2024年05月23日( 木 )

福岡都市圏の「跡地」動向(6)

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 福岡では、天神ビッグバンや博多コネクティッドなどの都心部再開発が進行し、天神ビジネスセンターや福岡大名ガーデンシティが誕生したほか、現在も複数の建替えプロジェクトが進んでいる。都心部以外でも、ホークスタウン跡地にMARK IS 福岡ももち、パピヨンプラザ跡地にブランチ 博多パピヨンガーデン、青果市場跡地にららぽーと福岡などが誕生したことは記憶に新しい。各所でまちの新陳代謝が進む過程で、一時的に(あるいは長期間にわたって)発生するのが“跡地”という存在だ。まちが生まれ変わる前の“サナギ”の状態といえる跡地が、福岡都市圏にはいまだ多く存在する。今回、代表的な跡地の動向を追ってみたい。

福岡市中央区
新天町商店街

新天町商店街
新天町商店街

 まだ跡地ではないものの、天神ビッグバンのど真ん中に位置する新天町商店街も、一体的な再開発に向けて動き出している。

 22年11月、新天町商店街商業(協)および(株)新天町商店街公社、(株)パルコ、西鉄、(株)三井住友銀行の5者は福岡市に対して「(仮)天神二丁目南ブロック駅前東西街区プロジェクト」についての計画概要書を提出し、受理された。今回の計画概要書の提出は、プロジェクト推進にあたっての天神BBBの取得を目指してのもの。プロジェクトの対象エリアは、新天町商店街やパルコ、西鉄福岡駅ビルなどにまたがる約2.2haで、東街区と西街区の2つの街区で構成され、低層部には商店街・商業施設などが入る方針。プロジェクトの開業は2030年度を目指している。

 再開発されるのは、パルコ本館・三井住友銀行(1936年竣工[三井住友銀行部分は56年竣工])、パルコ新館(76年竣工[地上部は2014年竣工])、新天町ビル(68年竣工)、西鉄福岡駅ビル(61年竣工)、新天町商店街(54~66年竣工)の5つのビル・商店街。いずれも築50年弱~90年弱が経過しており、建物の老朽化が進んでいた。そのため前出5者では、将来にわたって安心・安全で賑わいのあるまちづくりを実現していくために「天神二丁目南ブロック駅前東西街区都市計画推進協議会」を設立。耐震性の向上などに向けた再開発への検討を進めてきた。

 発表された将来構想のイメージでは、現状は細分化されている街区の再編を実施。新天町商店街内を南北に通るメルヘン通りを残しつつ、通りの東側を東街区、西側を西街区としてそれぞれ大型複合施設を開発していく。東街区には広場空間を整備するほか、両街区の天神サザン通りに面した地上部にはゆとりある歩行者空間を創出。街の緑化や「Fukuoka Art Next」の推進などにも寄与する、天神の中心地としての立地ポテンシャルを生かした新しい文化・芸術を感じられる複合施設としていく方針となっている。

 なお、天神BBBを受けられるビルの竣工期限は26年12月末までで、本来であれば30年度開業予定の同プロジェクトは竣工期限に間に合わないことになる。だが、市では複数街区にまたがる段階的および連鎖的な建替え計画の期限については個別に判断するとしており、今回は特例的に天神BBBを受けられる公算が大きい。いずれの建物・商店街も、現在はまだ通常営業を続けており、再開発に向けた閉店・閉鎖の時期は26年ごろになるとされている。今後、閉店・閉鎖の時期が近づくにつれて、より具体的な再開発スケジュールや、再開発後の新たなまちのイメージが示されていくだろう。

福岡市中央区
サンセルコ

サンセルコ
サンセルコ

 まだ跡地でないが、開業から40年以上が経過している中央区渡辺通の複合施設「サンセルコ」についても、今後の再開発の可能性に触れておきたい。

 1979年2月に竣工、同年3月に開業したサンセルコは、地上10階・地下2階建の構造で、地下1階~地上4階までは主に店舗が、5階~10階まではオフィスが入居。開業から2005年までは、(株)福岡放送が入居しており、屋外中継を行っていた。また、09年には「ゴールド免許センター」が開業し、優良運転者向けの運転免許更新センターとしても利用されている。そのほか「ホテルニューオータニ博多」が隣接し、4階まではテラスや連絡通路などで往来が可能となっている。

 通常、商業施設や複数のオフィスが入るビルといえば賃貸での入居が一般的だが、サンセルコの場合は「区分所有」となっているのが特徴。これにより、地権者1人ひとりが小規模でも多くの人数が集まることで大規模商業施設をつくることができる一方で、その意思決定が難航しやすいというデメリットがある。サンセルコの土地の所有権保存登記(所有権の初めての登記)がなされたのは77年4月(79年1月に更生)。当初の地権者と福岡市で所有権を形成し、以降、売買のかたちで福岡市の持分を法人や個人に割譲していった。現在では土地・建物を約180名が所有、約110名が借家をしている。ただ、2010年以降、新たに土地が売買された形跡はない。

 だが、前述したようにサンセルコも築40年以上が経過し、老朽化が進行。新規顧客の獲得のためのめぼしい営業活動がないままに今日まで至っている。魅力を欠いた状態がこのまま続くとテナントの収益も低下するため、共益費などの滞納につながるほか、テナントの空室が続くことで不動産賃貸業者の破綻の可能性も増幅させる。

 そうした状況下で現在、注目されているのが「建替え計画」だ。実はサンセルコでは18年10月に、管理組合法人が通常総会で建替えに向けた決議を行っていたことが報じられたことがある。だが、5年が経過した現在もその後の動きが見られない。同ビルの管理を行うサンセルコビル管理(株)は「(建替え計画は)まったく進んでいない」と話すが、建替えを実行したいというスタンスは変わっていないという。建替えには所有者の意思が必要だが、その合意形成の難易度は高い。

 天神ビッグバンの進行で、天神界隈が新たなまちへと変貌を遂げていくなかで、サンセルコもその一端に加わることができるのか──。建替えに向けた機運を醸成しながら、辛抱強く合意形成に取り組んでいく必要があるだろう。

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 新たな開発着手までの期間の長短はあれど、まちが生まれ変わる過程において現れる「跡地」という存在。まちの新陳代謝が活発になればなるほど、跡地も次々と生まれ、そして次なる新たな開発の土台としての役割をはたしていく。まだしばらくの間は、その勢いに陰りが見られそうにないここ福岡都市圏においては、これからも新たな跡地が生まれ、そして消えていき、都市の刷新が続いていくことだろう。今後も、既存の跡地の動向に目を配りつつ、新たな跡地の誕生についても注視していきたい。

(了)

【坂田 憲治/代 源太朗】

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