2024年04月30日( 火 )

NVIDIAの快進撃はいつまで続くのか(後)

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日韓ビジネスコンサルタント
劉明鎬 氏

経営戦略による収益の多角化

サイバー空間 イメージ    以上のことから、同社のCEOであるジェンスン・ファン氏は未来を正確に予測し、それに備えるかたちで製品の開発を進めてきたことがわかる。CPUが全盛の時代に画像処理の時代が到来することを見越して、GPUを開発して画像処理という1つの領域をつくったし、AIのデータ処理にGPUが最適であることを見つけて、他社に先駆けてその分野に注力してきた。

 ハードウェアを成功的に開発したことだけでもすごいことであるが、ソフトウェアやプラットフォームまで提供しているので、市場をよく見通していると言わざるを得ない。しかし、それだけでない。今後自動運転やスマートファクトリ、ヘルスケアなど、将来大きな成長が予想される分野にも、同社はソリューションを準備している。

 たとえば、自動車工場は、限られたスペースのなかで、需要に応じたさまざまな車種を生産する必要がある。その時々で生産ラインの配置を変え、最適化する必要があるが、そのシミュレーションをNVIDIAクラウド上で行うことで、既存の生産ラインに影響をおよぼすことなく、最適なライン設計ができるようになる。

 もちろん自動運転においても自動運転のプラットフォームを自動車メーカーに提供し、自動運転を開発できる環境を提供している。自動運転分野でも競合他社を圧倒するような強さで、トヨタをはじめ、世界の自動車大手と同社は提携している。やはり、そのような分野でも高速データ処理が求められるが、そこにも同社のGPUが活用されているわけだ。

 最後に製薬業界を見てみよう。新薬を開発するためには、その候補物質をまず探す必要がある。候補物質を探すのに以前は数年の時間と膨大なコストがかかっていた。従来はこれらのプロセスをマニュアルで行っていたからだ。これに対して、NVIDIAは創薬の高速化を支援するサービスを提供している。このように同社はGPUの単純な作業を並列に高速処理できる能力を活用して、その適用分野をますます広げている。

 現在は先端半導体の時代であるが、同社はAI半導体で半導体業界をリードし、今や世界で一番注目を浴びる企業の1つとなっている。製品の成功だけなら需要の変動で浮き沈みがありそうだが、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアやプラットフォームまで提供しているので、同社の優位性が簡単に崩れるような状況ではなさそうだ。

 それに、AIブームはスタートしたばかりで、今後数年間はAIが産業に変革をもたらしそうだ。1つの業種に限らず、さまざまな業種に関わりをもっていることも、同社のもう1つの強みになりそうだ。

(了)

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