2024年05月13日( 月 )

どう変わる北九州?再開プロジェクトも複数(後)

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折尾地区総合整備事業、今秋「えきマチ1丁目折尾」が開業

 八幡西区のJR折尾駅周辺では、北九州市による折尾地区総合整備事業が進められている。

 同整備事業は、折尾駅周辺が抱える「鉄道による市街地の分断、踏切による交通渋滞」「道路などの基盤整備の遅れ」「学園都市の玄関口として商業・業務・文化施設などの不足」「古くからの密集市街地の存在」などの問題点を解消するために、鉄道を高架化する「連続立体交差事業」、駅南側の住環境を改善する「土地区画整理事業」、駅周辺の道路を整備する「街路事業」の3つの事業を一体的に実施するもの。全体の事業期間は04年度から28年度までの約24年間で、総事業費は約935億円となっている。

 そのうち連続立体交差事業は、事業期間が04年度から24年度までの約20年間で事業延長約4.5km(JR筑豊本線:約2.4km、JR鹿児島本線:約2.1km)を高架化し、事業費は約501億円(うちJR九州負担金額約47億円)。街路事業は、事業期間が04年度から28年度までの約24年間で、幹線道路や補助幹線道路、歩行者専用道路など約3.7kmや駅前広場約1.0haを整備し、事業費は約188億円。土地区画整理事業は、事業期間が06年度から28年度までの約22年間(清算期間を除く)で、事業区域は約17ha、事業費は約246億円となっている。

 これまでに、折尾地区総合整備事業は全体の約8割が完了しているといい、21年1月に新折尾駅舎が開業したほか、22年3月には連続立体交差事業での全線高架化が完了(鉄道高架化により不用になったレールや枕木などの旧鉄道施設の撤去等の残工事は24年度までに完了予定)。22年5月には折尾まちづくり記念館および八幡図書館折尾分館とで構成される折尾駅高架下複合公共施設(愛称:オリオンテラス)も開業した。さらに、23年4月には折尾駅北側の駅前広場の整備が完了するなど、少しずつ折尾駅周辺の新たな姿がお目見えしつつある。

 23年秋にはJR九州による折尾駅高架下商業施設「えきマチ1丁目折尾」(出店店舗計29店舗を予定)も開業を控えており、折尾駅周辺では今後も「住みやすく、魅力的で、にぎわいのあるまちづくり」に向けて、総合整備事業がさらに進行していく予定だ。

今秋開業予定の折尾駅高架下商業施設「えきマチ1丁目折尾」
今秋開業予定の折尾駅高架下商業施設
「えきマチ1丁目折尾」

市の将来を左右する、2つの交通インフラ整備

 今回取り上げたほかにも、市内各地では規模の大小を問わず複数の再開発プロジェクトが進行している。また、個別の建物や街区の再開発以外にも、今後は交通インフラに関する2つの大規模プロジェクトが進行していく予定だ。

 まず1つ目は、空の玄関口である北九州空港の滑走路延長事業。同空港では、現在の2,500mから3,000mへと滑走路を延長する事業が23年秋にも着工する方針で、27年度中の工事完了と利用開始を目指すという。北九州空港においては6月11日、福岡空港の“門限”―運用時間内の到着が間に合わない日本航空の羽田発福岡行きの便を、初めて代替着陸させたことでも話題となった。北九州空港は今後、3,000m級滑走路と24時間離着陸可能という2つの強みを生かしていくことで、福岡空港を補完するだけではない独自の立ち位置を確立していくことは、十分可能なはずだ。

 もう1つは、現在検討が進められている「下関北九州道路」だ。関門海峡を挟んで九州と本州の結節点となる北九州市と下関市はこれまで、人やモノが行き交う要衝として一体的に発展してきた経緯がある。しかし、両市を結ぶ交通網は現状、関門橋(高速道路)、関門国道トンネル(国道2号)、関門鉄道トンネル(山陽本線)、新関門トンネル(山陽新幹線)という2本の道路と2本の鉄軌道のみで、異常気象や不測の事態の際のリダンダンシーの確保が以前より問題視されていた。下関北九州道路は、そうした現状の既存道路ネットワークの課題を解消するとともに、関門橋・関門トンネルの代替機能を確保し、さらには循環型ネットワークを形成することにより、北九州・下関の両地域の発展に大きく寄与するものだと期待されている。ルートについてはまだ調査・検討の段階だが、有力視されているのは、北九州市小倉北区西港町と下関市彦島を結ぶ最短のルート。北九州都市高速道路の日明ICと旧彦島有料道路をつなぐ約8kmで、海峡部の約2.2kmは橋で結び、整備費は約2,900~3,500億円を見込んでいる。現在、北九州市では福岡県、山口県、下関市とともに「下関北九州道路整備促進期成同盟会」の一員として、民間企業を中心に組織される「下関北九州道路建設促進協議会」やその他の関係団体と協力しながら、下関北九州道路の早期実現を目指して、国に対する要望を行っているところだ。

 これら交通インフラに関する2つの大規模プロジェクトは、その進捗如何によっては、北九州市の将来を大きく左右するだけの力を秘めている。こうしたさまざまな開発や整備が進んでいくことで、今後、北九州市はどのようなまちへと変貌を遂げていくのか、その動向を引き続き注視していきたい。

下関北九州道路計画案(北九州市HPより)
下関北九州道路計画案(北九州市HPより)

(了)

【坂田 憲治】

(中)

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