近年急伸している地点 山王1丁目84番

    県内のみならず、全国的にも福岡市が地価上昇の牽引役となっているのは間違いない。「天神ビッグバン」「博多コネクティッド」による再開発計画の話題には事欠かないし、地下鉄七隈線の延伸で博多エリアはさらに地価が高騰してもおかしくない。今回発表された公示地価よりも高い金額で売買されるケースがほとんどだろう。

 しかし、天神ビッグバンなどで建替えられたオフィスビルでも空室が生じていることには注意が必要だ。たしかに一部資料として公開されているオフィス賃料は上昇傾向にあるが、それはあくまで募集賃料であり、成約価格とは異なる。事実上の値下げが行われているという情報もしばしば聞かれるほか、注目される再開発ビル以外に新たに誕生したオフィスビルなどでは、竣工後しばらく経過しても空きが目立つものも少なくない。それが長期的には埋まっていくのかもしれないが、中小ビルオーナーはその期間には耐えられないはずだ。

 全国的には「上がる土地」「下がる土地」「横ばいの土地」の三極化が進んでいる。それは、福岡県内でも同様だ。全地点で上昇している福岡市が極端と見ることもできる。しかし、いずれそう遠くない時期に三極化する時期が訪れることは間違いないと見られ、どの地点が上がり、そして下がるのか、見極めていく必要がある。

(了)

【永上 隼人】

(3)
不動産鑑定士が見る
「2023年公示地価」

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