2024年05月03日( 金 )

九州の観光産業を考える(18)CO2を飲み込み蓄えるSDGs未来都市(前)

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内閣府の価値創造制度

 2018年にSDGs未来都市の選定が始まって、23年まで全国に183自治体。このうち「自治体SDGsモデル事業」を実施するのは60都市。九州・沖縄エリアでは下記27のSDGs未来都市のうち、太字で示す12の自治体が「自治体SDGsモデル事業」に取り組んでいる。

<福岡県>
北九州市、大牟田市、福津市、宗像市、直方市、糸島市
<佐賀県>
鹿島市
<長崎県>
壱岐市、対馬市
<熊本県>
小国町熊本市、水俣市、菊池市、山都町八代市上天草市、南阿蘇村
<宮崎県>
延岡市
<鹿児島県>
大崎町、徳之島町、鹿児島市、薩摩川内市、出水市 奄美市
<沖縄県>
恩納村石垣市沖縄県

 内閣府はSDGs未来都市を「SDGsの理念に沿った基本的・総合的取り組みを推進しようとする都市・地域のなかから、とくに、経済・社会・環境の三側面の統合的取り組みによる相乗効果、新しい価値の創出を通して、持続可能な開発を実現するポテンシャルが高い都市・地域を選定」するとし、「2021年度からは、脱炭素化に関する取り組みを選定時の加点要素として追加」としている。こうして選定された都市のうち、「多様なステークホルダーとの連携を通し、地域における自律的好循環の形成が見込める、とくに先導的な事業」を「自治体SDGsモデル事業」として補助金を給付し、事業を支援する。

 全国に有意な選定自治体を増やし、それぞれに実績を上げさせ、敷衍性と実効性のある事業はモデル化して全国展開を図り、国土全体でSDGs効果を高め、その姿勢を国際的に訴える。

カーボン・ネガティブ

 九州の「自治体SDGsモデル事業」を別表で概観する。全国あるいは世界にアピールする先駆的事業モデルとするには、広域に敷衍(ふえん)的な施策となり得る視点、材、手法を備えることが要に思えるが、採択案は九州各々の地場産業にSDGs17領域の要素を努めて強調した表記に見える。とはいえ、脱炭素の視点は必携となっていることがうかがわれる。

 もはやCO2の排出量と吸収量を差し引きゼロの状態にする「カーボン・ニュートラル」では、地球を救うことはできそうにない。さらにラジカルな「カーボン・ネガティブ」の取り組みで、全地球的にCO2の吸収量が排出量を上回るようにしないと、地球温暖化は不可逆的になる望ましくない未来予測がされている。

 これにより、CO2などの温室効果ガス削減へ「ネガティブ・エミッション(炭素隔離)」技術が、ますます注目されているのだという。自然の摂理が大気構成のバランス保持をこれまでのようにはこなせなくなっている現下、テクノロジーによりCO2の回収および貯留プロジェクトなどを強化または達成する段階に、人類は到達すべきというのだ。

(つづく)


<プロフィール>
國谷 恵太
(くにたに・けいた)
1955年、鳥取県米子市出身。(株)オリエンタルランドTDL開発本部・地域開発部勤務の後、経営情報誌「月刊レジャー産業資料」の編集を通じ多様な業種業態を見聞。以降、地域振興事業の基本構想立案、博覧会イベントの企画・制作、観光まちづくり系シンクタンク客員研究員、国交省リゾート整備アドバイザー、地域組織マネジメントなどに携わる。日本スポーツかくれんぼ協会代表。

(17)
(後)

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