2024年05月20日( 月 )

天神通線の延伸に予算、渡辺通5丁目のイマ(前)

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都市計画道路天神通線
都市計画道路天神通線

沿線には主要施設が集積
天神中心部の重要道路

天神通線延伸計画(福岡市道路下水道局提供)
天神通線延伸計画(福岡市道路下水道局提供)

    天神地区における交通混雑の緩和やバスの定時性の確保などを図るため、福岡市は「都市計画道路天神通線(以下、天神通線)」の延伸整備に向けて動き出している。

 福岡市が発表した「令和6年度当初予算案」のうち、道路下水道局が所管する当初予算案では、「特色ある事業:都市の成長」カテゴリーのなかの「都心部の機能強化と魅力づくり」の項目で、「天神通線の整備」として予算7,000万円を計上している。

    内訳は、南側延伸部分の予備設計および地質調査の費用が約3,800万円、北側延伸部分の交差点改良費などが約3,200万円。天神エリアの大動脈である渡辺通りの慢性的な渋滞緩和策の1つとして、天神通線を迂回路として活用することで通行車両の分散を図ることが狙いで、天神通線を北側に約110m延伸して昭和通りにつなげるとともに、南側にも約190m延伸して渡辺通りにつなげる計画。北側延伸部分では沿線の再開発と併せて道路幅の拡幅が行われるほか、交差点改良や信号機の移設が行われ、南側延伸部分では一部で薬院新川の上部に橋梁を設置するかたちで整備を進めていく方針としている。

 なお、天神通線の延伸計画自体は、渡辺通りの交通渋滞を緩和する目的で、2013年8月に南側部分約190mの延伸が都市計画決定されたのが始まり。20年9月には北側部分約110mの延伸も決定され、23年度には南側部分の路線測量が完了。実際の整備に向けた動きが徐々に見られ出した。

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 福岡・天神エリアを通る道路の名称といえば、「渡辺通り」や「明治通り」「昭和通り」「国体道路」「天神西通り」などがよく知られているが、「天神通線」の名前はそれほど知られていない。だが、名前の認知度にかかわらず、天神通線は天神エリアにおいては重要なポジションを占めている道路だ。

 福岡市の都市計画道路概要によると、天神通線は天神一丁目を起点とし、渡辺通五丁目を終点とする延長360m、幅22mの幹線街路と位置付けられており、1990年2月に決定告示がされている。構造形式は地表式で、車線数は4(片側2車線)。区間内の交差構造としては、地下部分で福岡都市高速鉄道1号線(空港線)や福岡都市高速鉄道2号線(箱崎線)、福岡都市高速鉄道3号線(七隈線)と立体交差するほか、地上部の4カ所で幹線道路と平面交差している。

 その沿線は、福岡市内においてもとくに重要な施設が集積しているエリアだ。代表的なものを挙げれば、福岡市役所や福岡県警察中央警察署、アクロス福岡、天神中央公園、福岡県済生会福岡総合病院、大丸福岡天神店などの錚々たる施設名などが並ぶ。博多区東公園に移転する前は福岡県庁も現在の天神中央公園の場所にあり、県庁と市役所が同道路を挟んで隣接していた時期もあったなど、天神通線は延長360mと短い道路ながらも、かなり重要な道路だといっても差し支えないだろう。

    その天神通線だが、最初に整備されたのは1910(明治43)年に天神一帯で開催された「第13回九州沖縄八県連合共進会」のときだとされており、意外と歴史は古い。同共進会は、福岡城の旧肥前堀を埋め立てた広大な敷地──現在のアクロス福岡や天神中央公園、福岡市役所などがある場所で約2カ月間(3月11日~5月9日)開催された地方博覧会である。このとき整備された現在の天神通線は、当時は会場正門への取付道路という位置づけだった。開催に合わせるかたちで、福博電気軌道(西鉄の前身の1つ)が開通しており、現在の明治通りはこの電車路線敷設のためにつくられた大通りであった。また、共進会の迎賓館として建設されたのが、西中洲にある現在の旧福岡県公会堂貴賓館である。この共進会の開催は、当時は九州の一地方都市に過ぎなかった福岡市が本格的に九州の中心都市へと歩み始めたきっかけとなったものであり、現在に至る天神発展の起点となったものでもあるといえる。

天神中央公園
天神中央公園

    その後も天神通線は、前述のように県庁や市役所などの重要施設を沿線に擁する関係上、天神の発展とともに地味ながらも存在感を示し続けていた。戦後の1948(昭和23)年に福岡市で開催された第3回国民体育大会に併せて、延長4.5kmの「国体道路」(名称決定は69年)が整備され、平成期になってから「天神地区第一種市街地再開発事業」の一環で天神通線が国体道路に連結するかたちで延伸。その後は、前述したように渡辺通りと昭和通りをつなぐ迂回路としての役割を期待されて新たな延伸計画が決定し、現在に至っている。

(つづく)

【坂田 憲治】

(中)

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