九州地方整備局に聞く住宅政策のポイント(前)
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国土交通省九州地方整備局 建政部
住宅調整官 桒原 崇宏 氏日本人の暮らしと住まいの在り方は大きく変化しており、国や自治体による住宅政策も、それに合わせて従来とは異なる動きがみられる。そこで、国土交通省九州地方整備局建政部の桒原崇宏住宅調整官に、現在の住宅政策のポイントについて聞いた。
880万戸の空き家
──日本における住宅に関わる基本的な状況について、教えてください。
桒原 我が国の人口は2010年ごろをピークに減少傾向にあります。一方、世帯数については20年まで増加を続けましたが、こちらも将来的には減少に転じることが想定されています。18年の住宅・土地統計調査によれば、住宅ストックの総数は約6,240万戸で、そのうち人が居住しているものが約5,360万戸となっています。この差に当たる約880万戸が空き家です。また、人が居住している住宅ストックのうち、約700万戸において耐震性能が不足していると考えられ、バリアフリーや省エネ基準を満たさない住宅も数多く存在しています。こうしたなか、「新築・建替え」「リフォーム」「空き家対策」の3本柱の施策を講じることで、将来世代に継承できる良質な住宅の供給を推進することが求められています。
──日本は災害大国です、安心安全の確保のための動きはどのようになっていますか。
桒原 地震により倒壊した建築物が主要な道路をふさぐと、円滑な避難や救急活動、緊急物資の輸送などにも大きな支障をきたすことにもなります。このため、住宅・建築物の耐震化は、建築物の利用者の安全確保の観点だけでなく、災害時の周辺市街地の安全確保の観点からも重要な課題となります。23年7月28日に決定された「国土強靭化年次計画2023」では、18年時点で約87%の住宅の耐震化率を、30年までに概ね解消するという目標が定められています。さらに、耐震診断が義務づけられた建築物の耐震化率については22年度時点で要緊急安全確認大規模建築物(※)が約90%ですが、25年度までに概ね解消する目標などが定められています。
耐震性が不足する住宅・建築物に対しては、地方公共団体とも協力しながら耐震診断や補強設計、耐震改修、建替え、除却などに対する支援を行っており、その他、耐震改修促進税制や、住宅金融支援機構における融資制度などにより、耐震化の推進を図っているところです。住宅・建築物の耐震化は、その多くが民間の所有する物件の事業になり、さまざまな要因により事業進捗は容易ではないですが、住生活の安全の確保に向け、一歩一歩進めていく必要があると考えています。
ほかにも、密集市街地の整備改善や狭隘道路の解消などにも取り組んでいます。地震時などに著しく危険な密集市街地は、九州においては長崎市と大分市にありましたが、地方公共団体を始め、地域の皆さまに取り組んでいただいた結果、大分市の密集市街地は解消し、長崎市においても、22年度末時点で12年度と比較して約4分の1にまで減少しました。引き続き、良好な市街地環境の整備に向けた取り組みを進めてまいります。
※要緊急安全確認大規模建築物:15年12月31日時点で存在した不特定多数の者が利用する一定規模以上の建築物などで、法令により規定されたもの ^
省エネ化を強化
──地球温暖化への対応が年々増しています。
桒原 住宅・建築物の省エネ対策については、21年10月22日に閣議決定された「エネルギー基本計画」などに基づき、30年には新築について、ZEB・ZEH水準の省エネ性能の確保を、また50年には住宅・建築物のストック平均でZEH・ZEB水準の省エネ性能の確保を目指すこととされました。
22年には、建築物省エネ法が改正され、すべての新築住宅・非住宅に省エネ基準適合を義務付けることとなりました。この義務付けは25年4月の施行が予定されています。併せて、より高い省エネ性能への誘導施策として、住宅トップランナー制度に分譲マンションを追加するなど対象の拡大を行ったほか、消費者が建築物を購入・賃貸する際に省エネ性能の把握や比較ができるように、今後は省エネ性能表示を推進することとしています。ストックの省エネ改修については、住宅金融支援機構による住宅の省エネ改修への低利融資制度の創設や、建築基準法による形態規制(高さ制限)の合理化なども行っています。
また、住宅・建築物への木材の利用の促進を図るため、構造関係規定の合理化や、先進的な中大規模木造建築物のプロジェクトへの支援などを行っており、全国的にも中高層建築物の木造化が進んできています。九州においても、木造建築物の普及を期待しています。
(つづく)
【田中 直輝】
<プロフィール>
桒原 崇宏(くわはら・たかひろ)
1984年12月10日生まれ。福岡県出身。2009年4月、国土交通省に入省。15年4月、北陸地方整備局建政部都市・住宅整備課長、22年4月、国土政策局地方振興課企画専門官などを歴任し、23年7月より九州地方整備局建政部住宅調整官を務める。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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