2024年06月23日( 日 )

『脊振の自然に魅せられて』「ショウジョウバカマと落とし物」(中)

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 3月末、今年2度目のショウジョウバカマとの出会いを求めて、福岡県糸島市エリアにある羽金山(標高900m)の群生地へ向かった。前述のように、羽金山はショウジョウバカマの群生地として知られている。前日からの雨もやみ、この日は絶好の撮影日和である。花の命は短く、見頃はわずか1週間である。

見頃のツクシショウジョウバカマ
見頃のツクシショウジョウバカマ

 自宅から車を走らせること1時間で、羽金山の登山口である白糸の滝の駐車場に到着した。車を降りると女性のパーティーがいた。近づいていくと、その内の一人から「池田さんですか?」と声をかけられた。「どちらさんですか?」と尋ねたところ、名前は教えてくれなかったが、「私の知人が、あなたをよく知っていますよ」という答えが返ってきた。彼女たちの登山目的は、やはりショウジョウバカマだった。

 作業林道を20分歩き登山道に入ると、先ほど会ったのとは別の女性パーティー3人が前方を歩いていた。声をかけると脊振の自然を愛する会の副代表であるT先輩を知っている人たちだった。

 歩くこと40分、羽金山~十坊山の縦走の合流点で一息つく。この日は気温が高かったので着ていたアノラック(風防ジャンバー)を脱ぎ、ザックの外のベルトに差し込んだ。普段はザックのなかに入れるが、カメラ機材もあって、荷物が多かったためベルトに留めたのだが、これが後に大変な事態を招くこととなる。

 縦走路を歩き、先程の女性たちと着かず離れずの距離で時折会話を交わしつつ、撮影ポイントへと向かう。杉林のなかに入ると予想通り、たくさんのショウジョウバカマが足の踏み場もないほど咲いていたので、動画と静止画撮影を行った。花に囲まれ、贅沢な時間を過ごすことができた。杉林に木漏れ陽が差しており、筆者には、ショウジョウバカマの朝食時間のように思えた。

ツクシショウジョウバカマの中で筆者
ツクシショウジョウバカマの中で筆者

 一息つき、知る人ぞ知る絶好のポイントに向かう。斜面を下り、ザックを置き、撮影ポイントへと行った。ここには大きな岩もあり、その下にたくさんの花が咲いているのを発見したので「咲いとった!」と博多弁で叫んだ。

 斜面で足を滑らせないよう、また花たちを踏まないことを心がけて撮影する。10年前は足の踏み場もないほど花が咲いていた場所ではあるが、ここ数年、以前より花の数が少なくなってきている。気候変動の影響もあるのかもしれない。

 撮影を終え、佐賀県側が見渡せる河童山の手前の岩に座り、ザックを足元に置いて食事をした。食事を終え、歩いて1分の河童山へと足を伸ばす。10年前は竹藪だったこの地は整備され、開けた場所となっていた。すぐ目の前には羽金山の高い電波塔が聳え立っていた。

 日本標準時データを送信する電波塔は西日本と東日本に一基ずつ設置されている。「はがねやま標準電波送信所」は西日本をカバーする電波塔で高さ約200m。許可をもらえば施設内に入ることができる。

 電波塔のある羽金山に向かい、施設の入り口前を通り過ぎ、白糸の滝へと向かった。あとはアスファルトの作業林道を歩いて下るだけである。この作業林道は羽金山に設置されている電波塔の施設に通じる道で、一般車両は通れない。

(つづく)

脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行

(前)
(後)

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