2024年05月12日( 日 )

どう変わる北九州?再開プロジェクトも複数(中)

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小倉北区城内では、県小倉総合庁舎がPPP

コクラ・クロサキリビテーション第1弾プロジェクトとなる「BIZIA小倉」
コクラ・クロサキリビテーション
第1弾プロジェクトとなる「BIZIA小倉」

    コクラ・クロサキ リビテーションの対象エリアからは外れているが、小倉城や北九州市役所、勝山公園などが位置する小倉北区城内では、福岡県小倉総合庁舎の敷地において再開発が進もうとしている。

 福岡県は5月24日、小倉総合庁舎等の敷地においてPPP(公民連携)の一手法である「定期借地方式による土地貸付」による有効活用を図ることとし、公募型プロポーザル方式による民間事業者の公募を開始した。

 対象となる福岡県小倉総合庁舎の敷地は、市街化区域に位置する面積6,159.27m2の土地で、用途地域は商業地域、指定建ぺい率は80%、指定容積率は400%となっている。現在は既存建物として、福岡県小倉総合庁舎(1978年9月竣工、RC造・地上4階・地下1階建)とその別棟(平屋建)のほか、城内待機宿舎(71年3月竣工、RC造・地上4階建)が建っている。

 今回の公募で、県は小倉総合庁舎等の敷地を一般定期借地権設定契約により事業者に長期賃貸する一方で、事業者は借地上に新施設を建設のうえ、管理運営を行う。また、新施設の建設中、県は近隣の北九州市所有土地を賃借して仮庁舎(北九州東県税事務所、県警車両基地)および平置駐車場を整備したうえで、北九州東県税事務所および県警車両基地などを約3年間仮移転。そして新施設の竣工後に、北九州東県税事務所・北九州県民情報コーナー(県)および県警事務所・車両基地(県警)は、事業者が借地上に建設する新施設の一部(駐車場含む)を賃借して入居するものとしている。借地料は年間3,588万3,000円以上、借地期間は50~70年の範囲内でいずれも応募者が提案。また、本店が県内に所在する企業が参加する場合は審査において評価されるほか、県産資材の使用や環境性能への配慮など福岡県のPRや県政策への協力についての提案を求めるとしている。

 今後、7月28日~8月10日の期間での応募申込書の受付や、10月13日~10月20日の提案書類の受付を経て、10月下旬から24年1月上旬ごろまで提案内容の審査が行われ、24年1月下旬ごろに優先交渉権者が決定する見込み。その後、24年5月ごろに県と事業予定者との間で、同事業に関する基本協定を締結。25年1月ごろから県が近隣の市所有地に仮庁舎を整備して完成後に仮移転を行ったうえで、事業者が福岡県小倉総合庁舎敷地の既存建物等を解体・撤去。その後、同地において28年9月ごろまでに新施設を完成させていく流れとなっている。

 なお、仮庁舎が建てられる予定の市所有地は、敷地面積が9,635.07m2あり、その約半分にあたる約4,600m2を県へ貸付するほか、残り半面(約5,000m2)をイベント広場および憩いと交流のスペースとして整備する方針。また、県への貸付が終了する29年度以降には、「大規模イベント広場」「市民が憩い・交流するスペース」および「観光バスなど駐車場」として再度整備を行う、2段階整備の方針となっている。

福岡県小倉総合庁舎
福岡県小倉総合庁舎

西鉄Gが皿倉山の麓で、商・住の大規模複合開発

 八幡東区では、西鉄グループの(株)スピナ(北九州市八幡東区)が主体となって、商業と住宅との複合開発を計画している。

 場所は、JR八幡駅から南に約1kmに位置する平野地区で、アクセスに優れた幹線道路・市道山手通りに面した約3.5haのエリア。周辺には閑静な住宅街が広がるほか、九州国際大学などの教育施設、響ホールや八幡東生涯学習センターを擁する「北九州市立国際村交流センター」などの公共施設が近隣にあり、地域の人々や学生らが日常的に足を運ぶ立地となっている。なお、スピナの本社もすぐ近隣にある。

 商業エリア約1.9haは、日本新三大夜景として知られる皿倉山の麓に位置するロケーションから「(仮称)皿倉テラス」として、飲食店のほか、ファッション関連のテナントの誘致を予定している。コンセプトには「日々の生活の中で“楽しさ”“美味しさ”“くつろぎ”に出逢える場所」を掲げ、皿倉山の景観をバックにした開放的でくつろげる空間づくりを目指し、随所に緑を配置するほか、一部の屋外照明に太陽光発電設備を活用するなど、環境にも配慮していくという。

