2024年02月23日( 金 )

九州地方整備局に聞く住宅政策のポイント(後)

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国土交通省九州地方整備局 建政部
住宅調整官 桒原 崇宏 氏

 日本人の暮らしと住まいの在り方は大きく変化しており、国や自治体による住宅政策も、それに合わせて従来とは異なる動きがみられる。そこで、国土交通省九州地方整備局建政部の桒原崇宏住宅調整官に、現在の住宅政策のポイントについて聞いた。

空き家対策に特措法

 ──空き家問題については、いかがでしょうか。

 桒原 九州地域、とくに地方都市においては、空き家対策も大きな課題です。我が国の空き家の総数は、18年までの20年間で1.5倍に増加し、その内訳では、「賃貸など」または「売却用の住宅等」を除いた、「その他の住宅」が大きく増加しています。これまでも周囲に著しい悪影響をおよぼす「特定空家」の除却に向けた取り組みを進めてきましたが、これに加え、事前の対策がより必要となります。この状況を踏まえて、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(今年6月14日公布、公布の日から6カ月以内に施行)が改正されています。

 改正のポイントは次の通りです。まず、所有者の責務強化として、現行の「適切な管理の努力義務」に加え、国、自治体の施策に協力する努力義務が規定されました。次に空き家の活用の拡大です。市区町村が定めた「空家等促進区域」において、住宅の用途変更や建替えなどを促進する施策が講じられるほか、「空家等管理活用支援法人」が市区町村長により指定され、空き家所有者への普及啓発や相談対応などを行うことができるようになります。また、特定空家化を防止するため、放置すれば特定空家になる恐れのある「管理不全空家」に対し、市区町村長が指導・勧告を行うことができるようになり、勧告を受けた管理不全空家は固定資産税の住宅用地特例が解除になる、という規定も置かれています。さらに、特定空家についても、緊急代執行制度が創設されるなど、除却などに向けた手続きが円滑に進むよう、見直しが行われています。国土交通省においては、空き家の活用や除却に対する支援制度も拡充し、空き家対策が進むよう取り組んでいるところです。

 ──超高齢化社会においては、住まいの確保も課題となっています。

 桒原 各地方公共団体において、公営住宅などの公的賃貸住宅の整備が行われていますが、老朽化した公営住宅などのストックの維持・改修は大きな問題です。また、人口が減少するなか、人が居住していない公営住宅をどのように活用していくか、ということも課題となっています。住宅困窮者に対する住宅供給という公営住宅制度の本来目的を踏まえながらではありますが、目的外使用や用途廃止なども見据えながら、その活用も検討いただきたいと考えています。

 また、生活困窮者、高齢者、障がい者、ひとり親世帯、刑務所出所者などの住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給施策、住宅セーフティネット制度が17年に創設されましたが、単身高齢世帯の増加などを踏まえ、現在、厚生労働省、国土交通省、法務省の3省が合同で検討会を設置し、生活確保要配慮者の円滑な住まいの確保や、住宅政策と福祉政策が一体となった居住支援機能等の在り方について、検討を行っているところです。

 住宅セーフティネット制度の現状としては、各地方公共団体などにより設立される居住支援協議会について、都道府県では設置がされているものの、市区町村においては5%に当たる90市区町での設置にとどまっています。九州においては21市町で設置されており、他地域と比べると高い比率ではありますが、さらに取り組みを推進することが必要です。また、要配慮者専用の住宅や、すぐに入居できる住宅が少ない、低家賃の物件が少ないといった課題もあります。

 現在行われている検討会の結論などを踏まえて、今後は住宅確保要配慮者への居住支援の充実、大家さんが住宅を提供しやすい市場環境の整備、住宅確保要配慮者のニーズに対応した住宅の確保方策、地域における住宅・福祉・司法と連携した居住支援の体制づくりなどが議論される予定です。

住宅施策とDX

 ──人手不足などを背景に、住まいの分野でもDX推進が求められています。

 桒原 建築分野のDXは、大きくは建築行政手続きのDXと建築生産のDXに分けられます。建築行政手続きにおいては、建築確認手続きのオンライン化や、映像を用いた中間・完了検査の実施、ドローンを使った赤外線調査による定期報告の実施などが考えられます。建築生産においては、BIMによる建築確認の実施や、維持管理・リフォーム履歴情報のデジタル管理、維持管理やリフォームなどによる住宅の良質生を評価する手法の開発、中小工務店の労働環境向上などが考えられます。

 また、都市分野においても、個々の建築物情報および都市全体の空間情報の3次元デジタル化、不動産IDを一体的に推進することにより、都市開発・維持管理の効率化や地域政策の高度化、新サービス・新産業の創出が図られることが期待されています。

施工人材不足の今、DXによる解決が模索されている
施工人材不足の今、
DXによる解決が模索されている

    たとえば、空き家の把握・推定の効率化、不動産取引等の効率化といったまちづくり分野や、建物内外にわたる避難誘導計画の高度化、災害リスクの精緻な推計などの防災分野、緑化施策効果の把握やエネルギー使用量の精緻な推計などのカーボンニュートラルの分野など、さまざまな分野の課題の把握と解決に寄与することが期待され、国土交通省においてもDX推進を行っています。

 最後になりますが、昨今の住宅施策は、建築物の安全性の確保や良好な居住環境の整備などにとどまらず、カーボンニュートラルの実現に向けた省エネ基準の適合義務化や、空き家問題、福祉施策と一体となった住宅セーフティネット対策、先進技術を活用したDXの推進など、広範囲・多分野にわたる取り組みが求められるようになっています。今後もこういった動きは進んでいくことが考えられますので、国土交通省としても、地方公共団体や住宅・建築物を供給する事業者、実際に居住・利用する方も含め、一緒になって取り組んでいきたいと考えています。

(了)

【田中 直輝】


<プロフィール>
桒原 崇宏
(くわはら・たかひろ)
1984年12月10日生まれ。福岡県出身。2009年4月、国土交通省に入省。15年4月、北陸地方整備局建政部都市・住宅整備課長、22年4月、国土政策局地方振興課企画専門官などを歴任し、23年7月より九州地方整備局建政部住宅調整官を務める。

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