2024年05月10日( 金 )

「非住宅の木造化」プレカット材でサポート(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

ポラテック九州(株)
取締役部長 宮野 宏明 氏
取締役工場長 秋野  龍 氏

 「鉄やコンクリートで建てられていた建築物を木造に」という機運が高まっている。なかでも、店舗やビル、各種施設などの低層の非住宅建築物は、住まいづくりのノウハウを生かしやすく、木造化がとくに期待される分野だ。住宅建築に用いられる「プレカット材」で日本一の生産量を誇るポラスグループにおいて、九州エリアで事業を展開するポラテック九州(株)の担当者に、現状と課題、今後の展開などについて話を聞いた。

進出の契機は16年の熊本地震

ポラテック九州(株) 取締役部長 宮野 宏明 氏
ポラテック九州(株)
取締役部長 宮野 宏明 氏

    ──九州進出から約7年が経過しました

 宮野 当社グループで2016年4月発生の熊本地震の被害状況を確認したところ、南面に開口があり重い屋根を持つ住宅に、倒壊などの被害が多かったことがわかりました。そこで、より耐震性の高い構造材の供給を行うべきと考え、当初予定していた九州への進出時期を早め、同年7月に福岡営業所を立ち上げ、プレカット材の営業をスタートしました。17年7月に佐賀工場の稼働を開始。さらに隣接地を取得し、第二工場を新設するなど供給体制を強化しています。現在では福岡、佐賀、熊本県を中心としたエリアにおいて、地域の事業者を含めたハウスビルダーに向けてプレカット材の供給を行っています。

 当社では、主に集成材をプレカット加工し、ハウスビルダーへ供給していますが、九州進出した当時は、本州などに比べて日本農林規格に適合した高品質な「JAS材」が普及していませんでした。JAS材は用途別の規格化、等級別の品質基準統一、含水率表示の明確化、強度性能表示の明確化などといった特徴があります。そのため、耐震性に優れた木材であり、さらに集成材(乾燥した板を同一繊維方向に接着剤で貼り合わせた木材。割れや変形が少ない)であれば、建物の構造体強度もより高まります。

ポラテック九州(株) 取締役工場長 秋野 龍 氏
ポラテック九州(株)
取締役工場長 秋野 龍 氏

    ──なぜ普及していなかったのでしょうか

 秋野 あくまで推測ですが、1つは価格で、JAS集成材は無垢材(丸太から切り出してつくった木材)に比べて高額なので、使いづらかったのでしょう。また、九州はもともと、スギ材などの産地であったことも要因だと思われます。

 なお、集成材は輸入しているイメージがありますが、現在では国産のスギ材などによるものも増えています。熊本や宮崎、大分産も多いですね。当社グループが調達する木材は輸入材7割、国産材3割といった状況ですが、佐賀工場では国産材6割、輸入材4割と逆転しています。

3_ポラテック九州・佐賀工場の外観
ポラテック九州・佐賀工場の外観

安定した供給と品質、価格がカギ

 ──福岡県や佐賀県など、近場から多くの木材を調達することはできないのですか。

 宮野 それにはいくつかの課題がありそうです。まず、木材を乾燥させるための設備のキャパシティが小さいこと。JAS規格に適合する含水率の低い木材を生産できる量は限られており、これらを実現するためには、大規模な設備投資が求められることも大きな課題です。周辺地域で調達できる木材は含水率が高いグリーン材が他地域よりも多いのが実状で、これではクギやボルトが緩みやすくなるため、住宅などの建築物に用いるのには難があるのです。

 秋野 私たちが事業を展開するうえで重視しているのは「安定調達」と「品質」、そして「価格」です。このうち価格については、ウッドショックにより国産材も高騰しました。そのために、私たちも調達に苦労することになりました。

 九州地域内で、しっかりとした木材の供給体制が整い、安定価格が実現すれば、近県を問わず、木材産地の特性に合わせて調達を行っていくつもりです。

 ──ウッドショックは、住宅業界を中心に広く混乱を巻き起こしました。

 宮野 価格変動や動向については、木材産地、加工流通業者、ビルダーそれぞれが注目しています。互いに共存できる安定したサプライチェーンの構築が理想で、そうなれば産地の方々の経営はより安定し、全体として好循環が生まれるようになるでしょう。現状では多くの課題がありますが、その改善のために大切になるのは、それぞれのコミュニケーションを密にすることです。最近では、産地付近の製材所から『どのような品質レベルの木材を求めているのですか?』といったようなヒヤリングを受けるケースも増えつつあります。

 秋野 木材価格は、国内外の経済状況に大きく左右されます。そのため私たちは安定した価格での調達に苦労するわけですが、一方ではカーボンニュートラルや地域活性化、森林環境の保全なども重要なことと捉えています。ですので、私たちは地域材の活用も含めた「国産化」もキーワードの1つとして、あるべき方向性を探っています。人件費や輸送費、エネルギー価格の高騰などが今後も予想されるなかで、国産材・地域材を活用するメリットはより大きくなるものとみられます。

佐賀工場(レインボーフィールド)の俯瞰外観

【ポラテック九州佐賀工場(レインボーフィールド)】
 所在地は本社と同じ。総面積7万4,178m2の敷地に、第一工場(稼働開始2017年、建物面積1万4,137m2)と第二工場(同21年、同1万4,181m2)の2つの建屋を有する。加工ロボットなど最新設備を導入している。合計の月間生産能力は、構造材加工1万7,500坪、羽柄材加工1万2,000坪、合板加工8,700坪。

(つづく)

【田中 直輝】


<COMPANY INFORMATION>
ポラテック九州(株)

代 表:中内  晃次郎
所在地:佐賀県唐津市佐志浜町4525-4
設 立:2023年1月
資本金:3,000万円
※全国6カ所にプレカット工場をもち、プレカット材生産量日本一のポラスグループ ポラテック(株)(埼玉県越谷市)の子会社。今年3月21日にポラテック西日本(株)(滋賀県甲賀市)の九州地域のプレカット事業を承継し、事業を開始した。

(後)

月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?

福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。

記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。

企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。

ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)

関連記事