2024年05月15日( 水 )

地域に根ざす不動産業として、七隈エリアの将来を考える

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(株)アバンセ
代表取締役会長 手嶋 文博 氏

(株)アバンセ 代表取締役会長 手嶋文博氏

 七隈地域の花みずき通り商店会の元会長で、不動産の賃貸・売買の仲介やアパート・マンションなどの管理などを営む(株)アバンセの代表取締役会長・手嶋文博氏に、城南警察署の新設や地下鉄七隈線延伸開業で期待される七隈地域のまちづくりと、地元七隈地域とともに歩んだ事業展開について語ってもらった。

(聞き手:(株)データ・マックス 代表取締役会長  児玉  直)

用地交換で実現した城南警察署

 ──地元で不動産業を営まれる手嶋会長に、七隈エリアの状況についておうかがいしたいと思います。

 手嶋 昨年4月に福岡県警の城南警察署が新設されました。地元選出の武藤英治県議会議員に長年にわたって、「福岡市では城南区だけ警察署がないので、ぜひ設置してほしい」との要望を行い、2017年に新設のための調査予算が計上されたことから始まりました。

 そこで候補地となったのが、福岡大学が所有し、駐車場として使われていた用地でした。その代替地として、福岡市が所有する烏帽子池を大学側に譲渡することになりました。福岡市のため池は、財政局財産有効活用部が管理しています。私は今期より、七隈財産区住民代表を務めさせていただいています。点在するため池は、地域の皆さんの財産であり、その活用に際しては不公平な扱いにならないよう、当事者として取り組む責任があります。

 現在、七隈エリアで開発が検討されているのは、福岡大学病院南側にある五箇村池です。城南警察署と同様に、五箇村池を有効活用し、半分を埋め立てして福大病院に売却する話があり、残り半分を親水公園にして水と親しめるような公園にする計画が進んでいます。また、西南杜の湖畔公園内の若宮池も私たちの水利組合に権利があり、年2回、除草作業を行っています。

 ──七隈周辺は、ため池を宅地などに活用してきた歴史があるのですね。他に地域との関係でどのようなことがありましたか。

 手嶋 私はかつて、七隈小学校のPTA会長を務めさせていただいておりました。小学校には、留守家庭子ども会(現・放課後児童クラブ)があります。放課後、保護者や同居する方が就労などで不在となる家庭の子どもたちを対象に、遊びと生活の場を提供する場です。昼寝の時間があるのですが、校内に建てたプレハブを利用していたためエアコンがなく、子どもたちの熱中症の心配がありました。七隈財産区の方にご相談して、大きなエアコンを2台付けていただいたこともあります。そういう意味で七隈は、大変恵まれています。

アバンセ    ──七隈線延伸による影響は、いかがでしょうか。

 手嶋 地下鉄七隈線は、博多駅前の陥没事故で全国区になりました。たまたま私の姉が千葉に住んでいますが、「陥没事故は七隈なの?」と心配されたこともあります。私が子どものころは、将来モノレールが開業するという話があったのを覚えています。今回の開業延伸によって、七隈をはじめとした市西南部の郊外と天神・博多が1本で結ばれたことで、これから大きく変わると思います。

 ただ、課題もあります。七隈は容積率・建ぺい率が昔の基準のままです。以前、商店会長をしていた際に、福岡市からこれを引き上げたいという相談を受けました。不動産業者の立場としては歓迎すべきことです。ただ、その話を地域の自治会の方などに伝えたところ、固定資産税評価額が上がることなどから、反対意見が多かったので、市にはその旨を伝えました。容積率・建ぺい率が大きくなれば、建物を大きくすることが可能になります。市としては地下鉄の乗降客を増やしたかったようです。

企業は地域とともに発展する

 ──七隈線は、延伸前であれば午後8時以降はゆっくり座れました。延伸後はなかなか座れないことが多いですね。

 手嶋 思った以上に博多駅までの延伸効果は大きいですね。以前は、博多駅周辺の会合に出るため、渡辺通駅からタクシーに乗っていきましたが、今は地下鉄でそのまま行っています。福岡空港へのアクセスも便利になりました。福岡市は都市部と風光明媚な地域とが近く、ポテンシャルの高い都市です。東南アジアをはじめ周辺の国々からインバウンド需要も望めます。

 05年の七隈線開業後、駅に直結する商業施設「木の葉モール橋本」がオープンするなど沿線一帯では区画整理事業が進み、別府駅周辺では高級マンションの建設も相次いでいます。その影響は、天神から六本松・別府エリアに集中し、茶山~橋本間はあまり発展が進んでいません。懸案となっている道路整備を進めるにしても、拡幅するにあたっての土地買収が大変だろうと思います。

 不動産業は、どこそこの地価が上がったというような目先を追うばかりではなく、開発計画などの情報をいかに素早くつかむかで大きく左右されます。

 しかし、大事なことは、自分の会社だけが発展すればよいという考えではないことです。地元商店会長やPTA会長を務めるなど地域活動をしてまいりましたが、生まれ育った七隈が発展すれば、自社も発展していくと思います。これからも一生懸命、地域の皆さんの信頼を得られるように、尽くしてまいりたいと思います。

【文・構成:近藤 将勝】


<プロフィール>
手嶋 文博(てしま・ふみひろ)

1956年6月、福岡市生まれ。79年、福岡大学法学部卒、93年2月、(有)アバンセ(現・(株)アバンセ)を設立。代表に就任した。花みずき通り商店会(旧・七隈本町商店会)会長なども歴任。現在、(株)アバンセの代表取締役会長を務める。

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