2024年05月13日( 月 )

どう変わる北九州?再開プロジェクトも複数(前)

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2度の大火に見舞われた、北九州の台所・旦過市場

 2022年4月28日、北九州市八幡東区のスペースワールド跡地で「THE OUTLETS KITAKYUSHU(ジ アウトレット北九州)」がオープンした。ジ アウトレット北九州は、17年末に閉園したスペースワールドの跡地約27万m2の敷地をイオンモール(株)が再開発したもので、S造・地上4階建、延床面積約5万7,000m2の建物を建てるほか、約4,500台分の駐車場(敷地外含む)なども整備。約170店舗が出店するほか、21年末に閉館した北九州市立児童文化科学館が「スペースLABO」として移転・リニューアルオープンしている。南側に隣接する「イオンモール八幡東」とはブリッジで連結されて一体的な運営が行われており、八幡東田地区内においてスペースワールドに替わる新たなランドマークとして認知されつつある。

 昨年のジ アウトレット北九州の開業は、近年の北九州市内の再開発の事例のなかでは最大級といっていいプロジェクトだった。だが、規模こそおよばないものの、市内では依然として複数の再開発プロジェクトの進行が散見。今回、その代表的な一部を取り上げてみたい。

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北九州の台所・旦過市場
北九州の台所・旦過市場

    古くから“北九州の台所”として地元から愛され続けてきた「旦過市場」は22年、2度の大火に見舞われた。

大規模な火災に見舞われた旦過市場(2022年4月20日撮影)
大規模な火災に見舞われた旦過市場
(2022年4月20日撮影)

    1度目は22年4月19日未明、新旦過横丁付近から出火し、通報から約65時間後に鎮火するまでに42軒・1,924m2が焼損した。2度目はそれから約4カ月後の8月10日夜、今度も新旦過横丁付近の飲食店から出火し、約22時間後に鎮火するまでに45店舗・3,324m2が焼損。2度にわたる大火災だったが、いずれも人的被害がなかったことだけは、不幸中の幸いだった。

 こうして甚大な被害を受けた旦過市場だが、市場横を流れる神嶽川からの浸水被害の危険性や密集した木造建築物など、もともと防災・防火面での課題を長年抱えてきていた。そのため、旦過地区の安全性を高めるとともに、魅力ある市場として継続させることを目的に、神嶽川の改修と一体となった「旦過地区再整備事業」が進んでいた。再整備事業にあたっては、19年10月に市と旦過市場4団体(旦過地区土地建物委員会、北九州市小倉区旦過商業(協)、旦過市場商店街、小倉中央市場(協))との間でまちづくり協力協定が締結された後、20年3月には旦過地区土地区画整理事業の都市計画が決定。21年2月には国の事業認可も受けて旦過地区土地区画整理事業の事業計画も決定し、再整備に向けての事業が進行していた。

 旦過地区再整備事業では、北九州市が施行者となって施行面積約0.6haを整備していく計画で、エリア内をA地区、BC地区、D地区、E地区に区分けして整備。BCおよびD・E地区には2階建ての店舗建物を建てるほか、A地区には「立体換地建築物」として1・2階が商業施設で3・4階が駐車場となるS造・地上4階建のビルを建てる。また、各地区の間の通路は「新市場通り」としてアーケードを設置。また、これらの整備と並行して、橋梁3橋の架け替えや老朽護岸の整備、護岸のかさ上げや川底の掘り下げといった神嶽川の河川改修も行っていく計画。22年度中にA地区の既存建物を解体し、23年度に商業施設を建設。その後、BC地区の店舗を解体して商業施設に移転してもらう計画で、全体の事業期間は20年度から27年度までを予定していた。

 だが、前述したように2度の大火災を受けたことで、状況が一変。22年度中に予定していた解体作業には着手できておらず、商業施設の建設時期も含めて、市は全体的なスケジュールの見直しを余儀なくされるとみられる。今年3月末には、火災跡地に仮設店舗「旦過青空市場」が完成。4月以降に数店舗が入居して、営業を行っている。今後、旦過地区再整備事業がいつ再始動するかは未定だが、引き続きその行方が注目される。

仮設店舗「旦過青空市場」
仮設店舗「旦過青空市場」

第1弾PJ着工&容積率緩和、コクラ・クロサキリビテーション

 北九州市の都心部である小倉地区と黒崎地区では、「コクラ・クロサキ リビテーション」と銘打った都心部の再開発プロジェクトが始動している。

 同プロジェクトは、まちづくり構想の実現に向けて、北九州の都心である小倉地区と、副都心である黒崎地区を対象に、都市機能の更新とさらなる魅力向上を目指すもの。プロジェクト名に付けられた「リビテーション」とは、「リビルド(Rebuild/建替え)」と「インビテーション(Invitation/引き込む)」を掛け合わせた市独自の名称。老朽化ビルや低未利用地などでの民間開発の誘導や、安全・安心で魅力ある市街地環境の形成、若者に好まれるIT企業の誘致、省エネだけでなく快適性や企業価値の向上に寄与する「グリーンスマートビル」の普及、ゼロカーボンシティの実現などが挙げられており、北九州市が進めるSDGs未来都市の実現につながるまちづくりを目指す取り組みの1つになる。

 民間開発の誘導を行うために、「支援策の充実」「各種規制の緩和」という2つの施策を実施。支援策として、新たな補助制度「北九州市次世代スマートビル建設促進補助金」を新設して建設費の20%(最大10億円)を補助するほか、一定の要件を満たす建築物の整備に対しては共同施設整備費や解体工事費の最大3分の2を補助。また、駐車場設置要件の緩和や屋外広告物の面積基準の見直し、総合設計制度の拡充による容積率の特例緩和などの各種規制緩和を行う。さらに追加施策として、解体工事着工から新築工事竣工までにかかる固定資産税相当額の約半分を補助するほか、駐車場付置義務条例の改正などを検討している。対象地区は小倉駅および黒崎駅それぞれの周辺概ね半径1kmのエリアで、27年3月末までに着工するビルが対象となる。

 6月15日には、両駅の半径1km内の幹線道路沿いで、容積率を現行の400~600%から最大800%まで緩和する方針が明らかになった。今後、都市計画原案を作成したうえで、来年4月の事業開始を目指すとしている。

 そのコクラ・クロサキ リビテーションの第1弾として、21年12月に「(仮称)ミクニ魚町ビル」の建設計画が発表。同ビルは、魚町3丁目の旧・西日本シティ銀行北九州営業部が入っていたビルの解体・建替えを北九州市の不動産会社・(株)ミクニが総事業費約60億円を投じて行うもので、S造・地上13階建のオフィスビルを建設する計画。22年10月にはビルの正式名称を「BIZIA(ビジア)小倉」と改めて着工。施工は清水建設(株)が担当し、24年3月竣工および翌4月開業を予定している。

 なお同ビルには、日本アイ・ビーエム(株)が北九州市と締結した連携協定に基づいて開設した「IBM地域DXセンター北九州」が入居することが決定している。

(つづく)

【坂田 憲治】

(中)

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