2024年05月09日( 木 )

阪急阪神HDの主要事業の現状と展望(前)

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運輸評論家 堀内 重人

 かつて阪急電鉄と阪神電鉄は、別の会社であった。しかし、現在は阪急阪神ホールディングス(HD)という持株会社が設立され、その傘下に阪急電鉄や阪神電鉄が存在し、グループでは「都市交通」「不動産(ホテル事業も含む)」「エンタテインメント」「情報・通信」「旅行」「国際輸送(物流)」の6つをコア事業として展開している。本稿では、阪急阪神HDの現状とDX戦略を紹介した後、主要事業である住宅・まちづくり、阪急阪神エクスプレス、文化事業としての阪神タイガースについて紹介する。

阪急阪神ホールディングスの現状

阪急電車    阪急阪神HDグループの経営理念は、「安心・快適、そして夢・感動をお届けすることで、お客さまの喜びを実現し、社会に貢献します」である。都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行、国際輸送の6つのコア事業を展開している。

 2022年5月に「長期ビジョン-2040年に向けて-」を発表し、持続可能な社会の実現に貢献し、地域(関西)とともに成長する企業グループとなることを打ち出した。そのなかには大阪新阪急ホテル・阪急ターミナルビルの建替や、阪急三番街などのリニューアルを核とした大規模プロジェクト「芝田1丁目計画」がある。なお、新大阪エリアと大阪梅田地区は、都市再生緊急整備地域に指定されている。

 阪急電鉄は、新大阪駅と十三駅を結ぶ「新大阪連絡線」と、十三駅から大阪駅北側の「うめきた」エリアを結ぶ「なにわ筋連絡線」の整備を進めており、2031年に開業する方針を明らかにした。「新大阪連絡線」に関しては、2016年に第一種鉄道事業許可を取得している。

 この路線は、JR西日本や南海電鉄が2031年に開業を予定している「なにわ筋線」とつながり、直通運転を行うことで、関西空港から新大阪駅へのアクセスが向上する。また、関西空港から十三駅で阪急京都線に乗り換えれば、京都市の中心部である四条烏丸(しじょうからすま)へのアクセスも良くなる。

 阪急電鉄では、なにわ筋線と同じ時期にアクセス線を開業させ、通勤客や国内外からの観光客の利便性向上も図りたいと考えているのだ。なにわ筋線へ乗り入れて、関西国際空港へ向かうとなれば、阪急電鉄の他の路線とは異なり、1,067mmゲージの鉄道を敷設しなければならず、車両の互換性は効かなくなるが、沿線人口の減少問題も抱えるため、関西国際空港まで乗り入れることで新たな活路を見出そうとしている。このプロジェクトは初期投資が大きく利益貢献が始まるのは、2035~2040年頃である。

阪急阪神HDグループのDX戦略

 阪急阪神HDグループは、2025年度に向けて、海外における不動産事業の展開やエンタテインメント事業における配信サービスの拡充などの分野で、一層の成長を図るとしている。

 またDXプロジェクトなどを着実に推進したいとしている。DXプロジェクトには4つの柱があり、(1)お客様を「知る」取り組み、(2)お客様に「伝える」取り組み、(3)お客様が「デジタル時代の利便性」を最大限享受できる取り組み、(4)グループの強みであるコンテンツを磨き上げる取り組みを、実行するとしている。

 このような取り組みをする背景には、コロナ禍を契機として人々の行動・生活拠点の変化やQOL(暮らしの質)向上への意識拡大など、さまざまな社会変化が今後も一層加速することが想定されることがある。

 グループのベースは鉄道事業である。それに加え、住宅・商業施設などの開発を行っている。この考え方は、阪急電鉄の前身である箕面有馬軌道の創業者である小林一三の考え方が、今でもベースになっている。

 阪急阪神HDグループは、近鉄グループと異なり、阪神タイガースという球団を所有している。また、宝塚歌劇団を戦前から所有しており、さらに映画・エンターテイメントの東宝グループ、現在は売却されたが、かつては阪急ブレーブスを所有しており、魅力溢れる文化事業の提供を行ってきた。

(つづく)

(中)

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