2024年04月30日( 火 )

NVIDIAの快進撃はいつまで続くのか(前)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

AI革命の寵児

イメージ    NVIDIAの快走が続いている。AI半導体の需要爆増の恩恵を受けた同社は、米国上場企業としてはアップル、マイクロソフトに次いで、3番目に時価総額が2兆ドルを上回る企業となった。営業利益が前年同期比で3倍以上伸長したことによって、株価は続伸し、その勢いは今後も続くのではないかと予想されている。同社の株価は米国株式市場を牽引しており、株価がこのまま上昇するのかどうかに市場の関心が集まっている。

 NVIDIAは30年前の1993年に設立され、文字だけでなく画像も処理できる高性能な半導体「GPU」の開発を1995年に成功させた企業である。もともと画質を向上させてゲームをより楽しめるようにするために開発されたGPUだが、一度に多くの単純なタスクを実行する性質がAIの計算処理やデータセンターの効率化、自動運転車などにも向いていることがわかり、同社は2012年からAI市場に参入し、結果的に現在のような大きな成功につながっている。

 それでは、なぜGPUはAIに適しているのか。従来のGPUは、PCやゲームの分野で画面上にグラフィックを表示するために使われていた。その際、3次元の画像や高画質の画像を表示するには、大量の情報処理が必要であった。それでCPU(中央演算処理装置)だけでは処理できない画像の高速処理に特化して開発されたのがGPUだ。CPUで画像を処理する場合、1秒間に処理できる画像の枚数は約5枚であるのに対し、NVIDIAの最新GPUを用いると、1秒間に900枚もの画像を処理することができる。

 CPUを飛行機の1つの搭乗口とするなら、GPUは電車に乗る時に多数の人が数十箇所のドアから同時に乗れることに例えられる。NVIDIAは、GPUの並列で高速に処理できる利点を、AIや自動運転などの膨大なデータ処理に適用したわけだ。ChatGPTの開発元”OpenAI”のデータセンターでは数万のNVIDIAのGPUが稼働しているが、NVIDIAは自社GPUの強みが存分に発揮できるAI市場が開花したことで、大きな恩恵を受けている。

 とくに、同社の「H100」は生成AIのための世界初の高性能チップで、生成AIの学習とサービス商用化のためには、「H100」は唯一の選択肢となっており、世界中のIT企業からラブコールを受け、需要が急増している。価格は約4万ドルだが、供給が需要に追いついでいない。

NVIDIA強さの源泉は

 AIモデルを学習させるために収集されたテキスト、数字、イメージなどのデータの処理量は膨大となる。膨大な量のデータを高速に並列処理できる半導体は、現時点では市場シェア80%以上を占めているNVIDIAのGPU以外にはない。とくに、チャットGPTのような生成AIのインフラの役割をはたす大規模言語モデル(LLM)を学習させるにはNVIDIAのGPUが必須である。

 NVIDIAは、2013年にディープラーニングの演算処理にGPUを使う実験に成功し、12個のGPUが2,000個のCPUに匹敵するという成果も確認された。2006年時点で100億ドルの開発資金を投入し、GPUの開発環境である「CUDA」を開発し、無償で開発者に提供した。その結果、ほとんどのAI製品はCUDAの使用を前提に開発されるようになった。CUDAは、CPU(MPU)からNVIDIAのGPUに対して並列処理の命令を送り、実行処理ができるようにするためのソフトウェア開発環境である。

 CUDAにはディープラーニング向けのライブラリーや最適化ツールが含まれている。開発者同士もCUDAをベースとして情報を交換しており、別のGPUを使うと開発の効率に支障をきたす可能性がある。さらに、NVIDIA GPU以外ではCUDAは動作しない。なので、CUDAなしにディープラーニングを実現することもほぼ不可能に近い。このようにNVIDIAは強力なエコシステムの構築にも成功しているため、AI分野での同社の快走は当分の間続きそうだ。

(つづく)

(後)

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