 住宅エリア約1.6haでは、全72区画の開発を予定。計画の詳細については、これから進めていくという。また、住宅エリアの建築・販売については、西日本鉄道(株)住宅事業本部が担当する。今回の平野地区での開発は、スピナとして初の商業と住宅の複合開発となっており、定住人口および交流人口の増加によるエリアにおける賑わい創出への寄与が期待されている。

商業エリア「(仮称)皿倉テラス」
商業エリア「(仮称)皿倉テラス」

洋上風力発電&EV車工場が着工、次世代産業が集積する若松区

 再開発ではないものの、若松区では今年になって、2つの新たな開発プロジェクトが着工した。そのいずれも、次世代産業に関連する開発として、注目を受けている。

 まず3月13日には、「北九州響灘洋上ウインドファーム」の建設工事が開始。4月25日には、武内和久・北九州市長をはじめとした行政関係者や地元関係者、事業関係者らが出席した同工事の起工式も開催された。

 北九州市では響灘地区のポテンシャルを生かし、産業の裾野が広く雇用創出効果が高い風力発電を主なターゲットに据え、あらゆる機能が集積した「風力発電関連産業の総合拠点」の形成などを目指した「グリーンエネルギーポートひびき」事業を11年から推進している。その一環で建設される北九州響灘洋上ウインドファームは、響灘の洋上に発電出力9,600kWの風力発電の風車を25基(最大22万kW)設置するもの。事業主体は、九電みらいエナジー(株)や電源開発(株)など計5社が出資して設立したひびきウインドエナジー(株)(北九州市若松区)で、同社は16年8月に北九州市が実施した「響灘洋上風力発電施設の設置・運営事業者公募」において、17年2月に事業実施予定者として決定していた。その後、17年度から風況観測や海底地質調査などを進めるほか、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援も受けながら、19年度中に風車設置予定エリア全体の調査を終了。風車機種候補には、国内初採用となるVestas Wind Systems A/S社(デンマーク)のV174-9.5MWを選定するほか、風車基礎形式には国内外の港湾構造物や海洋構造物に多数採用され、技術的に安全性・信頼性が確立された杭式ジャケット基礎を採用する予定となっている。風車供給・据付工事はベスタス・ジャパン(株)、風車基礎・海洋工事は五洋・日鉄エンジニアリング特定JV、陸上電気工事は(株)J-POWERハイテック、O&M(運転・保守)拠点港工事は五洋・若築特定JV、CTV(作業員輸送船)運航管理は東京汽船(株)がそれぞれ担当。風力発電施設の運転開始時期は25年度を予定している。

 若松区におけるもう1つの開発は、(株)EVモーターズ・ジャパン(北九州市若松区)による国内初となる商用電気自動車専用の量産組立工場の建設だ。

 体感型EV複合施設「ゼロエミッション e-PARK」と名付けられた同工場は、約5.8haの敷地内に商用EV最終組み立て工場のほか、完成車両テストコースや実証実験/自動運転テストコースなどを備えるもの。また、「EVを広げる・EVを感じる・施設を楽しむ」をテーマとしており、試乗・試運転などのEV体験や工場見学、EV資料館等の設備も備え、EV車両の生産だけではない体感型の工場施設となっている。生産品目は、EVバスやEV物流車、EV特殊車両(移動電源車含む)、リユースバッテリー組立などで、実施工程はOEMパートナーより半完成品およびパーツ類を輸入して、同工場で最終組み立てを行っていくとしている。23年秋に商用EVの最終組み立て工場や検査棟を完成させて稼働を開始するほか、完成車両テストコースなどの建設にも順次着手。23年は数台から生産をスタートし、最終的には年産1,500台を目指していくという。

「ゼロエミッション e-PARK」完成予想パース
「ゼロエミッション e-PARK」完成予想パース

    同工場の起工式は4月28日に開催され、福岡県知事や北九州市長をはじめとした関係者約180名が参加。「県は自動車産業拠点推進構想に電動化を大きな柱として位置付けており、自動車産業の新たなステージへの転換を進めていただけるものと期待しています」(服部誠太郎・福岡県知事)、「新工場建設は、北九州市が目指す『稼げる街』への転換に向けて大きな起爆剤になると期待しています」(武内和久・北九州市長)などの期待のコメントを寄せている。

(つづく)

【坂田 憲治】

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