2024年06月21日( 金 )

川勝静岡県知事の辞任表明とリニアの今後(中)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

運輸評論家 堀内 重人

 リニア中央新幹線の建設に対し、大井川水系の環境破壊を理由に、一貫して反対の姿勢を貫いてきた静岡県の川勝平太知事が、4月3日に突然、辞意を表明した。これで「リニア中央新幹線の建設は前進する」という意見がある反面、いまだ後任の知事が決まっておらず、後任に川勝知事の息のかかった人物が選ばれる可能性もあるため、「不透明」とする意見もある。川勝知事はリニア中央新幹線の建設に対して一貫して反対してきたが、よく理由として挙げられる「大井川水系の環境問題」だけではなく、静岡県にリニアの駅が設けられないなど、別の理由もありそうである。リニア中央新幹線は東南海沖地震が発生した際のバイパスルートにもなりえるほか、東海道新幹線の老朽化や混雑の慢性化という問題もある。計画を前進させるには後任の知事とどのように合意形成すべきなのか、その方法を模索していくことにする。

JR東海の考え

 JR東海は、昨年12月に東京(品川)~名古屋間の工事が完了する時期を、「2027年」から「27年以降」に変更した。工事計画を見直した結果、想定よりも工期が長くかかる見通しになった。

 JR東海は、3月29日に南アルプストンネルの静岡工区では、17年に工事の契約を締結しているが、未着工であることを理由に、27年の開業を断念する方針を明らかにした。JR東海が27年の開業を断念した理由として、静岡工区は南アルプスの下を貫くトンネルがあるなど、工事の難易度が高いことが挙げられる。24年4月にトンネル工事に着手したとしても、完成まで10年は要するという。そこで品川~名古屋間の開業は、早くても34年以降になる見通しである。

 JR東海は建設中のリニア中央新幹線の工事の遅延に関して、24年度中に工事を契約し、山梨・長野両県の一部の工事完了および甲府市内に設けられる山梨県駅の完成が31年となる見通しを4月4日に明らかにした。それゆえ川勝知事だけの責任ではないともいえる。JR東海は4月3日に、「静岡工区の工事に1日でも早く着手できるよう真摯に取り組む」と述べた。

 長野県飯田市の座光寺高架橋も、31年に工事が完了する予定である。JR東海は、「工事の規模が大きく、環境調査にも時間を要した」と、工事が遅れた理由を説明している。

 JR東海の発表では、4~9月に駅工事の発注の公募を行い、24年度中に業者との契約を目指すという。着工は、早くても24年度末となる見込みで、工期は6年8カ月と余裕を見ている。

 JR東海は、「23年12月の時点では、もっと短い工期を想定していた」という。4カ月後の24年4月には、労働規制が強化される「2024年問題」があり、トラック業界などでは、人手不足が顕著になる。

 そうなると建設業界の現場も、重労働であることから人手不足が予想される。JR東海も、人手不足や資材の高騰などを考慮せざるを得なくなった。そこで「合理的な工期を再考した結果、当初より長くなった」と説明した。

 リニアのポイント
 リニアのポイント

山梨県・甲府市、地域住民の考え

 リニア中央新幹線の山梨県駅周辺の整備に関しては、リニア中央新幹線の単独駅となる。駅の北口は山梨県が中心となり、交通広場やパーク&ライド用の駐車場などを整備する。南口は、甲府市が駅を活かしたまちづくりを推進するという。

 山梨県の長崎幸太郎知事は、「開業時期については27年を大きく超えることは残念」としながら、「開業時期に左右されず、スマートICや周辺道路の整備を進めるなど、地域の価値を高める取り組みを進めていく」としている。樋口雄一甲府市長も「駅舎建設の新たな計画が公表されたことで、地域の期待も高まる」と述べている。

 これに関して筆者は、甲府市には身延線が南北に通っており、身延線と接続するかたちでリニア中央新幹線の山梨県駅を設けられないことが残念だと考える。リニア中央新幹線で山梨県駅まできた乗客を、身延線で甲府市内まで輸送すれば、身延線も活性化するだけでなく、甲府市内の道路交通渋滞の緩和にも貢献する。なぜ、いまだに道路建設や道路整備で対応しようとするのか、正直言って疑問である。

 身延線に接続するかたちで、リニア中央新幹線の駅が設けられたとしても、駅前広場の整備や、駅へのアクセス道路などは必要になるが、甲府市内や周辺部で大規模に整備する必要はない。

 リニア中央新幹線の山梨県駅周辺の住民は、大津町地区開発対策協議会を設立している。会長の横谷英臣氏は、「静岡県の状況ではリニア中央新幹線の山梨県駅の完成が遅れることは、やむを得ないと考えており、とくに驚いていない。それより工期日程が明らかになったことを、『前進である』」と考えており、今後のまちづくりに注目しているという。

(つづく)

(前)
(後)

関連キーワード

関連記事