2024年06月23日( 日 )

住まいと暮らしの今(3)

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 住宅関連業界は、大きな変革の波に直面している。新築需要市場の縮小がいよいよ本格化してきたことに加え、カーボンニュートラルへの対応が迫られるほか、超高齢化社会の到来、空き家問題の深刻化といった社会課題の浮上、さらには人や社会の価値観の変化といった状況にも直面しているからだ。一方で、住まいは人々の暮らしに直結するため、関連する事業者の役割に期待が高まっている。そこで本特集では、現在進行中の住生活に関わるさまざまな動きについて確認し、これからの住宅関連業界の在り方について考えていく。

住まいと健康

 断熱性能の強化は、地球温暖化予防のみならず、人々の暮らしの快適性の向上、なかでも高齢者の健康寿命延長への寄与も期待されている。とくに、「冬でも暖かい」住まいは、ヒートショック対策となるなど、人々が健康な暮らしをするうえで好ましいとされている。また、断熱性が高い住宅は冷房を効率良く利用でき、熱中症予防につながるともみられている。

 WHO(世界保健機関)ではSDGs(持続可能な開発目標)に関連して、「冬季の室温18℃以上」とすることを強く勧告しているが、その条件を満たす住まいは日本全国で1割に過ぎない。このような状況に危機感をもった国は、14年から全国の医学・建築学などの研究者が参画する「スマートウェルネス住宅等推進調査事業」を推進。伊香賀俊治・慶應義塾大学理工学部教授らが行った「断熱改修等による居住者の健康への影響調査」の結果によると、断熱改修後とそれ以前の住宅を比較したところ、前者では起床時の最高血圧を被験者の平均で3.1mmHg改善させる効果が見られた。このほか、コレステロール値などの健康診断の結果や過活動膀胱(夜間の頻尿など)についても、改修後の暖かい住宅は改修前の住宅に比べて居住者の数値や回数が改善されていたとしている。

 センサーやAIなどを含むICT技術の発展により、血圧や脈拍の管理などだけでなく、日常の様子をも把握し、それを住まい手の健康的な暮らしの維持に役立てるという仕組みの開発や、その検証も大手ハウスメーカーなどで始まっている。また、仮に脳梗塞や心筋梗塞で倒れても、自動で救急に連絡し搬送されるといったシステムをつくろうという取り組みも一部で行われている。いずれにせよ、住まいが人々の暮らしにより積極的に関与する時代が、間もなく訪れようとしているわけだ。

「住まいと健康」を科学する動きも

「健康寿命延伸住宅」の提案に用いられるアイテム
「健康寿命延伸住宅」の提案に用いられるアイテム

 住まいと健康の関係を科学的見地から検証し、ユーザーの健康的な暮らしに貢献しようとしている住宅企業の1つに芙蓉ホーム(芙蓉ディベロップメント(株)、本社:福岡市博多区、前田俊輔代表)がある。
 同社は昨年から、「健康寿命延伸住宅」と称し、断熱性能の高い建物による温熱コントロールと、身体の状態を客観的に把握できる体温・血圧などを家族個別に管理する健康管理システムを採り入れた住まい提案を行っている。同システムには、携帯端末などで健康リスクをわかりやすくチェックできるようにするだけでなく、生活習慣の改善を促し、その成果を「見える化」するという内容も含まれる。住まいと健康の関係性は高気密高断熱による温熱環境や自然素材の使用などで説明されてきたが、実際に温熱環境と健康の関係を数値で示し、住宅供給者がユーザーの健康的な暮らしに積極的に関与するものに変わりつつあることを、この事例が表している。

空き家は予防が重要

空き家のイメージ
空き家のイメージ

    「平成30(2018)年住宅・土地統計調査」によると、全国にある空き家数は848万9,000戸と過去最多となり、空き家率は13.6%となっている。空き家の増加は、景観の悪化による不動産価値の低下や、不法侵入者などに利用されるなど地域の治安悪化、放火の対象となりやすいうえ、老朽化した建物が自然災害時に倒壊すると周囲に被害をおよぼし、さらに周辺住民の避難を困難にする可能性があるなどの問題があり、その解決が社会課題となっている。

 国は15年、「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行、さらに今年5月にその一部を改正した。そのポイントは、(1)空き家の実態調査:空き家の状況を把握するための調査の実施、(2)空き家の所有者へ適切な管理の指導、(3)適切に管理されていない空き家を「特定空家」として指定し、その管理を強化、(4)特定空家に対する罰則や行政代執行、などとなっている。

「安心R住宅」のロゴ
「安心R住宅」のロゴ

    法制度の改正に先立ち、空き家の所有者が物件を登録し、空き家の購入・賃借を検討している利用者が、空き家バンクで見つけた条件に合う物件を申し込む仕組み「空き家・空き地バンク」が15年以降、各地域の自治体に設置され始めている。ただ、その多くのケースは基本的には自治体と協定を結んでいる宅地建物取引業者(不動産業者)が仲介するものであり、マッチングするまでに時間がかかったり、掲載されている物件の数が少ないなどの問題を抱え、空き家対策の根本的な問題解決につながっていない。高齢化の進行との関連性が強いことから、地域包括ケアシステムなどを担う福祉関係者、相続との兼ね合いもあることから不動産会社や税理士などの専門家、さらには自治体など幅広い連携による、「空き家」予防という観点からの取り組みも求められている。

(つづく)

【田中 直輝】

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