2024年05月22日( 水 )

【昨今MBO事情(3)】CCC、「体験」を軸にするSHIBUYA TSUTAYA─常識破りの「企画屋」の現在地(中)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

 MBO事情の第3弾。MBO(経営陣が参加する買収)で上場を廃止するオーナー企業は後を絶たない。上場維持のメリットとコストを天秤にかけ、コストが上回ったから株式市場から退出したオーナー企業のその後をレポートする。DVDレンタルビデオショップ「TSUTAYA(ツタヤ)」や共通ポイント「Tポイント」で一時代を画したカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)(株)(東京都渋谷区南平台町)だ。

「成功率はめちゃくちゃ低い」と告白

 ツタヤ図書館バッシングが過熱している最中の15年10月19日、増田宗昭氏はNHK番組『プロフェッショナル・仕事の流儀』に出演し、いかにも彼らしい型破りな仕事観を語った。

 ツタヤ図書館で本の選び方や運営の仕方に批判が盛り上がっていることについては、「みんなが理解できないけど、世の中こう変わっていくということを信じて、やるしかないよ。で、成功率はめちゃくちゃ低い」と述べる。

 伝統的な公共図書館の信奉者には信じてもらえないが、常識の外を行くのがオレ流というわけだ。それなら公共図書館の運営に手を出さなければよさそうなものだが、武雄市から誘いがかかったとき、公共図書館の常識を破るビジネスチャンスと勇みたったのだろう。

5,500万人を突破したTカード会員

 増田宗昭氏は、自身が自慢するように「常識の破壊者」だ。その成功例が、ポイントカード。03年10月、共通ポイントサービス「Tポイント」を開始した。ユニークな点は、ポイントシステムを外部に開放したことだ。通常、ポイントの発行は顧客の囲い込みのために行われるもので、発行元の店以外では、利用できないのが普通。

 CCCは異業種と提携して、TカードならTSUTAYAで貯めたポイントをコンビニやガソリンスタンドで使えるようにした。使い勝手が受けてTカードの発行枚数は、08年8月3,000万人、12年5月4,000万人、14年10月5,000万人を突破。現在は5,500万人。国民の2人に1人がTカードを持つ。国民的なカードと評判になった。

 提携先企業はTカード利用者に発行したポイント数に応じて、CCCにシステム使用料を支払う。これがCCCのカード事業の収益になった。

Tポイントに強烈な逆風が吹きつける

イメージ    スマホ時代の到来で、大手企業がスマホ決済に相次ぎ参入した。Tポイントに逆風が吹きつける。19年4月、Tポイントの主要加盟店だったファミリーマートが、NTTドコモの「dポイント」と楽天グループの「楽天ポイント」を導入。Tポイントに加えて、dポイントや楽天ポイントも選んでためられる「マルチポイント化」に踏み切った。

 これを引き金に、三越伊勢丹グループ、ドトールコーヒー、ヤマト運輸・・・。業界を代表する有名企業が次々とTポイントから離脱したり、離脱を表明した。

 Tポイントにとってさらなる衝撃となったのが、22年4月のヤフー(Zホールディングス)の離脱だ。ソフトバンクとヤフーが共同で出資した「PayPayポイント」に切り替えた。

 Tポイントは牙城を次々と突き崩され、生き残ることができるかと騒然となった。

業績悪化で、オーナーの増田氏は社長交代

 23年4月1日、創業者で社長・増田宗昭氏が会長に就き、後任の社長に高橋誉則副社長が昇格した。社長交代後も、増田氏は最高経営責任者(CEO)、高橋氏は最高執行責任者(COO)を継続する。社長交代は1999年以来、24年ぶり。高橋氏は大東文化大学を卒業し、97年に入社した生え抜き。

 社長交代の理由は、祖業であるDVDレンタルショップのTSUTAYA事業が動画配信の台頭で苦戦が続き、フランチャイズ店が撤退、共通ポイントの先駆けだった「Tポイント」も離脱が相次ぎ、長期低落に歯止めがかからないことだ。

 TSUTAYA事業の苦戦は業績に影を落とした。決算公告によると、2021年3月期決算は、売上高が前期比15%減の2,982億円、最終損益は145億円の赤字(前期は52億円の黒字)に転落した。22年3月期の売上高は前期比39%減の1,819億円。特別利益122億円を計上し、最終損益は86億円の黒字にするヤリクリ決算だ。

 23年3月期は一段と悪化した。売上高は前期比40%減の1,086億円に落ち込んだ。3年前と比べて、売上は3分の1だ。最終損益は129億円の赤字だ。

三井住友グループの傘下に駆け込む

 オーナーの増田氏はグループ解体に舵を切った。

 CCCと三井住友フィナンシャルグループ(SMBC)は23年6月13日、両社のポイント事業「Tポイント」と「Vポイント」を2024年春に統合した後の名称を「Vポイント」とすると発表した。ポイント事業の統合により約20年の歴史を持つTポイントの名前は消滅する。

 会員数はTポイントが約7,000万人、Vポイントは約2,000万人だ。統合した際の会員数は単純合算で約9,000万人となり、1億人を超える三菱商事の関連会社が発行するPonta(ポンタ)ポイントや楽天ポイントと同じ規模になる。

 Tポイントは、有力な電子商取引(EC)や決済サービスを展開する楽天ポイントや、NTTドコモの「dポイント」などの攻勢で苦境に立たされていた。Tポイントの加盟店数は約15万店舗まで縮小しており、飲食店などの600万カ所以上で使える楽天ポイントに大きく水をあけられている。

 Tポイントは存続が危ぶまれていたが、創業者の増田宗昭氏が頼ったのは三井住友グループの傘下に入ることだった。

(つづく)

【森村 和男】

(前)
(後)

関連記事