2024年07月17日( 水 )

人工知能(AI)が世界を支配する時代の到来か?(前)

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国際未来科学研究所
代表 浜田 和幸

人工知能 AI イメージ    人工知能(AI)の急速な発展と活用は大きな可能性とリスクをもたらしています。14、15日、イタリアで開催された先進7カ国(G7)産業・技術・デジタル担当大臣会合でもAIの適切な活用や規制の在り方が熱心に議論されました。日本が議長国を務めた昨年5月のG7首脳会議においてもAIの規制は主要テーマとなり、「広島AIプロセス」が採択されたものです。いわゆる「フェイクニュース」など生成AIを使った偽情報の拡散が政治的にも経済、社会的にも深刻な問題を突き付けているからです。

 昨年6月にはEUにおいても「AI法」が成立、そして同7月には国連のアントニオ・グテーレス事務総長が国際的なAI規制監視機関の設立を提唱しました。言い換えれば、それだけAIの可能性と副作用への懸念材料が大きくなってきているわけです。

 思い起こせば、昨年8月、アメリカのキャンプ・デービッドでは日米韓3カ国首脳会議が開催されました。ジョー・バイデン大統領が日本の岸田文雄首相と韓国のユン・ソンニョル大統領を招き、3カ国が共同で中国や北朝鮮と対峙することで合意。この合意を得るために、アメリカはあらゆるメディアを総動員して、中国や北朝鮮が軍事的な力を増強し、北東アジアの現状を自国に有利に展開しようとしていると宣伝戦を繰り返しました。現状のままでは、「中国はアメリカにとって最大の脅威になる」という触れ込みです。

 そうしたメディアを通じての情報操作が功を奏しているせいか、アメリカ、日本、韓国での各種世論調査を見ると、国民の過半数が「中国は恐ろしい」と受け止めるようになっています。中国や北朝鮮に関する否定的なニュースや解説が繰り返し流されると、受け取る側の一般市民の頭脳や感情には「恐怖感」というマイナスのデータが蓄積されるわけです。

 日米韓3カ国の首脳は、いずれもそうした中国、北朝鮮に関する脅威論をテコに共同戦線を組み立てる戦略を追求しています。そこにはアメリカの軍産複合体の思惑が見て取れますが、世界第1と第2の経済大国であるアメリカと中国が互いに「Win-Win」の関係を構築することの意義やメリットを検証するという平和志向の発想は封印されたままです。

 残念ながら、意図的に中国や北朝鮮の脅威を煽り、そうした客観的なデータに裏付けされていない「偽脅威」を封じ込めるため、政治、経済、軍事などあらゆる面で日米韓3カ国の連携を強化しようと煽る試みに思えてなりません。実に危険な兆候です。データの搾取や改ざんといった課題が世界を騒がせていますが、データ・セキュリティーという観点には、こうした偽情報への国際的な対応も加えられる必要があるのではないでしょうか。

 その意味では、今こそ、日中韓3カ国の首脳会議を開催すべきです。アメリカとも中国とも関係を維持発展させる必要に迫られている点では日本も韓国も同じです。偽情報がデータとして蓄積され、取り返しがつかなくなる前に直接対話を通じて危機を回避することが「平和外交」を標ぼうする日本に欠かせません。

 アメリカでは11月の大統領選挙に向けて火花が散っています。なかでも共和党候補としてほかを圧倒する人気を得ているのがドナルド・トランプ前大統領です。返り咲きを狙い、「自分がカムバックすれば、その日のうちに、ウクライナ戦争を終わらせる。プーチン大統領とはツーカーだ」と、相変わらずのトランプ節を連発しています。

 現時点での各種世論調査によれば、「バイデンvsトランプ」の戦いではトランプ氏の勝利が確実視されています。やはりバイデン大統領は80歳を超え、言動が危ういとの見方が広がっているからでしょう。そのためバイデン陣営からすれば、あらゆる手段を講じて、トランプ氏の評判を落とし、有権者のトランプ離れを起こしたいと考えているはずです。

 そこで、ホワイトハウスでは多くのフォロワーを抱える有力なインフルエンサーを100名ほど高給で採用し、特別選挙部隊を立ち上げ、ネット上を舞台にトランプ批判の空中戦を展開するようになりました。コストを抑え、SNSで効果的にライバルの評判を落とす作戦があちこちで見られるようになっています。

 実は、一時は共和党のなかからもトランプ候補の足を引っ張る動きが活発化したものです。その代表的存在がフロリダ州のロン・デサンティス知事でした。自らの選挙対策本部を通じて、トランプのスキャンダルネタを拡散。しかも、AIの技術を使って、トランプがコロナ対策の司令塔役を務めたアンソニー・ファウチ博士と抱き合ってキスしているような画像を捏造。これにはアメリカのみならず世界のメディアも有権者もビックリさせられたことはいうまでもありません。

 何しろ、一見しただけでは騙されてしまう可能性があるからです。問題の画像は昨年6月、「デサンティス選対本部」がツイッター(現・X)上に投稿したもの。曰く「これが本当のトランプだ!」。要は、コロナウイルスに関し、トランプ大統領はファウチ博士と結託し、安全性が立証されていないワクチンを特例的に承認し、製薬業界を大儲けさせた、という疑惑が根強いことを背景に、2人が緊密な関係にあることを示唆したわけです。

 しかし、負けが大嫌いなトランプ氏です。すかさずデサンティス氏への批判画像を打ち返しました。これまたAIの力を利用し、デサンティス氏が「RINO(リノ)」と呼ばれる恐竜に跨っている画像を流したのです。これはRINOには「名前だけの共和党員(Republican in name only)」という隠語的な意味があるからに違いありません。ある種、トランプ流のユーモアという側面が感じられ、この偽画像対決はトランプ氏に軍配が上がりました。

 一事が万事です。ネット時代には、こうしたAI技術を活用した偽情報が飛び交います。2016年のアメリカ大統領選挙の関連記事のトップ20を調査した結果、主要メディアのニュースより「ローマ教皇がトランプ候補を支持した」といったフェイクニュースのほうが有権者によるヒット数が多かったことが判明。選挙の結果を左右することになった可能性が指摘されています。

(つづく)

浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
    国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。近著に『イーロン・マスク 次の標的「IoBビジネス」とは何か』、『世界のトップを操る"ディープレディ"たち!』。

(後)

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