2024年05月13日( 月 )

スポーツと産業創出で描く、育成都市・鳥栖の未来(前)

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鳥栖市長 向門 慶人 氏

鳥栖市長 向門 慶人 氏

 2月19日投開票の鳥栖市長選において、新人で元佐賀県議会議員・向門慶人氏が初当選をはたした。向門新市長は、これまで衆議院議員・山下徳夫氏の秘書を務めた後、鳥栖市議会議員2期および佐賀県議会議員4期務めてきた。その経験を生かして、新たな鳥栖市のまちづくりに取り組む向門新市長に、話を聞いた。

交通の要衝を強みに、開発・誘致を進める

 ──まずは初当選おめでとうございます。市長としての意気込みをお聞かせください。

 向門 先の鳥栖市長選挙において、市民の皆さまのご支援およびご信任を賜り、新たに市政を担うこととなりました。選挙期間中には「鳥栖市を頼む」とのお声を多くの市民の方々からいただきました。新しい鳥栖、魅力ある鳥栖をつくっていかなければならないと強く感じております。

 ──鳥栖市の強みはどこにあるとお考えですか。

 向門 佐賀県東部に位置する鳥栖市は、南は久留米市、東は小郡市、北は筑紫野市や那珂川市と接しており、福岡県とも密接な位置関係にあるまちです。市内には九州・長崎・大分自動車道を結ぶ鳥栖ジャンクションがあり、市内で交差するように高速道路が走っています。さらに、九州新幹線新鳥栖駅とJRの駅が6つありますが、JR鳥栖駅は鹿児島本線と長崎本線が分岐する唯一の駅です。

 道路においても鉄道においても九州の交通の要衝であり、そうした優位性を背景に、多くの企業・工場なども進出しています。ただし一方で、産業用地の不足という課題もあります。これについては、都市計画などを見直しながら、交通の要衝としてのポテンシャルを生かせるまちづくりを、まず進めていかなければなりません。

 2024年をメドに、鳥栖ジャンクションと久留米インターチェンジの間に「小郡鳥栖南スマートインターチェンジ」が開通予定です。スマートインターの北側にはGLP鳥栖(流通業務団地)が存在するものの、すでに完売しているため、このままではスマートインターの設置にともなう新たな需要は取り込めません。そのため、スマートインター周辺に次なる産業団地をつくり、新たな企業を誘致していくことが必要だと考えています。

 ──アサヒビールの新工場も進出予定です。

 向門 アサヒビールからは、品質を担保したビール類や飲料などの生産能力を十分に確保できることなどから、鳥栖市を候補地に選んでいただいたと聞いています。新工場の建設場所は、十分な水量を確保できる立地であるほか、敷地面積は博多工場の2倍以上になり、その立地特性を生かして九州エリア内の需給率向上と配送距離の短縮など物流面の効率化も期待できるということです。

 ほかの企業からも鳥栖市に進出したいというお声は多くいただきますが、先ほど述べたように、用地が用意できないのが現状です。ですので、鳥栖市への進出を希望される企業の受け皿として、新たな産業団地の開発にも取り組んでいかなければならないと考えています。

左から山下雄平参議院議員、原口一博衆議院議員、
向門慶人鳥栖市長、山口祥義佐賀県知事、
岩田和親衆議院議員、松隈清之鳥栖市議会議長

駅周辺の渋滞緩和策、鉄道の高架化も視野に

 ──市が抱える課題については、いかがですか。

 向門 4期務めさせていただいた佐賀県議会議員時代には、JR鳥栖駅周辺整備や前述の都市計画の見直しなど「鳥栖が何も変わらない現実」に直面しました。これらの課題について「このままでいいのか」との思いが強かったことが、私がこのたび市長に立候補した理由の1つです。

 前市長時代の2018年11月28日、鳥栖市はJR鳥栖駅周辺の整備事業について基本設計の中間報告を発表しました。鉄道で分断されている東西市街地の行き来を良くし、利便性の向上と中心市街地の活性化を図ろうとするもので、新駅舎は線路を跨ぐ橋上方式を採用し、駅の東西それぞれからの利便性の向上に寄与するものでした。

ガラス張りの会議室
ガラス張りの会議室

 しかし、発表から1週間も経たない12月3日に、この基本設計は白紙に戻されました。理由は、約124億円におよぶ事業費でした。新駅舎の橋上化に加えて、現在東西を結んでいる「虹の橋」を新たに架け替え、拡幅するとともに屋根やエスカレーターを設置するほか、東西の駅前広場を整備するなど、事業費の内訳は橋上駅・自由通路が約80億円、東西の駅前広場および道路などが約40億円、公園・駐車場が約4億円というものでした。

 現在、中心市街地である駅周辺は、鉄道によって東西に分断されていますが、東西の連携や駅周辺のまちづくりを考えた場合、私は鉄道の高架化が一番良いのではないかと思っています。鳥栖商工会議所からも同様の要望があります。しかし、そのためには莫大な資金が必要となりますし、JRとの協議も必要です。将来のためにどうやって取り組んでいくか、みんなで決めていかなければなりません。5年先、10年先ではなく、もう少し長い目で見ながら、議論や整備をしていく必要があると思います。

(つづく)

【内山 義之】


<プロフィール>
向門 慶人
(むかいかど・よしひと)
1971年1月、鳥栖市出身。福岡大学商学部を卒業後、95年に衆議院議員・山下徳夫氏の秘書を経て、2001年に鳥栖市議会議員に当選。市議会議員を2期務め、07年から佐賀県議会議員を4期務める。21年7月には自民党県連幹事長に就く。23年3月に鳥栖市長に就任。趣味は野球、ジョギング、スポーツ観戦。

(後)

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